COP27で「化石賞」の受賞とは

火力発電

 2022年11月9日、エジプトにおいて開催された第27回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)で、日本がトップバッターとして「本日の化石賞」を受賞した。国連の正式なイベントではないが、日本のイメージを大きく損なうものであることに間違いはない。

 この「本日の化石賞」とは、国際的な環境NGOネットワーク「気候行動ネットワーク(CAN)」が、気候変動対策に対して最も後ろ向きの国へ、皮肉を込めて贈る不名誉な賞である。日本はCOP25(スペイン開催)、COP26(英国開催)に続いて3年連続の不名誉受賞となる。

「化石賞」の受賞理由

 今回の受賞理由は「日本は石油、ガス、石炭プロジェクトの世界最大の公的資金提供国で、2019年から2021年にかけて年間平均106億ドルを拠出した」ことである。
 「パリ協定での合意『平均気温の上昇を産業革命前から1.5℃に抑える』を達成するには、化石燃料への投資を止めるという国際認識があるにも関わらず、日本政府は石炭火力発電所にアンモニアを使用するなど、誤った解決策を他国に輸出するために多大な努力を払っている。それは、石炭火力発電所の寿命を、2030年以後も延ばすことを意味する」と厳しく批判した。

参考:英国の研究機関「TransitionZero」の分析(2022年2月15日)
 電力部門・重工業部門のゼロカーボンへの移行を後押しする英国シンクタンク「TransitionZero」は、日本の石炭火力発電政策に関する報告書を発表した。日本で推進するアンモニア混焼や石炭ベースの石炭ガス化複合発電(IGCC)によるCO2排出量削減効果はわずかであり、再生可能エネルギーよりもコストが高いため、脱炭素化に向けた解決策としては適切でないとし、潜在的な経済力が存在する洋上風力発電に対する投資へ戦略を転換することを提言している。

過去を振り返る

 1997年12月、COP3(京都)で初の国際的な温暖化問題への取り組みである京都議定書が採択され、2007年7月、日本は温暖化問題に積極的に取り組むべく「21世紀環境立国戦略」を閣議決定した。

 2008年7月、温暖化対策を主要議題とした北海道の洞爺湖サミット(G8)では、議長国である日本がリーダーシップを発揮するなど、環境先進国」を標榜していたのである。

 ところが、2011年3月の東日本大震災での東京電力福島第一原子力発電所事故を境にして、状況は大きく変化する。安全対策を含む総点検のために国内年間発電電力量の25%を占めた原子力発電所を順次に休止させ、再生可能エネルギーを主力電源とし、不足分を火力発電所の増強により補う計画である。

 しかし、東日本大震災から11年を経たにも関わらず、エネルギー基本計画で主力電源と位置付けた再生可能エネルギーは10%程度の増強に留まり、安全を最優先に進めるとした原子力発電所の再稼働も十分には進められず、出来る限り引き下げるとした火力発電比率もほぼ横ばいである。(図1参照)

 その結果、2020年度の国内年間発電電力量は、水力を含む再生可能エネルギー20%、原子力発電所4%、火力発電所76%(LNG39%、石炭31%、石油等6%)となった。欧米の先進国を中心として世界的に進む「脱石炭火力発電所」の動きに、日本は大きく遅れることになった注)

注)フランスは2021年、英国は2025年、カナダとイタリアは2030年までに、石炭火力発電所の廃止を表明している。石炭火力発電の割合の高いドイツも段階的廃止の完了時期を2030年に前倒しを表明し、米国は豊富に産するシェールガスを燃料とするLNG火力発電への移行が進む見通しである。

図1 日本の電源別発電電力量の推移

エネルギー・環境政策

 東日本大震災以降、安倍政権(2012~2020年)は再生可能エネルギー増強の鍵となる電力貯蔵に真剣に取り組まず、原子力発電所の再稼働も原子力規制委員会と電力会社に任せて積極介入しなかった。また、米国トランプ政権と歩調を合わせた感もあり、石炭火力発電所の削減も推進しなかった。

 菅政権(2020~2021年)において「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことで、日本の温暖化対策はようやく一歩前進する。しかし、再生可能エネルギーのみならず、原子力発電所の新設を含めたあらゆる選択肢を追及していくとし、非効率な石炭火力発電所の廃止・縮小に留まる内容であった。

 岸田政権(2021年~)では、首相の初外遊(COP26)においてアジアでゼロエミッション火力を普及するために1億ドル規模の事業を展開してサプライチェーンを構築し、火力発電の燃料をCO2を出さないアンモニアや水素に切り替える方針を表明した。
 しかし、当面は石炭火力発電所で石炭にアンモニアを混ぜる混焼を行い、将来的にはアンモニアや水素の専焼を目指すというもので、欧米の先進国が進める「石炭火力発電所廃止」の動きとは一線を画すものであった。今年のCOP27でも基本方針は変えず、甘んじて化石賞を受賞したのである。

 安倍政権下でのエネルギー・環境政策の長期停滞が、気候変動対策に対して最も後ろ向きの国というイメージの原因となったのである。その後の政権でも、積極的とはいえない状況が続いている。毎年起きる異常気象も温暖化の影響であり、電力需要ひっ迫の原因となっていることを再認識すべきである。

 ロシアによるウクライナ侵攻や気候変動対策を考慮し、EUや米国では究極のグリーン水素燃料に向けて動いている。日本も独自路線ではなく、各国と歩調を合わせた動きが必要である。水素社会の構築に向け世界をリードしていたはずの日本が、いつの間にか置いてきぼりの状態になっていないか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました