忘れられたのか?建設中の原発(Ⅱ)

原子力

 着工はしたものの、2011年3月に発生した福島第一原発事故の影響で、工事を中止した原発が3基もあった。老朽化も無視できない現状で、工事を中止した原発の稼働は有効打とならないか?
 2005年12月に着工して完成間近であった中国電力の島根原発3号機、2008年5月に着工した電源開発の大間原発1号機、震災直前の2011年1月に着工した東京電力の東通原発1号機である。

電源開発の大間原発1号機

大間原発1号機とは

 大間原子力発電所は、電源開発が青森県下北郡大間町に建設中の原子力発電所である。2008年5月に着工した電源開発の大間原発1号機は最新鋭の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR、138.3万kW)で、2011年3月11日に福島第一原発事故の影響で本体建設工事を総合進捗率37.6%の状態で休止した。
 主契約者は日立GEニュークリアエナジーで、タービン設備を東芝が担当していた。

 翌年、2012年10月には本体建設工事を再開し、2014年12月、原子力規制委員会(NRA)に新規制基準への安全審査を申請した。その後、NRAによる安全審査が進められているが、審査書類の不備などもあり、津波などに備える安全対策工事の着手に遅れが生じ、運転開始時期は未定としている。

 大間1号機の主な特徴は、原子炉内蔵型再循環ポンプ(RIP:Reactor Internal Pump)改良型制御棒駆動機構(通常:電動駆動、スクラム:水圧駆動)鉄筋コンクリート製原子炉格納容器非常用炉心冷却設備(ECCS)など最新の技術を採用し,安全性・信頼性の向上を図っている。
 また、燃料は濃縮ウランだけでなく、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を段階的に全炉心に装荷する計画である。

 ECCSは、2系統の高圧炉心注水系(HPCF)、1系統の原子炉隔離時冷却系(RCIC)、3系統の残留熱除去系/低圧注水系(RHR/LPFL)の独立3区分の系統で構成され、各区分に高圧の注水系及び低圧の冷却系を有するシステムで、高圧の注水系のバックアップで自動減圧系を設けている。
 従来型のBWRと比べ高圧の注水系が強化され、信頼性・安全性が向上している。

図1 非常用炉心冷却設備(ECCS)の系統構成 出典:電源開発
図2 建設中の大間原発1号機の状況 出典:電源開発

 2022年9月、電源開発は、建設中の大間原発1号機の運転開始が予定の2028年度頃から2030年度頃に遅れる見通しを示した。原子力規制委員会による安全審査が長引き、津波などに備える安全対策工事の開始を予定より約2年遅い2024年後半に延期した。同原発の工事の開始延期は5回目である。
 NRAでは想定する津波の高さなどの議論が継続され、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)が定まらない。津波などに備える安全対策工事や、テロ対策施設の建設を終える必要がある。

 2026年1月、大間原発の建設を進める電源開発は、2030年度の運転開始目標が「厳しい」との認識を示した。新規制基準の適合審査が長期化し、既に工事の開始延期が6回目となる。安全対策として作る設備の量が多いため「確度の高い工程が見えない」としている。

稼働が遅れている理由

 本体建設工事が進められている電源開発の大間原発1号機、再稼働が遅れる理由は何であろうか?

安全対策の強化最新の知見に基づき、想定される地震の基準地震動が、それまでの650ガルから最大957ガルへ引き上げられ、再評価が必要となった。加えて、MOX燃料の使用計画が安全評価や審査を高度で複雑にしている。 
新規制基準の対応:耐震・津波・防護対策など膨大な追加対策が求められ、その回答や再検討に時間を要している。
人物金の問題:大間崎周辺の地質やプレートの活動性評価に関する審査書類の作成で、データの収集や解釈に時間を要している。

 大間原子力発電所は、電源開発による初の自社運営による商業用原子力発電所である。長年にわたり原発を保有し、オペレーション&メインテナンスを実施してきた他の大手電力会社とは立ち位置が基本的に異なる。加えて、MOX燃料の使用計画が複雑にしている。
 電源開発は、NRA対応など経験豊富な大手電力会社の全面的な協力を得る必要がある。より安全性の高い最新鋭のABWRの稼働を加速するためにも、政府は民間任せとするのではなく資金面・法制面など実質的な支援が必要である。 

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