世界で導入が進む太陽光発電(Ⅰ)

再エネ

 IEAによると、2022年の世界のCO2排出量は369億トンと過去最高を示した。2050年のネットゼロ達成のためには、2030年時点でCO2排出量の削減目標を、211億トン➡240億トンに積み増す必要がある。

 この目標達成のカギとなるのは再生可能エネルギー発電の増強である。2022年の世界の再生可能エネルギー発電の設備容量は3629GW(36.29億kW)だが、2030年には約3倍の1万1008GW(110.08億kW)に拡大する必要がある。そのため、太陽光発電の追加設備容量を630➡820GW/年に積み増す必要があるとした。

IEAの「Net Zero Roadmap(2023年更新版)」

「Net Zero by 2050」との比較

 2023年9月、国際エネルギー機関(IEA)は「Net Zero Roadmap(2023年更新版)」を発表した。IEAが2021年5月に発表した、2050年までにCO2排出量をネットゼロにするためのロードマップ「Net Zero by 2050」に、2021年以降の主要な進捗を加えて目標が修正された
 背景には、新型コロナ禍後の経済活動の回復エネルギー効率化政策の実施遅れなどで、2030年時点のCO2排出量やエネルギー最終消費量が増えると予測されるためである。IEAは「2050年までのネットゼロ達成への道筋は、当初のロードマップよりも険しい」と警鐘を鳴らした。

表1 2021年発表のロードマップ「Net Zero by 2050」からの主な目標の変更点

 IEAによると、2022年の世界のCO2排出量は369億トン過去最高を示した。2050年のネットゼロ達成のためには、2030年時点でCO2排出量の削減目標を、211億トン➡240億トンに積み増す必要がある。

 この目標達成のカギとなるのは再生可能エネルギー発電の増強である。2022年の世界の再生可能エネルギー発電の設備容量は3629GW(36.29億kW)だが、2030年には約3倍の1万1008GW(110.08億kW)へ拡大する必要がある。そのため、太陽光発電の追加設備容量を630➡820GW/年へと積み増す費用がある
 一方で、化石燃料の需要削減のために、CO2削減対策をとらない石炭発電所の新規承認の即時停止油田やガス田の新規開発の中止をあらためて強調した。

低エミッション発電の増加

 IAEは、2050年までにCO2排出量をネットゼロにするため、再生可能エネルギーは太陽光発電と風力発電が牽引し、原子力・CCUS付き火力発電・水素発電などによって補完され、低エミッション発電容量の割合は2022年の39%から2030年には71%、2050年には100%に引き上げられるとした。 

図1 低エミッション発電の電源別発電容量の推移 
出典:国際エネルギー機関(IAE)

化石燃料による火力発電の減少

 一方、CO2排出削減対策が取られていない化石燃料による火力発電は、2030年までに40%減少し、その後、2050年までに事実上ゼロとした。火力発電所は、①廃止、②CCUSを付帯、③水素などの低エミッション発電への切り換えの選択を迫られる。

図2 CO2排出削減対策が講じられていない化石燃料による火力発電量の減少
出典:国際エネルギー機関(IEA)

クリーンエネルギー技術の拡大

 IAEAは、クリーンエネルギー技術に関して、太陽光発電の導入容量および電気自動車の販売台数が、2021年策定のロードマップに沿って堅調に伸びていると評価した。また、関連技術の生産能力は急速に増加し、2022年は蓄電池が前年比72%増太陽光パネルは39%増水電解槽は26%増を記録している。
 クリーンエネルギー技術に対する投資は2030年までに4兆5000億ドル/年が必要とし、2023年の1兆8,000億ドルから約2.6倍の増加を必要とした。クリーンエネルギー技術の普及加速により、化石燃料の需要はこの10年間のうちにピークを迎える。

 自動車に関しては、2030年までの脱炭素化は電動化(HEV、PHEV、BEV)とバイオ燃料の導入により進められ、その後、2050年に向けてEV化が大きく進み、バスや大型トラックの一部ではFCEVも採用されるとした。

図3 各種の自動車用燃料の構成の推移 出典:国際エネルギー機関(IEA)

 現在、海運・航空で消費されるエネルギーの1%に過ぎないバイオエネルギー、水素、水素ベースの燃料は、 2030年には約15%、 2050年までに80%に増加するとした。特に、船舶ではアンモニアと水素航空機では合成燃料とバイオ燃料の導入により、脱炭素化が進められるとした。

図4 船舶・航空機用燃料の推移 出典:国際エネルギー機関(IEA)

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