原子炉用核燃料の開発現状(Ⅰ)

原子力

 ロシアのウクライナ侵攻に端を発して、欧米各国はエネルギー安全保障の観点から原発向けの低濃縮ウラン(LEU)燃料の脱ロシア化を進めている。また、非軽水炉型の新型炉の多くでは従来の軽水炉用よりウラン濃縮度の高い「HALEU燃料」の使用が検討されているが、HALEU燃料でも脱ロシア化が始まっている。

進むのか?米欧の核燃料の脱ロシア化

低濃縮ウラン(LEU)燃料の供給

 米国原発で使う低濃縮ウラン燃料(ウラン235が5%未満)は、英独蘭の合弁会社ウレンコ(ニューメキシコ州)からの供給に加え、ロシアに2割を依存しており経済制裁の対象外としている。
 欧州はさらにロシアへの依存度が高く、ハンガリースロバキアなど5か国にロシア製原発が計18基あり、ロシア製の低濃縮ウラン燃料を使っている。

 欧州連合(EU)は、ロシアのウクライナ侵攻に対して計11回の対ロシア経済制裁を発動してきた。しかし、原子力関連はハンガリーの反対で除外された。現在も、ハンガリーとトルコでは、ロシア製原発「VVER-1200」(PWR、出力:119.9万kWe)の建設が進められている。

 一方で、2022年6月、チェコは核燃料の調達先をフランスのフラマトムなどに切り替える契約を締結した。ウクライナは米国ウエスチングハウスと協定を結び、ウラン燃料供給と原発「AP1000」(PWR、100万kWe)の導入を9基に拡大した。スェーデン、スロバキアもロシア以外からの核燃料の調達を検討している。

 また、フィンランドはロシアからの核燃料調達の契約終了後、米国ウェスチングハウスに切り替える方針で、ロスアトムと進めていた原発建設計画も中止するなど、脱ロシア化を進めている。 

図1 2020年時点の核燃料企業の濃縮シェア
出典:世界原子力協会

 2024年8月、欧州原子力共同体(ユーラトム)供給局は、欧州域内における燃料供給に関する2023年の年次報告書を公表。EU域内(27か国)では103基の原子炉が運転中で、2023年の原発による発電電力量は5,876億kWh、総発電電力量に占める原発の割合は約23%であった。
 EUの天然ウランの調達先は、カナダが約33%(4,801トンU)、ロシアが約23%(3,419 トンU)、カザフスタンが21%(3,061トンU)、ニジェールが約14%(2,089 トンU)で、EUの天然ウランの91%以上を4か国が供給。カナダからの供給が前年比約86%増、ロシアからの供給も約73%増と大きく伸長した。
 ロシアからの供給増は、ロシアのウクライナ侵攻による地政学的緊張を受けたVVER用燃料備蓄の影響であり、現段階ではEUのロシア依存の高まりとして解釈すべきではないとした。 

高純度低濃縮ウラン(HALEU)燃料の開発

 非軽水炉型の新型炉の多くでは、従来の軽水炉用核燃料よりもウラン濃縮度を増した「HALEU燃料」の使用が検討されている。しかし現在、HALEU燃料の製造をロシア国営企業ロスアトムの系列企業が独占しているため、核燃料の脱ロシア化が欧米を中心に始まっている。

 高純度低濃縮ウラン(HALEU:High-Assay Low-Enriched Uranium)燃料は、 天然ウランに0.7%しか含まれない核分裂反応を起こすウラン235を、5~20%まで高めた核燃料である。従来の原発で使用される燃料は濃縮度が5%未満であり「LEU」と分類されるが、濃縮度が5~10%のものは「LEU+」と分類される。

 海軍船舶用の高濃縮ウランに比べて低濃縮とすることで核兵器への転用を防ぎ、一方で従来の低濃縮ウランよりも少量で大きなエネルギーを発生させることができるため、原子炉の小型化燃料交換頻度を下げるために有効で、放射性廃棄物の排出量も少ない利点がある。

 また、濃縮度10%までの低濃縮度燃料(LEU+)は、既設原子炉の他、先進炉や小型モジュール炉(SMR)を含む次世代原子炉で、出力増強等による経済性向上が期待できる。

図3 新型炉で多く使われるHALEU燃料とは 出典:Centrus Energy Corp.

 2025年2月、経済産業省は令和6年度原子力の利用状況等に関する調査(国内外における原子力・核燃料サイクル関連動向等調査)報告書を公表している。

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