次世代火力発電システムとは?(Ⅰ)

火力発電

 高効率発電と低炭素化を目指し、経済産業省プロジェクトとして先進超々臨界圧火力発電(A-USC)、1700℃級の高温ガスタービン石炭ガス化コンバインドサイクル発電(IGCC)石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)ガスタービン燃料電池複合発電(GTFC)が進められた。

 しかし、世界的に脱石炭火力発電所がメガトレンドとなっている現状では、次世代石炭火力発電の開発構想は、早急に見直すべきである。

次世代火力発電の実用化ロードマップ

 次世代火力発電システムの開発指針は、「高効率発電」と「低環境負荷(低炭素化)」である。経済産業省が示す日本の次世代火力発電技術の取り組みから、主要な開発項目を抜き出してまとめた実用化ロードマップを示す。

表1 次世代火力発電システムの実用化ロードマップ

 また、それぞれの次世代火力発電システムの高効率化の見通しを、送電端効率に着目して示す。

図1 次世代火力発電システムの高効率化見通し

 第1世代の火力発電は2020年の技術確立を目指して進められてきた技術であり、LNG火力発電は高湿分空気利用ガスタービン(AHAT)要素技術実証、石炭火力発電は先進超々臨界圧火力発電(A-USC:Advanced ultra-super critical steam condition)の要素技術開発である。

 ところで、2023年5月、米国環境保護局(EPA)は、電力部門の温暖化ガスの排出抑制を目指して火力発電所にCO2回収装置の設置やクリーン水素の混焼を義務付ける規制案を公表した。パブリックコメントなどを経て、最終的な規制案が固まるのは2024年以降とみられる。
 老朽化した石炭や天然ガスを燃料とする火力発電所の廃止が加速される可能性があり、同様の厳しい規制が世界的に広がる。日本は火力発電依存率が75%程度と高く、厳しい選択を問われることは間違いない。水素社会の実現に向けた次世代火力発電システムの実用化に舵を切る必要がある。

米国環境保護局(EPA)の規制案:
■新規と既存のLNG火力発電所は、①2035年までにCO2の90%を回収する装置を導入、②水素を2032年まで30%、2038年まで96%を混焼――などの対応が必要になる。ただし、需要が急増する時間帯に稼働する「ピーク電源」のLNG火力発電所は、規制の対象外としている。
■石炭火力発電は、①2040年以降も稼働する予定なら2030年にCO2の90%を回収する装置を導入、②2035〜40年に廃止する予定なら2030年まで水素を40%混焼する――などの対応を求める。

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