現行の大型軽水炉の設計をベースとし、既存技術の延長線上にあることで成熟度が高い「革新軽水炉」は、発電事業者が廃炉跡地への早期導入に向けて選択する可能性が高い炉型と考えられる。国内では、沸騰水型軽水炉(BWR、GE日立と東芝)と加圧水型軽水炉(PWR、三菱重工業)があり、国内3社の原子炉メーカーが別々に「革新軽水炉」の開発を進めている。
革新軽水炉とは
2023年2月に「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」が閣議決定された。ロシアのウクライナ侵略以降、エネルギー安定供給の確保が世界的に大きな問題となる中、再エネや原子力などの脱炭素電源への変換を通じてエネルギー安定供給、経済成長を同時に実現する狙いである。
これを受けて経済産業省は、2023年3月に「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を決定した。この中で、「原発再稼働の推進」、「既設炉の最大限の活用」と共に、廃炉を決定した原発敷地内での「次世代革新炉の開発・建設」をあげている。
気候変動問題に貢献し、安定的に電力供給を行う電源として原子力発電を中長期的に利用していくためには、安全性、信頼性、効率を向上した「革新軽水炉」の開発と運用は必須である。
そのため、安全性向上、過酷事故対策、高経年化対策、稼働率の向上、発電出力の増強、セキュリティ対策などの様々な課題に向けた技術開発が、国内原子炉メーカーを中心に進められている。
国内では、沸騰水型軽水炉(BWR、日立GEベルノバと東芝)と加圧水型軽水炉(PWR、三菱重工業)があり、国内3社の原子炉メーカーが別々に「革新軽水炉」の開発を進めている。
現行の大型軽水炉の設計をベースとし、既存技術の延長線上にあることで成熟度が高い「革新軽水炉」については、既に、国内で一部の電力会社と原子炉メーカーが開発を進めている。

原子炉メーカー各社が進めるする具体的な技術に差異はあるが、それぞれの原子炉がめざす安全対策、過酷事故対策、用途に関しては多くの共通点がみられる。
重要なポイントとして、再生可能エネルギーとの共存のための出力調整機能の強化や原子力関連施設に対するテロ対策などがあげられる。
特に、福島第一原発事故を教訓とした過酷事故対策は、①動的安全と静的安全を組み合わせた冷却システム、②炉心溶融で発生した燃料デブリを受け止めるコアキャッチャー、③事故時に放射性物質の外部放出を抑えるシステムなどが共通して検討され、事故対策のための設計が盛り込まれる。
2025年10月、総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループが開催され、次世代革新炉の開発を進める原子炉メーカーから、安全性への取り組み、技術進捗などの説明が行われた。
三菱重工業の「SRZ-1200」は、基本設計がほぼ完了し、立地サイトが決まれば詳細設計に進む段階にあり、原子力規制庁との意見交換も実施済み。規制の予見性向上に取り組んでいる。
日立GEベルノバニュークリアエナジーからは、大型革新軽水炉「HI-ABWR」や小型軽水炉「BWRX-300」の説明があり、特に「BWRX-300」はカナダのオンタリオ州で建設が決定しており、米国やヨーロッパでも導入・許認可取得に向けた動きがある。
東芝エネルギーシステムズの革新軽水炉「iBR」は、頑健な建屋と静的安全システムの採用で更なる安全性向上を進めながら、設備・建屋の合理化を進めている。
IHIと日揮ホールディングスは、参画する米国NuScaleの小型モジュール炉(SMR)が米国で設計認証を取得し、基本設計業務がルーマニアで進められている。経済産業省の補助事業で、両社は原子炉建屋のモジュール化や要求事項管理、大型機器の溶接技術、耐震化などの技術開発を行っている。
2026年2月20日、第221回国会における高市総理施政方針演説が閣議決定された。エネルギー・資源安全保障に関して、「国産エネルギーを確保することが重要です。地域の理解や環境への配慮を前提に、サプライチェーンの強靱性確保を図りながら、脱炭素電源を最大限活用します。」とした。
特に、「原子力規制委員会により安全性が確認された原子炉の再稼働加速に向け、官民を挙げて取り組みます。廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での建て替えに向け、次世代革新炉の開発・設置についても具体化を進めます。」と表明した。
また、「世界に先駆けたフュージョンエネルギーの早期社会実装を目指します。また、水素社会の実現並びに資源開発及び資源循環の取組を加速します。特に、南鳥島周辺海域の海底のレアアース資源の活用に向け、取組を急ぎます。」とも表明している。

コメント