日本の高速炉の開発現状(Ⅰ)

原子力

 原子炉(核分裂炉)は、核分裂反応によって生じる高速中性子を減速して核分裂反応を生じさせる熱中性子炉と、減速しないで核分裂反応を生じさせる高速中性子炉に大別される。高速中性子炉は、当初「核燃料サイクル」を実現するための重要な炉と位置付けられ、高速増殖炉(FBR)として開発が進められた。

 高速増殖炉は原子炉冷却材として液体金属ナトリウム(Na)が使用され、発電しながら消費した以上の核燃料(プルトニウム)を生成することができる。しかし、プルトニウムが過剰で増殖に意義を見出せなくなり、最近では単に高速炉(FR or FNR)と呼びプルトニウム焼却用原子炉と位置付けられている。  

なぜ、高速炉を開発するのか?(1)

高速炉は、プルトニウムを燃料として発電するための新型炉であると共に、「核燃料サイクル」を実現するための主要な炉型である。この「核燃料サイクル」を回すことにより、軽水炉での使用済み燃料を再利用でき、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を低減し余剰プルトニウムの削減ができる。

核燃料サイクルとは

 原子力発電所(軽水炉)では、天然ウラン(ウラン238の中に同位体ウラン235が約0.7%含有)を濃縮して、核分裂しやすいウラン235の濃度を3~5%に高めて燃料としている。 

 核分裂反応はウラン235に中性子が衝突することで生じ、核分裂の過程で発生した中性子が次々とウラン235に衝突して連鎖反応的に核分裂が進み、熱エネルギーが生じる。ウラン238も中性子を吸収して核分裂しやすいプルトニウム239に核変換し、さらに中性子を吸収すると核分裂して熱エネルギーが生じる。

 その結果、軽水炉での使用済燃料にはウラン235が1%、プルトニウム239が1%、核分裂生成物など高レベル放射性廃棄物が3~5%が含まれ、残りはウラン238となる。

図1 軽水炉における発電前後の燃料の変化  出典:日本原子力財団

 使用済燃料に含まれるウラン235やプルトニウム239を、再処理工場で化学的に抽出し、燃料として再利用するのが「核燃料サイクル」である。この核燃料サイクルは、軽水炉を中心にリサイクルする「軽水炉サイクル」と、将来的に高速増殖炉を開発してリサイクルする「高速増殖炉サイクル」とに区別される。 

軽水炉サイクル

 現在行われている軽水炉サイクルでは、再処理工場で高レベル放射性廃棄物を除去し、プルトニウム239を分離・回収して劣化ウラン(濃縮後にウラン235含有量が0.2%程度となったウラン)と混ぜた混合酸化物燃料(MOX燃料、プルトニウム239を4~9%含む)に加工し、軽水炉の燃料としてリサイクルする。

 通常のウラン燃料(約2.7億円/トン)に比べてMOX燃料(約4.2億円/トン)は高価であるが、ウランの利用効率はリサイクルを行わない直接処分に比べて1.2倍程度と試算され経済性は低い。しかし、プルトニウムを減らす目的で一部の原発でMOX燃料が使われており、この方式は「プルサーマル」と呼ばれている

高速増殖炉サイクル

 将来的に「高速増殖炉」が開発できれば、再処理工場で分離・回収されるプルトニウム239を15~20%に高めて劣化ウランとの混合燃料を炉心に使用し、その外周にブランケット燃料として劣化ウラン(主にウラン238)を配置し、中性子吸収を進めてプルトニウム239の増殖比を高めることができる。

 そのため高速増殖炉サイクルでは、使用済燃料の再処理を繰り返すことで、プルトニウムを燃料として利用しない直接処分に比べて利用効率を100倍以上に高めることができる。ウラン鉱石の可採年数は燃料の直接処分による利用では85年程度とされており、高速増殖炉サイクルは重要である。

図2 核燃料サイクル 出典:資源エネルギー庁 

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