原子炉用核燃料の開発現状(Ⅱ)

原子力

 米国は海外企業の濃縮サービスに多くを依存し、現時点で米国内で稼働する商業用ウラン濃縮施設はニューメキシコ州ユーニスのウレンコUSAの工場のみである。2028年以降、米国ではロシアからの低濃縮ウランの輸入を原則禁止する方向で、核燃料製造が喫緊の課題となっている。

各国における原発用核燃料製造の現状(1)

米国の核燃料製造の動き

 米国は海外企業の濃縮サービスに多くを依存し、現時点で米国内で稼働する商業用ウラン濃縮施設はニューメキシコ州ユーニスのウレンコUSAの工場のみである。2028年以降、米国ではロシアからの低濃縮ウランの輸入を原則禁止する方向で、核燃料製造が喫緊の課題となっている。
 一方、米国は1960年代には使用済み燃料の再処理・再利用の最前線にいたが、1972年に再処理プログラムを停止している。

 2022年10月、テラパワーはGE・日立の合弁企業グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ(GNF-A)と、ノースカロライナ州ウィルミントンで次世代原子炉用の核燃料製造施設の建設で合意。2023年の建設開始を予定している。
 テラパワーが開発する次世代原子炉は、溶融塩エネルギー貯蔵システムを組み合わせナトリウム冷却型高速原子炉」で、HALEU燃料を使用する。2021年6月に、ワイオミング州に次世代原子炉の実証プラント建設を発表し、同年8月には、世代原子炉向けウラン燃料の国内サプライチェーン構築を提唱した。

 2023年6月、セントラス・エナジー(旧USEC)は、オハイオ州パイクトンの米国遠心分離プラント(ACP)でのHALEU燃料の製造を、原子力規制委員会(NRC)が承認したと発表。2019年11月にエネルギー省(DOE)と結んだ契約で、独自開発の新型遠心分離機「AC100M」16台によるカスケードをACPサイト内に建設する。
 2023年末までにHALEU燃料の実証製造を開始し、当面は900 kg/年の製造をめざす。最終的に商業規模の120台まで拡大し、HALEU燃料の約6000 kg/年の製造を検討している。

 2023年8月、オクロはウラン濃縮企業セントラス・エナジーとの協力拡大を表明する。2021年、両社はオクロ製マイクロ高速炉「オーロラ(Aurora)」に装荷するHALEU燃料の製造施設の建設を、オハイオ州南部で進める基本合意を締結している。

 2023年8月、米国規制委員会(NRC)は国内商業炉に濃縮度5%超の燃料装荷を初認可した。これにより、サザン・ニュークリアはボーグル2号機で濃縮度6%までの事故耐性燃料(ATF)の装荷が可能となる。

 2023年10月、オハイオ州にあるセントラス・エナジーの工場で小型次世代原子炉用向けのHALEU燃料製造が開始された。同11月には、米国はセントラスへの約1.5億ドル(約230億円)の補助を決めた。

 2024年1月、DOEは、原発向けの低濃縮ウラン(ウラン235が3~5%)の生産体制を、約22億ドル(約3200憶円)の予算を投じて設備増強を支援する方針を公表した。エネルギー安全保障の観点から、日英仏加と協力して、脱ロシアの国際的な供給網構築をめざす。 
 1993年、米国は核不拡散のためロシアの核兵器用の高濃縮ウランを低濃縮ウランに作り直して購入することで合意し、安い製品の輸入を続けたことで国内の核燃料産業が衰退した。

 2024年2月、GEベルノバは、傘下のグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)が濃縮度8%までの燃料製造、輸送、挙動解析で米国原子力規制委員会(NRC)から認可を取得した。ノースカロライナ州ウィルミントンにあるGNFの施設は、濃縮度8%までの燃料製造の認可を持つ米国初の商業施設となる。
 NRCは同時に、GNFが自社のRAJ-II輸送コンテナを利用して濃縮度8%までの燃料集合体の輸送を認可し、濃縮度5%を超える燃料解析が可能な先進的原子力解析法の許認可トピカルレポート(LTR)も承認した。

 2024年2月、オラノUSAは、米国シャイン・テクノロジーズと軽水炉の使用済み燃料を再処理するパイロット施設(処理能力:100トン/年)を米国で共同開発する協力覚書を締結した
 再処理・回収された核物質は既存炉や新規炉の燃料に再利用し、再処理過程で抽出された放射性核種は産業や医療に利用する。サイト選定を2024年末までに行い、2030年代初頭に運転を開始する。

 2024年5月、米議会は「ロシア産濃縮ウラン輸入禁止法」を可決し、ロシア産の低濃縮ウランの輸入を禁止した。ロシア産濃縮ウランは、2023年時点で米国の濃縮ウラン需要の約24%を供給。この禁止措置は2028年に全面発効し、2040年まで有効とされる。
 DOEが国内のウラン濃縮能力の強化、商業用核燃料の供給源多様化、安定供給を目的に狙いとして27億ドル(約3,820億円)を拠出するなど、燃料のサプライチェーン強化に向けた動きが活発化する。

 2024年9月、オラノUSは、遠心分離方式によるウラン濃縮施設の建設候補地にテネシー州オークリッジ市を選定。テネシー州が2023年に5,000万ドル(約71億円)を投じて創設した原子力基金を活用して建設される。

 2025年1月、スタートアップのスタンダード・ニュークリアは、テネシー州オークリッジの施設でDOEからHALEU燃料を受領した。スタンダードはHALEUを高温ガス炉向け「TRISO(3重被覆層燃料粒子)」を製造し、先進炉開発企業ラディアント・インダストリーズに供給される。   
 2025年8月、ラディアントが開発するヘリウム冷却マイクロ炉「Kaleidos」(出力:約0.12万kWe)はDOEの「原子炉パイロットプログラム」で対象炉に選定され、アイダホ国立研究所内の国立原子炉イノベーション・センターのマイクロ炉実験機で、2026年に実証試験を行う計画である。

  2025年9月、グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)は、ノースカロライナ州ウィルミントンの試験ループ施設で実証試験を完了し、レーザーウラン濃縮が商業的に実現可能である性能データを収集した。2025年を通じて実証プログラムを継続し、数百kg規模の低濃縮ウラン(LEU)を生産する。
 合弁企業GLE(豪サイレックス・システムズ51%、加カメコが49%)は、サイレックス独自の分子法レーザーウラン濃縮技術の独占行使権を有する。同社はケンタッキー州でもパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)を計画しており、2025年7月にはNRCに建設・操業に向けた認可申請を完了している。
 認可取得後、2012年11月のDOEとの劣化六フッ化ウラン(DUF6)の長期購入契約に基づき、2030年までにオハイオ州のガス拡散濃縮工場(PGDP)でDUF6の再濃縮を開始。PLEFでは20万トン以上のDUF6を再濃縮し、最大6000tSWU/年の生産能力となる。GLEは、ウランの転換から濃縮までを一拠点で行う。

 2026年1月、DOEは、今後10年間に総額27億ドル(約4000億円)を投じ国内ウラン濃縮能力の強化を支援する。低濃縮ウラン(LEU)とHALEUの供給支援を、次の3社に各9億ドルづつ随時発注契約する。
American Centrifuge Operating(セントラス・エナジー社の子会社)HALEU濃縮能力の構築
 2019年以降、DOEと連携して遠心分離機技術の実証を進め、2023年にHALEUの実証生産を開始。2025年12月に遠心分離機の製造を開始し、今回の支援で段階的に増設し、2029年頃の商業規模の稼働をめざす。
General Matter(ゼネラル・マター)HALEU濃縮能力の構築
 ケンタッキー州パデューカにあるガス拡散法用いたウラン濃縮工場跡地(2013年閉鎖)を活用し、HALEU濃縮施設の建設・運用をめざす。
Orano Federal Services(オラノ)LEU濃縮能力の拡大
 テネシー州オークリッジに新設する大型ウラン濃縮施設に約50億ドル(約7,500億円)を投資する計画で、DOE資金もこの事業に充当される。
●グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE):レーザー濃縮など次世代ウラン濃縮技術の開発
 DOEは約2,800万ドル(約42億円)を配分し、従来の遠心分離方式とは異なる技術の実用化をめざす。

 2026年2月、ソルスティスは、20億ドルの受注残高とDOE支援を背景に、MTWは2026年に1万トンを超えるUF₆を生産する見込みで、2024年の計画生産能力から約20%増加とし、さらなる増産を検討していることを発表。さらに新規プラント「メトロポリス2.0」の建設計画も検討している。
 米国の転換施設はイリノイ州南部の「メトロポリス・ワークス(MTW)」のみで、2017年にハネウェルはMTWの操業を停止したが、2023年7月に再開。2025年末に先端材料事業をソルスティス・アドバンスト・マテリアルズとして分社化し、現在ソルスティスが操業している。

 2026年3月、新興企業フラックスポイント・エナジー(FluxPoint Energy)は、米国ヒューストンで開催された国際エネルギー会議「CERAWeek」で、テキサス州サイトでウラン転換施設を建設する計画を表明した。
 当初の生産ラインはUF₆換算で約2500トン/年の生産能力で、市況によりラインを追加建設して最大4ラインで合計1万トン/年の生産能力を想定。技術的実現可能性と市場調査を完了し、基本設計(FEED)調査と米原子力規制委員会(NRC)との事前申請の協議を開始し、2030~2031年の操業開始をめざす。

 2026年3月、米国最大のウラン企業であるウラニウム・エナジー(UEC)傘下のウラン製錬・転換会社(UR&C)は、同社が計画中のウラン転換施設のNRCへの許認可申請の準備段階にある。サイトは未定であるが、UF₆換算で約1万トン/年の生産能力をめざす。米国の年間需要推定量は1.8万トン/年とされている。
 ウラン採掘から転換までを手掛ける米国唯一の垂直統合型燃料サプライヤーとなる計画を推進している。

 2026年6月、ウレンコUSAは、米国ニューメキシコ州ユーニスにある同国唯一の商業用ウラン濃縮施設の生産能力を約50%拡張する。数十億ドルを投資し、新たに遠心分離式の濃縮プラント施設を建設、カスケード最大24基、2100トンSWU/年の生産能力を追加する。2032年から順次稼働し、2036年までの完成をめざす。
 既存の生産能力は4300トン/年で、米国の濃縮ウラン需要の約1/3を占める。現在、700トン/年の拡張プロジェクトが進行中で、2027年に完了。今回を合わせると2030年代には生産能力が7100 トン/年となる。
 また、仏オラノUSAは50億ドルを投資し、米国テネシー州オークリッジに遠心分離方式のウラン濃縮工場「Project IKE」を計画中で、初期の生産能力は4000 tSWU/年を見込む。2026年3月に米原子力規制委員会(NRC)に建設・操業認可を申請し5月に受理されている。

英国の核燃料製造の動き

 英国政府は、2050年までに原子力発電設備を最大2400万kWまで拡大し、国内電力需要の約25%を賄う方針である。そのためイングランド北西部の核燃料生産拠点を強化し、長期的な国内核燃料供給体制を構築し、海外需要にも応えることでロシア製燃料への世界的な依存度を減らす方針である。
 2020年代末までに英国に核燃料製造能力を取り戻すために、政府と産業界は協働している。ロシアは現在、世界の核燃料製造能力の約20%、ウラン濃縮能力の約40%のシェアを持つ。

 2023年7月、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は、国産核燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8プロジェクトに対し、原子燃料基金(NFF)から総額2,230万ポンド(約41.5億円)を拠出する。NFFは、原子力事業者が国産核燃料を使用する選択肢を増やすことを目的としている。
 8つのプロジェクトには、①英国スプリングフィールドにある米国ウェスチングハウスの原子燃料製造工場の拡張・アップグレード、②HALEU燃料製造を含む多様な燃料製造への支援(1,050万ポンド、約19.5億円)、③カーペンハーストにあるウレンコのウラン濃縮工場での低濃縮ウランとHALEU燃料製造への支援(950万ポンド、約17.6億円)、④ニュークリア・トランスポート・ソリューションズのHALEU燃料輸送パッケージの開発支援(100万ポンド以上、約1.9億円)、⑤モルテックスFLEXの熔融塩炉の製造に必要な機器製造と運転支援(120万ポンド、約2.2億円)などが含まれる。 

 2024年1月、英国政府は3億ポンド(約558億円)を投じて、HALEU燃料の製造計画を立ち上げる。加えて、1,000万ポンド(約18.6億円)を投じて英国内で他の新型燃料の製造技術や設備を開発する。英国では、2030年代初めには先進的モジュール炉(AMR)の運転開始が見込まれている。

 2024年5月、英国政府は、英国に本拠地を置く濃縮業者のウレンコに1.96億ポンド(約382.9億円)を拠出し、最大10トン/年のHALEU燃料の製造能力を有するウラン濃縮工場の建設を支援する。新工場は2031年までに操業開始する予定。 

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