火力発電のCO2排出量削減に向けた動き(Ⅲ)

火力発電

第6次エネルギー基本計画の策定

 2021年10月には、エネルギー政策の基本的な方向性を示す第6次エネルギー基本計画が策定され、地球温暖化対策計画と共閣議決定された。・経済産業省

図2 2030年における電力需要と電源構成 
出典:経済産業省(2021年10月)

 図2で示すように第6次エネルギー基本計画では、2030年度の電源構成で総発電量に占める割合を化石燃料発電の割合を、石油火力発電が2%程度(2015年策定時は3%程度)石炭火力発電が19%程度(同26%程度)LNG火力発電が20%程度(同27%程度)と大幅に抑制している。
 一方で、再生可能エネルギーが約36~38%程度(2015年策定時は22~24%程度)と大幅に拡大し、新たに水素・アンモニアによる発電の約1%程度を追加、原子力発電は約20~22%程度(同22~20%程度)と据え置き、非化石電源合計で59%程度(同44%程度)を目指すとしている。
 なお、総発電電力量は約9340億kWh程度(同1兆650億kWh程度)と示された。すなわち、2030年に向けた政策対応のポイントは「徹底した省エネルギー」「非化石エネルギー(脱炭素電源)の導入拡大」の2つの戦略により、目標値の実現を目指すものである。

第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)

 2021年10月、英国グラスゴーで開催されたCOP26では、先進国(2018年度CO2排出量335億トンに対する割合が米国14.7%、EU27カ国8.4%、日本3.2%、英国1.1%)が、2050年までに温室効果ガスを実質的に排出ゼロとする目標で足並みを揃えた。

 一方で、中国(同28.4%)やロシア(同4.7%)は2060年インドは初めてCO2排出量の実質ゼロの期限として2070年を打ち出し、「気温上昇幅を1.5℃以下に抑える努力の追求を決意する」ことで合意した。
 また、石炭火力発電の全廃を宣言する英国、フランスなど23カ国・地域に加えて、ポーランド、ベトナム、チリ、韓国など総計46カ国・地域が石炭火力発電の廃止を目指すことで合意したが、米国、日本、中国、インド、オーストラリアなどは石炭火力発電の廃止を表明しなかった
 日本は国際NGOから地球温暖化対策に後ろ向きの国として再々度、不名誉な化石賞受賞国となった。また、「温室効果ガスの排出削減量を取引する国際ルールに合意する」との2国間クレジット制度(JCM)が盛り込まれ、日本が提案する2013年以降を削減量として認めることが合意した。

これからの火力発電の動向は?

 2000年以降、日本経済の低成長により国内の電力需要は明らかに伸び悩み、2016年4月の電力自由化により電力会社の競争が激化している。加えて、ESG重視により資金調達が困難となる。このような状況下で、電力会社には火力発電への巨額投資を回収する道筋が描けない
 実際に、再生可能エネルギー発電の増大により火力発電の稼働率は確実に下がり、出力変動対策用にCO2排出量が低く負荷変動追従性に優れたLNG火力発電が、電力貯蔵システム構築までの移行期対策として需要が増す程度である。

 今後、高効率火力発電が採用されるためには、経済性に優れたCO2回収・貯留(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)設備の付帯が不可欠となる。CCSに関しては1990年代から研究開発が進められてきたが、最近では分離回収したCO2の有効利用が必須課題とされている。
 実際にCO2回収・利用・貯留技術(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)、さらにはカーボンリサイクルの重要性が指摘されている。安価と言われてきた火力発電であるが、今後はCCSあるいはCCUSを含めたコスト評価が必須である。

 一方で、従来の火力発電システムの体系を大きく変えることなく、CO2排出量を抑制するために、化石燃料の代替の検討が進められている。
 すなわち、バイオ燃料によるバイオマス火力発電や、次世代に向けた水素燃料による水素燃焼タービン水素燃料電池や、アンモニア燃料によるアンモニア直接燃焼ガスタービンの開発などである。
 バイオ燃料に関しては、大量・安定供給が課題である。また、水素燃料・アンモニア燃料は化石燃料由来では本末転倒であり、再生可能エネルギーにより製造されたグリーン水素であることが重要である。しかし、いずれの燃料にしても低コスト化が大きな課題である。

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