火力発電のCO2排出量削減に向けた動き(Ⅱ)

火力発電

石炭火力発電所のCO2排出量

ところで、石炭火力発電は燃料単価が安いといわれて久しい。2014年時点での発電コストは石炭火力発電が12.3円/kWhであり、LNG火力発電の13.7円/kWh石油火力発電の30.6~43.4円/kWhに比べて経済性に優れているという事実がある。・経済産業省、総合資源エネルギー調査会発電コスト検証ワーキンググループ

 しかし、CO2の排出量は、図1のように石炭火力発電(平均)は943g-CO2/kWh、最新の超々臨界圧(USC)の石炭火力発電(600℃)でも881g-CO2/kWhである。石炭火力発電のCO2排出量が多いことは、石油火力発電の738 g-CO2/kWhLNG火力発電の599 g-CO2/kWhと比較しても明らかである。
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 高効率のLNG焚ガスタービン・コンバインドサイクル発電(平均)は、CO2排出量を474g-CO2/kWhに低減でき、1500℃級ガスタービン・コンバインドサイクル発電では排出量を430 g-CO2/kWhとさらに低減できる。これがシェールガスを豊富に産する米国がLNG火力発電へ移行する理由である。

 しかし、これらの火力発電によるCO2排出量は、原子力発電の20g-CO2/kWhや、太陽光発電の38 g-CO2/kWh風力発電の25 g-CO2/kWhに比べると桁違いに多いことも事実である。今後もCO2排出量の低減を目指すには、如何に高効率化を図っても、火力発電の将来は決して明るいものではない。

図1 電源別の二酸化炭素(CO2)排出量のLCA評価結果 出典:電力中央研究所資料

日本の脱石炭火力発電所

 2020年7月、経済産業省が国内石炭火力発電所の計140基を対象に、1990年代前半までに建設された114基ある非効率発電所のうち100基程度を、2030年までに段階的に休廃止する考えを示した。電力各社の非効率石炭火力発電量に上限を設定し、徐々に上限を引き下げることで発電容量を縮小する。
梶山経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 (METI/経済産業省)

 ただし、北海道、沖縄、島嶼など電力環境に特殊な事情がある地域や、災害に備えた一部施設は事情を考慮する。脱石炭火力発電を目指す欧州の先進諸国からの批判をかわし、積極的に温暖化対策に取り組む姿勢を公表したもので大きな政策転換である。

 しかし、あまりにも打つ手が遅く、全廃に向けて動き出した欧州に比べて手緩い感は否めない。一方で、新型の高効率発電所26基に関しては維持・拡大、また、LNG火力発電の拡大に加えて、再生可能エネルギーや原子力発電所の再稼働を進めるとした。

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