新潟県知事は容認の理由に、①柏崎刈羽6,7号機は規制委員会の審査に合格し安全性が確認された、②原発が優れた電力安定供給源で、国が最大限活用を推進する方針、③東日本の電力供給構造や電気料金の東西格差の是正に寄与、④脱炭素電源を活用した経済成長に寄与するなどをあげた。
その上で「国民生活と国内産業の競争力を維持・向上させるためには、柏崎刈羽原子力発電所が一定の役割を担う必要があるとの国の判断は、現時点において理解できる」と述べた。
東京電力HD柏崎刈羽原発6,7号機の再稼働
新潟県知事の原発再稼働の条件付き容認
2025年11月21日、原発の活用を掲げる日本のエネルギー政策が、また一歩前進する。福島第1原発事故以来止まっていた東京電力HDの柏崎刈羽原子力発電所の再稼働について、新潟県の花角英世知事は条件付き容認を表明した。既に、立地する柏崎市と刈羽村は容認の意向である。
2025年度内の柏崎刈羽6号機の再稼働にめどが立った。実現すれば東京電力にとって福島第1原発事故後初となり、首都圏の安定した電力供給につながる。東京電力は1基の再稼働で1000億円/年の収益改善を見込んでいるが、電気料金の引き下げなどは表明していない。
花角知事は「新潟県民の意見は再稼働に肯定的な方と否定的な方に大きく分かれている」とした上で、「これまでの安全対策、防災対策の取り組みについて正確な情報を県民に周知していくことを継続すれば、再稼働に対する理解も広がるのではないかと判断した」と語った。
以下の「7項目について確約をいただいた上で、県としては了承することとしたい」としている。
■新潟県知事が柏崎刈羽6、7号機の再稼働容認の条件 | 原子力産業新聞
①県民への丁寧な説明の徹底:原子力の必要性・安全性について、取り組み内容が県民に十分伝わっていないとの意識調査結果を踏まえ、国と東京電力に対し改めて丁寧な説明を要請。
②新知見に基づく安全性の再確認:最新知見が得られた場合、迅速に安全性を再確認すること。
③緊急時対応での国の関与強化:避難・屋内退避で民間事業者では対応困難なケースに備え、国の実動組織が確実に行動できるよう、平時からの関係機関の連携強化を要請。
④避難道路・退避施設、豪雪対応の集中的整備:原子力関係閣僚会議が示したインフラ整備を、新潟の豪雪事情も踏まえ早期かつ集中的に実施するよう要請。
⑤使用済み燃料処分、武力攻撃対策、損害賠償の確保:県民の大きな懸念である課題へ、国が責任を持って対応するよう要請。
⑥東京電力の信頼性回復:依然として十分に信頼が回復していないと指摘。国が設置する「監視強化チーム」の実効性と、活動成果の確実なフィードバックを要請。
⑦UPZ拡大と交付金制度の見直し:UPZ(緊急防護措置準備区域)が30km圏に拡大したが、電源立地対策交付金制度が見直されない点を問題視し、公平な制度運用のため早期の見直しを要請。
知事は容認にあたり、①柏崎刈羽6、7号機は規制委員会の審査に合格し安全性が確認、②原発が優れた電力安定供給力を有し、国が最大限活用を推進する方針、③再稼働は東日本の電力供給構造や電気料金の東西格差を是正し、④脱炭素電源を活用した経済成長に寄与する見通しを示した。
その上で「国民生活と国内産業の競争力を維持・向上させるためには、柏崎刈羽原発電が一定の役割を担う必要があるとの国の判断は、現時点において理解できる」と述べた。
加えて、「2024年3月に経済産業省から理解要請を受けて以来、長い時間をかけて関係各所と議論した。リスクを完全にゼロにはできないが、ただ漠然とした不安や合理性のない理由で再稼働を止めることはできないと考えていた」と説明。
また、県民意識調査では、安全・防災対策の認知度が高いほど再稼働を肯定する意見が増加する傾向や、20~30代の若年層で賛成する傾向が強いことが示された一方、依然として原発に不安を抱えている県民が多いことも説明した。
2025年11月21日夕方の会見で、赤沢亮正経済産業相は「花角知事の判断に感謝を申し上げる」と述べ、政府として原子力防災や東京電力のガバナンス(企業統治)強化、地域振興などの具体化を進める考えを示した。
再稼働の条件付き容認に至るまでの経緯
2011年3月、東日本大震災とそれに伴う津波により、福島第1、2原発が運転を停止。福島第1原発は、原子力基準の『レベル7』に相当する放射性物質漏れを伴う重大事故に至った。
2012年7月、内閣府所管の原子力損害賠償・廃炉等支援機構が50.11%の議決権を取得し、東京電力は実質的に国有化される。東京電力は、この原賠機構から交付資金を受けて賠償金に充当しており、資金を負債として計上していない。2024年度末時点で賠償金は累計13兆4058億円に達している。
2013年9月、原子力規制委員会(NRA)に対し、柏崎刈羽6,7号機の安全審査を申請し、2017年12月に安全審査に合格する。福島第1原発と同型の沸騰水型原子炉(BWR)として初のケースである。
2020年9月、IDカードを紛失した東京電力社員が、別社員のロッカーからIDカードを無断で持ち出し、なりすまして中央制御室へ不正入域する事件が発生したが、軽微な事案としてNRAへの報告が遅れた。また、「核物質防護設備の機能の一部喪失」や「7号機安全対策工事の不備」が相次ぎ表面化した。
これらの不祥事は2021年1月に報道されて発覚し、NRAも対応の遅れを認めた。 また、2020年3月以降、多数の侵入検知装置が故障したまま放置され、不十分な手荷物検査により未許可の携帯電話やスマートフォンを持ち込む違反が複数回確認された。
2021年4月、これらの相次ぐ不祥事の発覚で、NRAは柏崎刈羽原発の核物質防護設備の一部機能喪失を認め、事実上の運転禁止命令を出し、改善を進めて同年9月までに報告するよう指示した。 商用原発として「運転禁止命令」は初めての異例な措置である。
2021年10月、NRAが27項目について本格検査を開始。柏崎刈羽原発で相次いで発覚したテロ対策不備などの問題を受けて、重点審査核物質防護設備の機能回復と適切な運用や改善状況の確認、侵入検知装置の故障を放置しない体制の構築などのため、担当者が現地で検査を進めた。
2024年6月、東京電力は、柏崎刈羽原発7号機で設備の「健全性確認」が完了したと発表。7号機の原子炉に核燃料を入れる作業を終えた後、4月から健全性確認に着手していた。原子炉圧力容器から放射性物質の漏えいがないかなどを確認し、技術的には再稼働できる状態とする。
2024年8月、東京電力は柏崎刈羽原発が立地する新潟県柏崎市を訪れ、「6,7号機の再稼働後、2年以内に1~5号機の廃炉を含む最適な電源構成の道筋をつける」と市長に伝えた。
これは2017年、桜井雅浩市長が再稼働に同意する条件の一つとして、1~7号機が集中立地するリスクを低減するため廃炉計画の提出を求めたことに対する回答である。
2025年2月、柏崎刈羽原発7号機のテロ対策施設「特定重大事故等対処施設(特重施設)」の完成が10月13日の設置期限に間に合わず、完成時期は2029年とする方向で調整が始まる。NRAに2025年3月までの完工計画を提出していたが、詳細設計や資機材の確保が遅れて大幅な遅延が生じた。
そのため、2029年9月が設置期限である6号機を再稼働で優先する方針に切り替え、原子炉に核燃料を入れる作業が進められた。
2025年10月、東京電力HDの小早川智明社長は地元要望に応え、柏崎刈羽原発(全7基)の内1,2号機の廃炉の検討を表明。加えて、県に10年程度にわたり1000億円規模の資金拠出の方針も示した。1,2号機の廃炉を判断する時期は、再稼働から1.5年程度の期間を要するとした。
1号機の廃炉費用は約823億円、2号機は約736億円とした2023年度の見積額を説明し、廃炉が決まれば30~40年かけて段階的に作業を進める。また、政府は原発を巡る緊急時に利用する避難道の整備費1000億円超を、全額負担する方針を打ち出した。
2025年11月21日、東京電力HDの柏崎刈羽原発の再稼働について、新潟県の花角英世知事は条件付きでの容認を表明した。

2025年11月20日、NRAは柏崎刈羽原発でテロ対策関連の秘密文書の管理不備を発表。東京電力社員が厳重保管文書をコピーし自分の机で保管していた問題で、東京電力は6月にNRAに報告していた。他に、事前許可を得ていない工具が、柏崎刈羽原発の敷地内に持ち込まれる不備なども発表した。
NRAは情報漏洩などは確認されていないとし、東京電力の調査が終わり次第、最終的な評価を下すとしている。東京電力から地元には説明済みとした。
柏崎刈羽6,7号機の安全審査で運転禁止命令が解けるまで、再検査に2年8カ月を要した。再稼働が大幅に遅れた理由は、東京電力の相次ぐ不祥事・工事遅れにある。地元の人々は『福島第1原発事故』に重ねて、大きな不信を与え続けられている。 『二度あることは何度もある。』
まずは、再稼働に向けて大きなトラブルを起こさないことが肝要である。再稼働後も、順調に発電運転に進むことが信頼性の回復に必要で、他電力会社からの協力を受けるなど万全を期する必要がある。真に信頼を回復するためには長い時間が必要である。
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