電力会社の非化石電源比率の現状(Ⅲ)

はじめに

 2025年10月、経済産業省で第108回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会が開催された。
 今年度は第2フェーズの最終年度であり、2026年度からの第3フェーズに向け、中間目標値の達成状況等の確認と、今後の運用等について検討を行われた。

エネルギー供給構造高度化法の進捗状況

これまでの「非化石電源比率」の推移

 2018年度の対象事業者の非化石電源比率は22.8%であった。「エネルギー供給構造高度化法」では、第1フェーズ(2020~2022年度)では中間目標(2030年度に40%以上)を導入した。
 その結果、第1フェーズでは非化石電源比率は21%から29%に上昇したが、第2フェーズ(2023~2025年度)では2024年度で31%にとどまった。

 中間目標2030年度に非化石電源比率を44%以上)の達成は、まだまだ明るいとは言えない状況にある。ただし、FIT電源への高い依存から、FIP電源の増加や原子力再稼働により非FIT電源の割合が増加したのは、電気料金の高騰対策としも明るいニュースである。

図4 非化石電源比率44%以上の達成に向けた推移  出典:経済産業省

ゆっくりと増加する「非化石証書」の取引状況

 「非化石証書」は、固定価格買取制度(FIT)に基づく再エネ由来の「FIT非化石証書(FIT証書)」と、大手電力会社が供出したFIT対象外の「非FIT非化石証書(非FIT証書)」があり、日本卸電力取引所(JEPX)が運営する「再エネ価値取引市場」「高度化法義務達成市場」で売買される。

 「非FIT証書」の取引量はゆっくりと増加している。大部分が発電事業者と需要家の相対取引(電力会社内での内部取引を含む)によるものであり、市場取引は少なく、今後の伸びが期待される
 また、2022年度以降は需要家が非FIT証書(再エネ指定あり)を直接購入でき、データセンター、不動産、自治体による利用など増加傾向にあるが、2024年度で4.6億kWh程度と限定的である。

 一方、「FIT証書」の取引量もゆっくりと増加しているが、売札量(売りたい企業による入札量)に比べて買札量(買いたい企業による入札量)の増加が顕著である。

図5 非FIT証書とFIT証書の取引推移  出典:経済産業省

 これまでの「高度化法義務達成市場」は、非FIT証書の取引価格が上限価格(1.3円/kWh)となる場合もあったが、多くの入札で下限価格(0.6円/kWh)となっている。
 「再エネ価値取引市場」についても、FIT証書の取引価格は着実に増加しているが、これまで全ての入札で売入札量が買入札量を大幅に上回り、約定加重平均価格は下限価格(0.4円/kWh)近傍であった。   

2040年度の中間目標設定は?

 「エネルギー供給構造高度化法」の中間目標の2030年度が迫る中で、2031年度以降の非化石電源比率の目標を定める検討が始まっている。

 2025年2月に策定された「2040年度のエネルギー需給見通し」では、再エネ4~5割程度、原子力2割程度、火力3~4割程度という新たな電源構成が示された。したがって、「2040年度のエネルギー需給見通し」の非化石電源の下限値を参照し、「2040年度に非化石電源比率を60%以上」(案)が示された。

 また、これまでと同様に第3フェーズも3年間(2026~2028年度)で終了することとし、2029年度以降は第4フェーズ(仮称)が運用開始される予定である。最終決定は、今後の課題である。

表1 2040年度のエネルギー需給見通し  出典:経済産業省

「非FIT証書」の販売収入

  非化石価値取引制度の目的の一つは、非化石証書の販売収益を非化石電源の新設・増設や維持に充てることにより、非化石電力量を維持拡大することである。

 そのため「非化石証書」の売り手のうち、旧一般電気事業者であった発電事業者及び電源開発については、外部への非FIT証書の販売収入がある場合、証書販売収入の額及び使途について、資源エネルギー庁に報告することを求めている。

  2024年度の「非FIT証書」の販売収入は、市場取引19億円、相対取引576億円である。
 使途の内訳は、拡充・改良については主に水力発電所の大型改修工事および原子力発電所の安全対策工事などで、修繕については主に水力発電所の放水管浚渫しゅんせつおよび定期点検などであった。具体的なそれぞれの金額は公開されていない。

図6 非FIT証書の収入の内訳   出典:経済産業省

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