期待される洋上風力発電とは?(Ⅱ)

再エネ

 政府は、2014年に洋上風力のFIT買取価格を36円/kWhと陸上風力の22円/kWhに比べて高めに設定すると共に、未だ導入事例の少ない洋上風力を対象に導入促進区域を指定した。
 すなわち、2019年12月に長崎県五島市沖、2020年7月に秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖千葉県銚子市沖、2021年9月に秋田県八峰町及び能代市沖、「田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖、新潟県村上市及び胎内市沖、長崎県西海市江島沖を指定した。
 日本は2030年までに総出力:1000万kWの目標を掲げるが、目標には程遠いのが現状である。 

洋上風力の導入促進策

 経済産業省は、2014年に洋上風力のFIT買取価格を36円/kWhと陸上風力の22円/kWhに比べ高く設定すると共に、未だ導入事例の少ない洋上風力を対象に強力な導入促進策を施した。

 2016年5月、国土交通省が管轄する「港湾法」の改正案を公布し、2016年7月に施行された改正港湾法で、自治体が管理する港湾内の洋上風力発電の事業者公募手続きを定めるなど普及を推進した。2017年3月、経済産業省は事業者向けに事業計画策定ガイドラインを作成した。

 2018年3月、一般海域において洋上風力発電の導入を促進するため「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(洋上風力利用促進法)案」閣議決定された。
 内閣総理大臣が基本方針を策定し、関係者を構成員とする協議会などの意見を聴取した上で促進区域を指定する。さらに促進区域内の海域の占用などに係る計画の認定制度を創設する。

 2018年12月、「再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)」が公布され、国土交通省経済産業省の共同所管となる洋上風力促進WGが立ち上げられ、実際の運用に関する検討が始められた。

 2019年4月、「再エネ海域利用法」が施行された。促進区域として、同年12月に長崎県五島市沖、2020年7月に秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖千葉県銚子市沖が指定された。選定された事業者はFITによる認定を受け、最大30年間の海域占用が認められる。

 2020年6月、経済産業省国土交通省長崎県五島市沖の洋上風力発電事業の公募を開始した。参加資格を国内法人とし、公募前調査の事前同意の実施や事業活動を所管官庁が監督するなど、日本領海内の海洋情報が外国に流出しないよう監視を強化する方針を示した。

 2020年11月には、再エネ海域利用法に基づき、「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖(北側・南側)」、「千葉県銚子市沖」の公募を開始した。

 2021年9月には、再エネ海域利用法に基づき、新たに「秋田県八峰町及び能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」、「新潟県村上市及び胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」を海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域に指定した。

 2022年12月、経済産業省と国土交通省は、再エネ海域利用法における海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域の「秋田県八峰町及び能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」、「新潟県村上市及び胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」について、公募占用指針を定め公募を開始した。 

 一方、国土交通省浮体式洋上風力発電設備の安全ガイドライン作りと、国際標準化に向けた国際電気標準会議(IEC)対応を進めた。浮体式は津波や高潮などを前提に設計され災害にも強いが、「浮体式洋上風力発電施設技術基準」では過去の最大レベルの地震・津波を考慮するよう求めている。
 2019年4月、NEDOは浮体式洋上風力発電施設の設計を進める上で必要なガイドライン、技術的解決策を体系的にまとめた資料として「浮体式洋上風力発電技術ガイドブック」を公開した。

 2022年1月、環境省は洋上風力を計画する事業者の負担を減らすため、環境アセスメントに必要な一部調査の代行を始めると表明した。第1弾として2022年4月以降に、山形県遊佐町沖で生態系を調査して、環境アセスメントに必要な項目のデータベースを事業者に提供する。
 同海域で想定される発電能力は45万kWであり、渡り鳥や大型哺乳類などの生態系の調査を代行することで、運転開始を1~2年早めて2030年までの運転開始を見込んでいる。

促進区域における公募

長崎県五島市沖

 2021年6月、経済産業省と国土交通省は、長崎県五島市沖で洋上風力発電を担う事業者の公募結果を公表した。事業者は最大30年間にわたり海域を占有できる。

 長崎県五島市沖は戸田建設、ENEOS、大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力のによるコンソーシアム「ごとう市沖洋上風力発電合同会社」による日立製作所製ダウンウィンド型2100kW風車(8基、総出力:1.68万kW)の計画で、2024年1月の商業運転を予定している。
 この五島市沖洋上風力発電事業では、浮体式・ハイブリッドスパー式が採用される。応募企業は1社で、売電価格は36円/kWh、20年間にわたり九州電力が買い取る。

図15 五島市沖に建設される浮体式洋上風力 出典:五島市

秋田県沖と千葉沖の3海域

 2021年12月、経済産業省と国土交通省は秋田県沖と千葉県沖の3つの海域で洋上風力発電を担う事業者の公募結果を発表した。事業者は最大30年間にわたり海域を占有できる。

 秋田県能代市・三種町・男鹿市沖は三菱商事、子会社の三菱商事エナジーソリューションズ、中部電力子会社シーテックで構成する共同事業体「秋田能代・三種・男鹿オフショアウィンド」によるGE製1.26万kW風車38基(総出力:47.88万kW)を計画し、2028年12月の運転開始をめざす。FIT価格は13.26円/kWhである。
 秋田県由利本荘市沖は三菱商事、子会社の三菱商事エナジーソリューションズ、中部電力子会社シーテック、ウェンティ・ジャパンで構成する共同事業体「秋田由利本荘オフショアウィンド」によるGE製1.26万kW風車65基(総出力:81.9万kW)を計画し、2030年12月の運転開始をめざす。FIT価格は11.99円/kWhである。
 千葉県銚子市沖は三菱商事、子会社の三菱商事エナジーソリューションズ、中部電力子会社シーテックで構成する共同事業体「千葉銚子オフショアウィンド」によるGE製1.26万kW風車31基(総出力:39.06万kW)を計画し、2028年9月の運転開始をめざす。FIT価格は16.49円/kWhである。

 3海域の案件を落札したのは全て三菱商事連合で、着床式米国GE製の大型風車(出力:1.26万kW)を採用する。三菱商事は2012年頃から、オランダのエネルギー企業エネコと欧州での洋上風力開発に携わっており、2020年3月には中部電力と共同でエネコを5000億円で買収している。
 一方、2023年3月、GEは出力:1.7~1.8万kWの世界最大級の洋上風車を日本市場に投入すると発表し、洋上風力発電で成長が見込める日本市場での巻き返しを進めている。

 これまで港湾法に基づいて導入された着床式洋上風力発電は、FITによる買取価格が2021年度は32円/kWhが適用された。しかし、再エネ海域利用法に基づいて導入するプロジェクトには、FIT価格の決定および事業者の選定に入札制度が導入され、上限価格が29円/kWhに設定された。
 三菱商事連合は能代市沖で13.26円/kWh由利本荘市沖で11.99円/kWh、難工事が予想された千葉県銚子市沖で16.49円/kWhと2番手以下より約3割安い入札価格で落札し、大手電力会社が20年間買い取る。潜在的な売電先にはアマゾン、NTTアノードエナジー、キリンHDが名を連ねている。

 GEは基幹部品を東芝の京浜事業所で共同生産する。京浜事業所での風車製造体制を2024~25年にかけて整備する。日本の洋上風力導入に向けた官民協議会では、変電所や電線などの製品、運用・保守といった産業全体で、2040年までに国内調達比率を6割にする目標を掲げている。

秋田県八峰町・能代市沖

 秋田県沖と千葉沖の3海域案件を落札したのは全て三菱商事連合で、他社に比べて大幅に安い供給価格を設定した。その結果、ベスタスは日本での工場建設中止、シーメンスガメサは次回公募の見送りを表明した。入札で負けたベスタス、シーメンスが拠点戦略を変える可能性は十分にあり得る。
 世界風力会議(GWEC)の予測では、中国を除くアジア市場の2022~2031年の洋上風力導入量(シェア)は、出力規模で日本が578万kW(16%)程度で、台湾は1407万kW(38%)、韓国は745万kW(20%)、ベトナムは691万kW(19%)、インドが300万kW(8%)である。 

 2021年9月、再エネ海域利用法に基づき「秋田県八峰町及び能代市沖」は促進区域に指定され、2021年12月に公募を開始した。しかし、2022年3月、突然、公募の実施スケジュールを見直すとともに、審査基準の見直しが発表された。公募は実質的に中断されるという異例の事態である。
 政府は、「今般のウクライナ情勢を踏まえ、エネルギー安全保障の面から再生可能エネルギーの導入を加速する必要がある。特に、洋上風力発電は、2021年12月に公表された3海域での公募結果により、太陽光発電などと競争可能な低コストの大規模電源であることが証明された。」ためと発表した。

 2022年12月、再エネ海域利用法に基づき、促進区域である「秋田県八峰町及び能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」、「新潟県村上市及び胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」について見直しを行い、公募を再開した。2023年6月までの約半年間に応募が受け付けられる。 

 今回の公募で導入された新ルール
●事業者を選定する際、評価点全体240点のなかに「事業計画の迅速性」20点が新たに配点された。その他に「売電単価」120点、「電力安定供給」20点、「運転開始までの事業計画」15点、「事業実施体制・実績」「資金・収支計画」「周辺航路、漁業などとの協調・共生」「地域経済への波及効果」「国内経済への波及効果」「関係行政機関の長などとの調整能力」に各10点、「運転開始以降の事業計画」5点が配分されている。
●ひとつの事業体が大半の対象海域を落札しないよう、1事業体あたりの発電・送電容量の上限を計100万kWとし、超えた場合は新たな落札が出来ない。今回の4海域公募のみの制限条項とする。
対象となる4海域すべてにFIPを適用する。秋田、新潟の計3海域の入札上限価格を19円/kWh、長崎県西海市江島沖を29円/kWhに設定する。「長崎県西海市江島沖」は海底に固定する基礎工法にジャケット式の採用を想定したため、他の3海域よりも上限価格を引き上げた。前回、秋田県沖と千葉沖の3海域では、上限価格を29円/kWhに設定した。

 政府は1事業体による日本市場独占のリスクを避け、複数の事業体が日本に拠点工場を設置してアジア市場を開拓する構想を描いている。そのためには日本を拠点とするメリットを増出する必要がある。日本市場規模の増大、税制優遇、設置補助金、拠点工場の設置支援、部品供給、メンテ支援など。

その他の洋上風力プロジェクト

 2019年11月、コスモエネルギーHDは風力子会社のコスモエコパワーが、北海道江差町などの檜山管内沖の水深200mまでに最大125基の風車を設置する計画(総出力:100万kW)を発表した。発電所は浮体式と着床式の双方を採用するとしている。

 2022年1月、ノルウェー石油大手のエクイノールが北海道沖に浮体式洋上風力発電所(総出力:400万kW)を2030年代に建設すると発表した。エクイノールは性能などの基本仕様を決定し、日本企業(主に造船会社)は製造を担当し、北海道の4海域でそれぞれ100万kW程度の発電所を稼働させる。

 日本は2030年までに総出力:1000万kWの目標を掲げるが上記の規模の開発が進まない限り目標達成は困難な状況にある。

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