着工はしたものの、2011年3月に発生した福島第一原発事故の影響で、工事を中止した原発が3基もあった。老朽化も無視できない現状で、工事を中止した原発の稼働は有効打とならないか?
2005年12月に着工して完成間近であった中国電力の島根原発3号機、2008年5月に着工した電源開発の大間原発1号機、震災直前の2011年1月に着工した東京電力の東通原発1号機である。
東京電力の東通原発1号機
東通1号機とは
東通原子力発電所は、青森県下北郡東通村に建設中の原子力発電所であり、東北電力と東京電力HDの2社が敷地を保有している。
1998年12月に着工した東北電力の東通1号機(BWR、110万kW)は2005年12月に運転を開始し、福島第一原発事故の影響で停止中である。東通2号機(ABWR、138.5万kW)の着工は未定である。
一方、2011年1月に着工した東京電力HDの東通原発1号機(ABWR、138.5万kW)は、福島第一原発事故の影響で建設を中断した。東通原発2号機(ABWR、138.5万kW)の着工は未定である。
東京電力HDの東通原発2号機(ABWR、138.5万kW)は、建設を中断した時(2011年3月末)における工事の総合進捗率は9.7%であった。その後、福島第一原発対応を優先しており本格工事は見合わせ、工事中の設備の維持・管理や安全・品質を確保する作業を適宜に実施している。
着工当時、日立製作所と東芝がコンソーシアム(企業連合)を組んで主要設備を納入する見通しで、日立製作所が原子炉、東芝は蒸気タービン・発電機をそれぞれ担当する。
東通原発1号機の主な特徴は、原子炉内蔵型再循環ポンプ(RIP)、改良型制御棒駆動機構(通常:電動駆動、スクラム:水圧駆動)、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器、非常用炉心冷却設備(ECCS)、大容量・効率化電気出力の増大など最新の技術を採用し、安全性・信頼性の向上を図っている。


2019年12月、東京電力HDの小早川智明社長は、東日本大震災を受けて建設を中断している東通原発について中部電力、日立製作所、東芝の共同事業化をめざす方針を発表。4社の共同事業とすることで早期の建設再開につなげる狙いであったが、賛同は得られていない。
2025年12月、東京電力HDの小早川智明社長は、東通原発1号機について「貴重な電源」としたうえで、「一日も早く建設工事を再開できるよう全力を注ぐ」と述べた。東京電力HD本社を訪れた東通村の畑中稔朗村長らの要望を受けての発言である。
加えて「まずは柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に注力していく」とした上で、東通原発の立地地域への対応について「東日本側のカーボンニュートラル電源、ベース電源としての原子力発電所の再稼働はかなり遅れている。日本の経済を支えるためにも次の段階へ取り組む」と語っている。
稼働が遅れている理由
東京電力の東通原発1号機の稼働が遅れている理由は明らかである。
■新規制基準の対応:耐震・津波・防護対策など膨大な追加対策が求められるのは必須であり、東通村のサイト周辺の地質調査やより厳しい地震・津波対策への検討が進められていない。
■人物金の問題:柏崎刈羽原発6,7号機の再稼働を優先しており、原子力規制委員会への東通原発1号機に関する安全審査の申請すらできない。
東京電力HDが公表している2024年度の電源構成は、火力発電の合計が73%、水力などの再エネ5%、原子力0%、FIT電気の6%、卸電力取引所の9%、他社から調達する8%である。そのため非化石電源比率は11%と低く、火力発電への依存度が依然として高いのが現状である。
カーボンニュートラル実現に向けて、老朽化した原発の再稼働に比べて安全性の高い最新鋭のABWRの稼働は有効である。加速するためには、民間任せとするのではなく資金面・法制面など政府による実質的な支援が必要な段階にある。

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