間違った小型モジュール炉への期待(Ⅸ)

原子力

 世界的にみて、SMRの開発で先行しているのは米国ニュースケール・パワーの「VOYGR」GEベルノバ日立ニュークリアエナジーの「BWRX-300」である。一応、国内原発メーカーである三菱重工業も「多目的軽水小型炉」の開発を進めている。
 一方で、英国もSMRビジネスを推進しているが、米国とのアライアンスは日本にも大いに参考になる。

ロールス・ロイスSMRの「UK-SMR」

「UK-SMR」の開発動向

 Rolls-Royce(ロールス・ロイス)が主導する企業連合は、既存技術をベースにPWR型の小型軽水炉「UK-SMR」(熱出力:127.6万kW、電気出力:47万kW)を開発中で、当初は2031年の稼働をめざしていた。その後、政府の関与を前提に2035年までに10基、2050年までに最大16基の建設を計画する。

 2021年7月、ロールス・ロイスと英国原子力エンジニアリング会社のCavendish Nuclear(キャベンディッシュ・ニュークリア)は、SMRの設計・許認可、製造等の協力覚書を締結した。

 2021年11月、ロールス・ロイスは米国エクセロン・ジェネレーション、フランスのBNFリソーシズUKと、英国内のSMR開発に今後3年間で合計1.95億ポンド(約295億円)の投資を発表。これを受けて英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、2.1億ポンド(約318億円)を提供する方針を表明した。

  2022年3月、英国原子力規制庁(ONR)は、BEISからロールス・ロイス子会社のロールス・ロイスSMR製の小型モジュール炉設計について、包括的設計認証審査(GDA)の実施を要請される。

 2022年8月、ロールス・ロイスSMRは、オランダでのSMR建設に向けて協力するため、オランダの新興原子力事業社であるULC-エナジーと独占契約を締結し建設準備を進める。一方、SMRの海外受注をめざし、トルコ、チェコ、エストニアとは実行可能性調査の覚書を締結した。

 2024年9月、チェコ電力(ČEZ)が「UK-SMR」(PWR、47万kW)を将来の導入候補として選定した。2030年代に テメリン・サイトで初号機を運転開始する計画で、チェコ国内では合計300万kW規模の導入が見込まれている。

 2025年6月、英国政府が「UK-SMR」(PWR、47万kW)を同国初のSMRプロジェクトとして選定した。また、同年11月、北ウェールズのアングルシー島ウィルヴァを3基の建設予定地として決定した。旧ウィルヴァ原発は2015年に閉鎖され、日立製作所による後継プラント計画が2019年に中止となっていた。
 「UK-SMR」は英国規制当局による包括的設計審査(GDA)の最終段階にあり、2026年8月までの審査完了をめざしている。最終投資決定は2029年に行われ、初号機は2030年代半ばの送電開始を目標としている。

 2026年1月、米国エンジニアリング企業のアメンタム(Amentum)と、SMRの初導入に向け主要な提供パートナーとしての協力契約を締結した。アメンタムは、英国およびチェコにおける初号機導入プロジェクトの全体管理や監督、施工管理、実行体制の構築などを担い、プロジェクトの司令塔役を果たす。
 また、スウェーデンの建設大手スカンスカ(Skanska)と、SMR向け免震ベアリング基礎の実証モデルの納入契約を締結した。英国ドンカスターにあるスカンスカの製造施設で進められ、プロトタイプの製造および実証試験が行われる。

 2026年2月、横河電機はロールス・ロイスSMRと、SMRの制御システムで協業する。横河電機はロールス・ロイスSMRが英国や欧州で建設をめざすSMRの基幹制御システムの開発、認証取得、設置、試運転などに参加する。

 2026年4月、英政府系機関Great British Energy–Nuclear(GBE-N)は、ロールス・ロイスSMRと技術設計契約を締結。詳細設計や規制当局対応を進め、将来的な最終投資につなげる。GBE-Nは英国の主要企業を含むSMRサプライチェーン全体で約3.5億ポンドの契約を締結し、英国初となるSMRチームの構築をめざす。
 一方、英政府の主要投資家で政策銀行であるナショナル・ウェルス・ファンド(NWF)もロールス・ロイスSMRに最大約5.99億ポンドを投資し、SMR開発を支援することとしている。

図1 ロールス・ロイスの「UK-SMR」の完成予想図 出典:ロール・スロイスSMR

英米の新たな原発協定

 2025年9月、英国は原子力発電強化の方針で、 トランプ大統領の国賓訪問を機に、米国と人工知能(AI)、民生用原子力、核融合、量子技術などの戦略的科学技術分野での連携強化MOUを締結した。
 両国において原子力発電所の増設を推進し、先進炉、先進燃料、核融合の分野での連携を深め、核分裂および核融合のイノベーションの最前線に留まり続けることをめざす内容である。

両国の協力の重点項目:
両国における先進炉の展開加速に向け、市場の障壁を特定・対処することで共存共栄をめざす。
■米原子力規制委員会(NRC)、英原子力規制庁(ONR)、英環境庁(EA)がライセンスの合理化と迅速化を実現し、原子炉設計レビューを2年以内、サイトライセンスを1年以内に完了する。
■両国における先進燃料のサプライチェーンを確保し、先進炉計画を支援する多様な燃料供給体制を確保する。また、2028年末までにロシア製燃料からの完全な脱却を目指す。
■先進炉・先進燃料の世界的リーダーシップを推進し、第三国への民生用原子力輸出を支援する。
■研究、開発、実験施設やデータの利用調整を促進し、AI技術と組み合わせて、コスト競争力のある商業用核融合発電に向けた道筋を構築する。
■両国主導による核融合市場の形成を支援するために、イノベーションの促進政策と規制を主導する。■民生用の海上用途を含む先進原子力の新たな応用機会を模索し、国際基準の確立や両国の領土間の海上輸送回廊の整備を進める。また、防衛施設のエネルギー・レジリエンスも強化する。

 2025年9月、英政府は、既存の原子力分野における英国ロールス・ロイスと米国BWXTの長い協力関係に続き、「原子力の黄金時代」と呼ぶ両国企業間の複数の合意を公表した。

両国の企業間の新たな提携:
■英国のエネルギー供給会社であるセントリカは、米国の先進炉開発企業のX-エナジーと提携して、イングランド北東部のハートルプールに最大12基の先進モジュール式原子炉を建設する。150万世帯への電力供給と最大2,500人の雇用創出を見込み、経済効果は少なくとも400億ポンド。
■米国ホルテック・インターナショナル、英国EDFエナジー、英国不動産投資企業のトライタックスは、ノッティンガムシャーの旧コッタム石炭火力発電所にSMRを導入し、高度なデータセンターを開発する。ホルテック社はプロジェクトコストを約110億ポンド(150億ドル)と見積る。
■米国のマイクロ炉開発企業のラスト・エナジーは、港湾運営会社DPワールドのロンドン・ゲートウェイ港とビジネスパークにマイクロ炉「PWR-20」を建設して電力を供給する。8,000万ポンドの民間投資による世界初となる港湾中心のマイクロ炉発電所とする。
■英国ウラン濃縮事業者のウレンコと米国マイクロ炉開発企業のラディアントは、ラディアント製マイクロ炉「カレイドス」向けの高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料供給で、約400万ポンドの契約を締結。
 ウレンコは英政府との共同出資で英国に先進燃料製造施設を建設しており、米国でも同様の施設の建設を検討中である。
■米国の原子力開発ベンチャーのテラパワーと英国のエンジニアリング企業KBRは、テラパワー製先進炉「Natrium」導入のために英国でサイト調査を行う予定。各ユニットで約1,600名の建設雇用と250名の恒久雇用を創出し、エネルギー貯蔵と組み合わせた柔軟な電力供給をめざす。

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