現行の大型軽水炉をベースとし、既存技術の延長線上にあるため成熟度が高い「革新軽水炉」は、発電事業者が廃炉跡地への早期導入に向けて選択する可能性が高いと考えられる。沸騰水型軽水炉(ABWR)をベースに開発を進めている日立GEベルノバの「HI-ABWR」を見てみよう。
日立GEベルノバニュークリアエナジー
「HI-ABWR」とは
日立GEベルノバニュークリアエナジーは、革新軽水炉「HI-ABWR(Highly Innovative ABWR)」を公表している。英国・欧州の規制要求を満たし、英国の設計認証を取得した国際標準のABWR設計をベースに、福島第一原発事故の教訓を反映した革新的安全性を組み込んだ軽水炉である。
電気出力:135~150万kWの基本設計を進めている。

出典:日立GEベルノバニュークリアエナジー
【「HI-ABWR」の安全対策】
■自然災害・テロ・内部ハザードへの耐性強化で安全機能を防護:
地震や津波などの自然の脅威、航空機の衝突による物理的損傷、内部火災、溢水など、様々な災害の影響を最小限に抑えるため、原子力発電所の外壁を強化し、機器を分離配置する。
■静的安全設備により自然力で事故進展を抑制:
万一の事故が発生した場合、外部電源や運転員の操作に依存せずに、自然力により核燃料の崩壊熱を除去し、炉心を冠水維持できる静的原子炉冷却システムを採用する。
■重大事故時の外部環境への影響を大幅に抑制:
万一の炉心溶融が起きた場合、燃料デブリを冷却できるコアキャッチャーを設置。また、燃料被覆管の耐熱性を高め、事故時の水素発生を抑制する事故耐性燃料(ATF)の開発(2030年代に酸化物分散型FeCrAl合金被覆管、2040年代にSiC被覆管)を開発して適用する。
■外部環境への放射性物質放出の抑制:
万一の過酷事故に対して、フィルターベントシステムに加えてコンパクトな希ガスフィルターとヨウ素除去フィルターを設置して放射性物質の閉じ込め機能を強化。作業員や住民の被曝を緩和する。
■高燃焼度燃料による使用済燃料を削減:
保全合理化による稼働率向上で運転コストを削減し、他電源に対し競争力のある経済性を実現。
■負荷追従運転による電力系統安定化に貢献:
再生可能エネルギーとの共存を実現し、カーボンニュートラル社会の実現をめざす。

「HI-ABWR」の開発動向
2023年6月、初期投資リスク低減、長期的な安定電源確保、放射性廃棄物有害度低減の実現を原子力ビジョンとして掲げ、革新大型軽水炉「HI-ABWR」の開発では福島第一原発事故対策設備の合理的な実装と新たな安全メカニズムの導入により高い安全性をめざす。
2025年2月、革新軽水炉「HI-ABWR」を2023年に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」における「革新軽水炉」として具体化を進める。出力規模は1,350~1,500 MWeを想定し、基本システムは「ABWR」と同様で、福島第一原発事故の安全対策を設計段階から組み込んでいる。

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