非軽水炉型SMRの開発動向について(Ⅴ)

原子力

 国際原子力機関(IAEA)の定義による電気出力:30万kWe以下の小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)が、世界で注目を集めている小型高速炉小型軽水炉小型高温ガス炉など様々な炉型がSMRと呼ばれているが、モジュール化により工場内で組み立て、ユニットとして輸送・設置する炉の総称である。

ロシア

 ロシアは、旧ソ連時代からナトリウム冷却型高速炉の研究開発を進めている。スベルドロフスク州エカテリンブルグ市にあるベロヤルスク発電所では、1981年11月にはエカテリンブルグ市ベロヤルスクで3号機の原型炉「BN-600」(出力:60万kWe)が営業運転を開始した。
 1984年にはベロヤルスクでタンク型実証炉「BN-800」の建設が始まるが、ソ連崩壊により建設が中断され、2006年に再開される。2016年10月から4号機の「BN-800」(出力:88万kWe)営業運転を開始する。ハイブリッド炉心(ウラン燃料+MOX燃料)から、燃料交換時に順次MOX燃料への置き換えが進められた。 

図10 ロシアのナトリウム冷却高速炉「BN-800」 出典:原子力産業新聞

 2022年10月、ロシア国営原子力企業ROSATOM(ロスアトム)は、営業運転中の高速実証炉「BN-800」の全炉心にMOX燃料が装荷されたと発表。MOX燃料集合体は、2018年後半からクラスノヤルスク地方ゼレズノゴルスクの鉱業化学コンビナート(MCC)で連続製造を開始している。

 一方、2021年6月、ロスアトム傘下の燃料製造企業TVEL(トヴェル)傘下のシベリア西部トムスク州セベルスク市の化学コンビナート(SCC)で、鉛冷却高速炉のパイロット実証炉「BREST-300」(出力:30万kWe)の建設を開始する。2027年に運転開始の計画である。
 SCC内では、2024年に専用のウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料製造プラント、2030年に使用済燃料の再処理プラントの稼働を予定し、「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を構成する。

 2024年12月、ロスアトムは、鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」の燃料加工/再加工モジュール施設の試験操業を開始した。PDECを構成する3施設1つで、西シベリアのトムスク州セベルスクにあるシベリア化学コンビナート(ロスアトム燃料部門の企業)のサイト内で建設が進められる。
 「BREST-OD-300」では、ウラン濃縮の副産物である劣化ウランと使用済み燃料から抽出したプルトニウムから製造したMNUP燃料を使用する。製造はウランとプルトニウムの混合窒化物の炭素熱合成ライン、燃料ペレットの製造ライン、燃料棒の組立ライン、燃料集合体の製造ラインにより行われる。
 今後、原子力規制当局のロステフナゾルがプルトニウムの取扱いを承認後、MNUP燃料集合体の生産を開始する。既に、試験的にディミトロフグラードの原子炉科学研究所にある高速実験炉「BOR-60」とベロヤルスク原子力発電所3号機「BN-600」に装荷され、燃料の燃焼度合いなど確認済みである。

 ロスアトムは、鉛冷却高速炉(LFR、30万kW)の実証炉の運転は性能確認に重点を置き、10年後には120万kWのLFR「BR-1200」の商業運転を計画する。また、鉛ビスマス冷却高速炉の小型炉「SVBR-100」(電気出力:10万kWe)も開発中である。

 2025年3月、連邦環境・技術・原子力監督庁のロステフナゾルは、原子力発電所運転機関のロスエネルゴアトムに対し、ベロヤルスク原子力発電所3号機であるナトリウム冷却高速炉原型炉「BN-600」(出力:60万kWe)の15年間の運転期間延長を認可した。これにより2040年まで運転が可能となる。  
 使用済み燃料を再処理したMOX燃料が初めて試験され、1980年4月に「BN-600」は送電開始、1981年11月に営業運転を開始、約1770億kWhの発電実績があり、運転期間延長で+600億kWhの発電が見込まれる。 

 2025年4月、ロステフナゾルは、ロスアトムの電力部門にベロヤルスク原子力発電所5号機における高速炉「BN-1200M」の設置許可を発給した。 「BN-1200M」はナトリウム冷却高速炉(出力:122万kWe)で、準備工事が年内にも開始される。
 2027年の着工で完成は2034年、運転期間は60年で80年まで延長される可能性がある。使用済み燃料の再処理で得られるプルトニウムとウラン濃縮の副産物(劣化ウラン)から製造されるMOX燃料を使用し、放射性廃棄物を減容させて産業規模でのクローズド・サイクルの実現をめざす。

 2026年4月、ロスアトムは、スヴェルドロフスク州ザレーチヌイのベロヤルスク原子力発電所4号機「高速炉BN-800」(出力:88.5万kWe)で、使用済み燃料中に含まれる長寿命核種、特に放射性毒性と残留熱放出の高いマイナーアクチノイド(MA)を含むMOX燃料を燃焼させる世界初の試験運転に成功した。
 2024年夏にアメリシウム241とネプツニウム237を含む試験用燃料集合体3体が炉心に装荷され、約1年半にわたり通常より短期間の3燃料サイクルで照射された。今後、短寿命の核種に変換できることを確認する。高速炉は約60年間の運転で約4トンのMA処理ができ、これは軽水炉数基で生成される量よりも多い。

 2026年6月、ウズベキスタン東部のジザク州ファリシュ地区で、ロシア製SMR初号機「RITM-200N」(PWR、5.5万kWe)が着工した。ウズベキスタン初となる原子力プラントの基礎工事である初コンクリートが打設された。
 2024年5月の建設契約ではRITM-200N×6基の建設予定であったが、2025年9月、RITM-200N×2基ならびに大型炉VVER-1000×2基を建設し、同プロジェクトへの燃料供給も含めて再合意された。全基稼働後には172億kWh/年の発電で、国内の電力需要の最大14%を賄う見込み。

 2026年6月、ロスアトムの電力部門ロスエネルゴアトムが、2027年末までに、ベロヤルスク原子力発電所5号機(高速炉「BN-1200M」(出力:122.0万kWe)の着工計画を明らかにした
 2025年4月にロシア連邦環境・技術・原子力監督庁(ロステフナゾル)が、同5号機の設置許可を発給。2026年末までに詳細設計文書を完成させ、2027年春には建設許可を取得、2034年に完成を予定する。運転期間は少なくとも60年で、80年まで延長される可能性があり、MOX燃料を使用する。

中国

中国の高温ガス炉「HTR-PM」

 2012年から、清華大学原子力・新エネ技術研究院(INET)の技術を基に、ペブルベッド型高温ガス炉実証炉「HTR-PM」(熱出力:25万kW×2基、電気出力:21万kWe、炉心出口温度:750℃)が、山東省威海市石島湾で建設開始された。
 中国の国家科学技術重要特定プロジェクトの一つで、中国華能集団有限公司、中国核工業集団公司、清華大学が共同出資して華能山東石島湾核電有限公司を設立して開発が進められた。

 2016年12月に公表された中国の「エネルギー技術創新”一三五”計画」の重点項目として、実証炉「HTR-PM」による発電運転が進められ、2021年12月には電力網に接続して発電を開始した。2023年12月、「HTR-PM」が168時間の連続運転に成功し、世界初となる商業運転に移行した。 

 現在、商用炉「HTR-PM600」(熱出力:25万kW×6基×2ユニット、電気出力:65万kWe×2、原子炉出口冷却材温度:750℃)を設計中で、福建省、江西省、広東省、浙江省での建設が計画されている。

 2024年7月、清華大学は「Loss-of-cooling tests to verify inherent safety feature in the world’s first HTR-PM nuclear power plant」で、「HTR-PM」を使い外部電源が完全に失われた場合でも、冷却システムを使用せずに受動的に冷却することを実証した。

図11 華能石島湾高温ガス炉「HTR-PM」 出典:中国華能集団

中国の高速炉「CEFR」

 中国はロシアの協力を得て独自設計を進め、北京の原子能科学研究院高速炉研究センターに、プール型ナトリウム冷却炉高速実験炉「CEFR」(出力:2万kWe)を保有し、2014年12月に100%出力運転を達成し、プルトニウム燃焼炉の開発を進めた。

 2017年12月、中国核工業集団は福建省霞浦県長表島で、プール型ナトリウム冷却高速原型炉「CFR600」(出力:60万kWe)の建設を開始した。2020年12月、2基目の「CFR600」の建設を開始した。それぞれ2023年と2026年の稼働を予定する。
 また、実証炉「CFR1000」(出力:100万kWe)を計画しており、2030 年代に運転開始の見込みである。

 2023年5月、福建省霞浦県長表島で高速増殖炉「CFR600」の建設が最終段階に入った。年内の稼働が見込まれ、本格運転すれば100発超/年の核弾頭を製造できるプルトニウムが生産される。中国は核施設の査察義務がなく、民生用の核物質を軍事転用する可能性が高い

中国のトリウム溶融塩原子炉TMSR」

 2025年11月、中国科学院(CAS)は甘粛省ゴビ砂漠に建設したトリウム溶融塩原子炉で世界で初めてトリウムをウラン核燃料に変える実験に成功した。トリウムを溶融塩と一緒にに原子炉に注入して核分裂を起こして発電する原子炉で、溶融塩が冷却材の役割を果たすため冷却水の供給が不要である。
 トリウム溶融塩原子炉「TMSR:Thorium Molten Salt Reactor」では、トリウム(Th)の原子核に中性子を衝突させて核分裂性ウラン233に変換する技術が鍵で、第4世代先端原子力システムに位置付けられる。トリウム(Th)埋蔵量はインド34万トン、中国28.6万トンで、1000年以上使用できる量とされている。

 1965年に米国はテネシー州国家実験室に溶融塩実験炉を建設したが、研究を放棄した。「TMSR」は大気圧状態で高温液体溶融塩を冷却材に使用するため、巨大な圧力容器や多量の冷却水が不要であり、原子炉を停止せずに燃料を再装填でき、放射性核廃棄物も大きく減容できる。
 今回は実験原子炉(出力:2千kW)であるが、研究原子炉を経て2035年までに試験原子炉(10万kW級)の実現をめざしている。中国の国営江南造船所は2023年に世界で初めて溶融塩原子炉を採用した核動力コンテナ船の設計を発表した。原子力空母に採用する計画もある。

インド

 インドの原子力発電開発計画は国内に豊富なトリウム資源が存在するため、長期的にはトリウムの有効利用が可能な独自の核燃料サイクル(トリウム・サイクル)をめざしている。第1段階は従来の重水炉・軽水炉、第2段階は高速増殖炉第3段階は改良型重水炉を基本開発方針としている。 

 第2段階の高速増殖原型炉「PFBR」では、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する。炉心はウラン238のブランケットに囲まれ、高速中性子は核分裂しにくいウラン238を核分裂性のプルトニウム239に変換し、これにより原子炉は消費する燃料よりも多くの燃料を生産できる。
 また、「PFBR」は、将来的にはブランケットにトリウム232を使用するように設計され、核変換によりトリウム232はウラン233に変換されて増殖する。このウラン233を第3段階の改良型重水炉「AHWR」の燃料とする。

 「PFBR」により、限られたウラン埋蔵量からはるかに多くのエネルギーを引き出すことが可能になる。また、使用済み燃料を再利用するクローズド・サイクルが「PFBR」により完成するため、持続可能性が向上し、廃棄物の減容や有害度を低減し、大規模な地層処分施設が必要なくなる。 

 1985年10月、ループ型高速実験炉「FBTR」(出力:1.5万kWe)が臨界に達し、運転が継続している。2015年9月、タンク型ナトリウム冷却高速増殖炉原型炉「PFBR」(出力:50万kWe)が建設を完了。今後、2025年頃までに実証炉(出力:60万kWe)を2基建設する計画である。

 2024年3月、インド原子力省(DAE)は、タミルナドゥ州カルパッカムで建設中のナトリウム冷却式高速増殖原型炉「PFBR」(出力:50万kWe)で、MOX燃料の装荷を開始した。
 「PFBR」はインディラ・ガンジー原子力研究センター(IGCAR)が設計を担当し、2003年10月設立のDAE傘下のバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム(BHAVINI)が所有・運転する国産高速増殖原型炉である。2004年に着工したが、様々な技術的課題に直面して遅延していた。今後、6基の「PFBR」の建設計画がある。

 2026年4月、インド南部タミルナドゥ州のカルパッカム原子力複合施設で、国産の高速増殖原型炉「PFBR」が初臨界を達成した。稼働すれば、ロシアに次いで世界で2番目の商用高速増殖炉を運用することになる。  

図12 インドのナトリウム冷却高速増殖炉原型炉「PFBR」 出典:原子力産業新聞

韓国

 2023年7月、韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、次世代小型モジュール炉(SMR)の市場を韓国が主導するため、「SMRアライアンス」を発足させた。
 MOTIEや韓国水力・原子力会社(KHNP)、エネルギー経済研究院など11の政府・公共機関のほか、サムスンC&T(サムスン物産)、大宇E&C(大宇建設)、斗山エナビリティ、GSエナジーなどの31社が参画する。

 2024年2月、HD現代グループ傘下の韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)は、英国コア・パワーと米国サザン・カンパニー、テラパワーと協力して、船舶用の小型モジュール炉(SMR)の開発への参画を公表。2022年11月にKSOEはテラパワーに3000万ドル(約45億円)を出資している。
 冷却材と燃料の両方に塩化物溶融塩を使う塩化物溶融塩高速炉(MCFR)がベースで、テラパワーはMCFRの船舶用溶融塩炉である「m-MSR」を開発中。2023年10月、サザン・カンパニーとテラパワーは溶融塩を用いるポンプ駆動運転等の統合効果試験(IET)に成功している。

 2025年9月、サムスン重工業(SHI)は、イタリアのミラノ開催のガス・エネルギー展示会「Gastech 2025」で、小型モジュール炉の溶融塩炉「MSR」(熱出力:10万kW)を搭載した積載容量:174,000㎥級LNG運搬船の基本設計承認(AiP)の取得を公表。船舶の寿命期間中に燃料交換を不要としている。
 世界初となる「MSR」搭載LNG運搬船は、米国船級協会(ABS)ならびにリベリア海事当局から技術認証を受けた。同技術はSHIと韓国原子力研究院(KAERI)が共同で概念設計中の「MSR」を動力源とする。液体燃料と冷却材を混合した溶融塩を使用するため、船舶用エンジンとして注目されている。

韓国のSMR関連アクティビティ:
■2012年半ばに、韓国原子力研究院(KAERI)は海水脱塩と熱電併給が可能なシステム一体型モジュール式PWRタイプのSMR「SMART」炉(熱出力:33万kW、電気出力:10万kWe)を開発し、韓国規制当局から標準設計認証を取得する。
■斗山エナビリティは米国ニュースケール・パワーのSMR「NPM」の開発に出資し、主要機器の製造契約を獲得する。
■SKグループのSKイノベーションと韓国水力・原子力会社(KHNP)は、米国でナトリウム冷却式の小型高速炉「Natrium」を開発中のテラパワーに事業協力する。
■現代グループの韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)は、米国テラパワーと次世代SMRの共同研究を行い、2025年12月、米国ワイオミング州に建設中の先進炉「Natrium」の主要機器の製造を受注する。 
■現代E&C(現代建設)は、米国ホルテック・インターナショナルのPWR型SMR「SMR-160」の商業化と建設プロジェクトに協力している。
■サムスン重工業は、デンマークのシーボーグ製コンパクト溶融塩炉「CMSR」を搭載した海上浮揚式原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計に協力。CMSRパワー・バージは、出力:10万kWeの「CMSR」を2~8基搭載でき、24年間の稼働が可能である。

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