伸び悩む地熱発電の現状(Ⅳ)

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 タービン方式による地熱発電システムの現在の主流はオープンサイクルであり、生産井せいさんせいから得られる蒸気でタービンを回して発電し、仕事を終えた蒸気を復水器で水に戻し、還元井かんげんせいを通じて地中に戻す。
 一方、加圧した水を地中に注入し、地中熱で加熱した後に、地上に戻して減圧することで蒸気化し、タービンで発電を行うクローズドサイクルが、次世代地熱発電の実証試験段階にある。

地熱発電の仕組み

 タービン方式による地熱発電システムの現在の主流はオープンサイクルであり、生産井せいさんせいから得られる蒸気でタービンを回して発電し、仕事を終えた蒸気を復水器で水に戻し、還元井かんげんせいを通じて地中に戻す。
 地中から得られる蒸気条件に応じて、ドライスチーム(Dry steam)、バックプレッシャー(Back pressure)、フラッシュサイクル(Flash cycle)、バイナリーサイクル(Binary cycle)などが実用化されている。

 一方、加圧した水を地中に注入し、地中熱で加熱した後に、地上に戻して減圧することで蒸気化し、タービンで発電を行うクローズドサイクルが、次世代地熱発電の実証試験段階にある。

図8 地熱発電の様々な形式

主力のオープンサイクル

 生産井から得られる地熱水は、含まれる蒸気と熱水の比率から蒸気卓越型熱水卓越型に分類される。蒸気卓越型の場合には、ドライスチーム式や、バックプレッシャー式が採用され、得られた蒸気により直接にタービンを回して発電する。

図9 ドライスチーム発電の仕組み

 ドライスチーム式は、生産井から得られる蒸気からわずかな湿分と不純物を除去後、蒸気で直接に蒸気タービンを回して発電を行う。
 国内では商用運転の第一号機である松川地熱発電所(認可出力:2.35万kW)のみで採用されている。タービンから出た蒸気は復水器で凝縮され、還元井を通じて地下に戻される。
 バックプレッシャー式は、復水器と冷却塔がなく、低コストで短期設置が可能であるが、環境汚染の問題もあり国内の設置例はない。

 しかし、蒸気卓越型のような恵まれた地熱水が噴き出る地点は少なく、多くの地熱発電所では熱水卓越型である。そのため、フラッシュサイクル式が地熱発電の主流となっている。

図10 シングル・フラッシュサイクル発電の仕組み 

 フラッシュサイクル式は最も良く使われており、生産井から得られた熱水と蒸気を汽水分離器で分離した後、蒸気のみをタービンに供給して発電を行う。熱水は還元井を通じて地中に戻し、タービンを出た蒸気は復水器で水に戻し、蒸気の冷却水として使う。
 ダブル・フラッシュサイクル発電は、2台目の汽水分離器で分離した熱水を減圧して沸騰させ、低圧の二次蒸気を得る方式で、タービンの中間段落に注気して発電効率向上を図る。

 ダブル・フラッシュサイクル発電は、国内では八丁原はっちょうばる発電所(出力:5.5万kW×2)や森発電所(出力:5万kW)などで採用されている。設備は複雑になるが、発電出力を15~20%向上させることが可能である。海外では、トリプル・フラッシュサイクル発電も実用化されているが、出力向上はわずかである。

 一方、バイナリーサイクル式は地熱水を熱交換器に導き、二次サイクルの作動媒体(フロンや炭化水素)を蒸発させてタービンを回転させるため、150℃未満の低温の熱水からでも発電が可能である。そのため、温泉水や工場排熱などによる発電システムとして注目されている。

図11 バイナリーサイクル発電の仕組み

 バイナリーサイクル発電は、150℃未満の低圧蒸気の場合に使われる。得られた熱水あるいは蒸気を熱交換器を介してブタン、ペンタン、代替フロンのような低沸点の有機媒体を蒸発させ、得られた蒸気でタービンを回して発電を行う。
 最近は、高温の温泉水を入浴に適した温度に下げる湯温調整用としても使える小型バイナリーサイクルによる温泉発電が、井戸を掘る必要がないため注目を集めている。

 バイナリーサイクル発電は、低沸点の有機媒体(二次媒体)を用いることから、オーガニック・ランキンサイクル(ORC)とも呼ばれている。日本では八丁原発電所内のバイナリー発電設備(出力:2000kW)や霧島国際ホテル地熱発電所(出力:220kW)で採用されている。
 また、100℃未満の温泉水でも高効率発電が可能なように、吸収式ヒートポンプ技術に基づきアンモニアと水を混合した二次媒体を用いるカリーナサイクルが開発されているが、数例の適用にとどまる。

「フラッシュサイクル」と「バイナリーサイクル」の比較

 一般に、フラッシュサイクルは、蒸気条件に優れた地熱発電所で用いられるため大容量・高効率の場合が多い。バイナリーサイクルは、フラッシュサイクルに比べると小容量・低効率の傾向にある。

 また、地熱発電所は活火山をつなぐ帯状の火山フロントに位置し、山中に位置するため豊富な冷却水を得ることが困難である。そのため、フラッシュサイクルの場合には蒸気の凝縮水を冷却に用いるが、バイナリーサイクルの場合は大型の空気冷却凝縮器が必要となる。

 地熱発電特有の腐食・スケール対策は両方式で大きく異なる。フラッシュサイクルの場合は地熱水がタービンを含むほぼ全ての系統を流れるが、バイナリーサイクルの場合は熱交換器までに限定され、タービン系の腐食・スケール対策は不要である。

表2 フラッシュサイクル発電とバイナリーサイクル発電の比較

クローズドサイクルの開発状況

図12 クローズドサイクルの地熱発電の仕組み

 2016年10月、ジャパン・ニュー・エナジーと京都大学が、クローズドサイクル式の新地熱発電システムによる発電実証に成功した。
 地下1450mまで水を循環させる密封された二重管型熱交換器(外径30cm、内径20cm)を埋め込み、地上より加圧注入した水を地中熱で温め、液体のまま高温状態で抽出する。得られた液体を地上で減圧して蒸気化し、タービンに供給して発電を行う。大分県玖珠郡九重町に建設した水分みずわき発電所(出力:24kW)で実証運転を継続している。

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