空飛ぶクルマ(Ⅳ)

航空機

 「空飛ぶクルマ」に関しては、世界中に様々な情報が発信されている。日本も遅れずにキャッチアップする必要がある。環境や安全基準の作成、パイロットの技能証明、自動運転などの運航方法の確立など、法規制が十分ではなく、新規産業育成を促すためにも諸環境の整備を急ぐ必要がある。
 しかし、空飛ぶクルマの成功の鍵を握るのは、低環境負荷が基本にあることを忘れてはならない。すなわち、バイオ燃料や再生可能エネルギーで発電した電力、その電力を使って製造したグリーン水素を燃料とすべきであり、欧米は既にその方向に舵を切っている。

国内の導入状況

 2021年8月、トヨタ自動車は、米国カリフォルニア州のJoby Aviationに3億9400万ドルの出資を発表した。2009年からJoby Aviation はeVTOLの開発を進めており、2023年に米連邦航空局(FAA)から商用航空の許認可を取得し、2024年には正式な運用開始を計画している。
 最高速度:320km/h、飛行距離:240km以上、定員はパイロット1名を含めた5名である。トヨタ自動車は、設計や素材、電動化の技術開発などで協力するほか、トヨタ生産方式(TPS)のノウハウを導入し、品質とコストを両立した機体を実現して早期の量産を目指す。

 2021年10月、日本航空(JAL)は英国Vertical Aerospace(バーティカルエアロスペース)が開発を進めているeVTOL「VA-X4」を最大100機購入またはリースできる契約を結んだ。2025年開催の大阪・関西万博での実用化を目指す。日本航空はVolocopterのドローン型空飛ぶクルマも導入する方針。

 2021年10月、トヨタ出身者が設立したスカイドライブが電動垂直離着陸機(eVTOL)の型式証明の取得を申請した。2人乗りで、2025年大阪・関西万博開催時の大阪ベイエリアでのエアタクシーサービスの実現、各地域での事業展開を目指している。
 型式証明は、機体の型式ごとに安全性や環境適合性を審査する制度で、国土交通省は図面や部品強度を検証し、飛行試験も実施する。

図17 スカイドライブが2025年ローンチを予定している「SD-05」

 2022年2月、ANAホールディングス(HD)が日本で「空飛ぶタクシー」の運航事業への参入を発表した。Joby Aviationと業務提携して同社が開発しているeVTOLの導入を計画している。今後、運航に加えインフラ整備やパイロット養成、航空管制などの面で協力する。
 具体的な事業の開始時期は明らかにしていないが、2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)を機に地元自治体などが空飛ぶクルマの実用化を目指しており、目標の一つに置いている。

 2022年3月、スズキはスカイドライブと空飛ぶクルマの事業化を目指して連携協定を締結し、インドを中心に世界展開を検討している。

 2022年10月、2025年の大阪・関西万博での飛行を目指す「空飛ぶクルマ」について、国土交通省とアメリカ連邦航空局が連携強化をはかる声明への署名式が行われた。日米で機体の認証や運航基準の整備などを円滑にすすめるのが目的である。

 2022年10月、米国Joby Aviationが、eVTOLに関して海外企業として初めて安全基準などが適合していることを証明する型式証明を国土交通省に申請した。
 今後、2国間で連携して審査を進める。型式証明が取得できれば、次に航空機の所有会社が耐空証明の取得を申請して取得することで実用化が実現する。

2022年12月、国土交通省が「空飛ぶクルマ」の新制度の概要を公表した。将来的には無人での自動運転が想定されているが、当面は有人運転に限って認めるため①操縦ライセンス制度を新設する。また、安全確保のため機体の整備者についてもライセンス制度を設ける。
 その他、②ブラックボックス(飛行記録装置)の設置の義務、③全地球測位システム(GPS)による位置情報発信装置の導入、④空飛ぶクルマ専用の離着陸場「バーティポート」の広さなどの設計基準、⑤充電施設や万一の消火設備に関する制度について、2023年度末までに新制度が正式に公表される。

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