火力発電に使われる燃料(Ⅱ)

火力発電

 バイオマスは生物起源による有機物資源である。これを燃焼(混焼あるいは専焼)させることで、従来の化石燃料と同様に火力発電システムを用いて電力を得ることができる。
 このバイオマスは生産時にCO2を固定化し、燃焼させることでCO2を発生するが、循環利用によりCO2の総量は増加せずに「カーボンニュートラル」が成立する。そのため、地球温暖化対策に有効な再生可能エネルギーと位置付けられている。この点が、他の再生可能エネルギーと大きく異なる。

バイオマス燃料

バイオマスの利用状況

 資源エネルギー庁のエネルギー白書2021では、2018年の世界のバイオマス利用量は図4のように1283.1 Mtoe (石油換算百万トン)である。
 欧州、米州、アジア・オセアニアの先進諸国が加盟するOECD(経済協力開発機構)では、気候変動問題への対応のためバイオマス導入を政策的に推進する国が多く、2018年時点では世界全体の23.2%を占めている。

図4 世界のバイオマス利用状況(2018年)、1Mtoe=11,630MWh
出典:資源エネルギー庁、エネルギー白書2021

 一方、多くのバイオマス利用は開発途上国(非OECD諸国)を中心に薪や炭として行われているのが現状で、世界全体の76.8%を占めている。また、世界全体では2018年時点で一次エネルギー総供給量は石油換算で14281.9 Mtoeであるが、このうちバイオマス利用は9.0%を占めている。

 また、先進国(OECD諸国)のバイオマス利用率は5.5%であり、開発途上国(非OECD諸国)のバイオマス利用率は11.6%である。2018年時点で日本の一次エネルギー総供給量は426 Mtoeであり、バイオマス利用率は2.2%と低いため、固定価格買取制度(FIT)によりバイオマス発電が推進されている。

 そのため、運輸部門におけるバイオ燃料の採用や、バイオマス発電などのバイオマス利用を推進する政策が打ち出されている。EUでは、2030年までに輸送用燃料のうち少なくとも14%をバイオ燃料及び再生可能エネルギー利用電気などにする目標が掲げられている。

バイオマスの分類

 図5には、バイオマス発電で燃料に使用されているバイオマス資源の分類を示す。バイオマス資源は「廃棄物系資源」、「未利用系資源」、「生産系資源」に大別される。

廃棄物系資源

 よく利用されるのは廃棄物系資源で、中でも建設廃材や製材工場残材など木質系を使うのが、「リサイクル木材燃焼発電」である。

 その他、畜産系、生活系、食品系、製紙系を使うのが「廃棄物(木質以外)燃焼発電」で、家庭、商店、事務所などから出る一般廃棄物、下水汚泥、食品廃棄物、廃棄物固形燃料(RDF)、廃プラスチック(RPF)、黒液(亜硫酸パルプ廃液)など、廃棄物由来のバイオマスを燃焼させる。

図5 バイオマス資源の分類

 2019年1月には、燃料多様化によるコスト低減で、一般木質バイオマスの一般木材、パーム椰子殻(PKS)、バームトランクに加え、ネピアグラス、ソルガム、ジャトロファ種子、パーム椰子空果房、ココナッツ殻、くるみ殻、ビスタチオ・アーモンド殻、ひまわり種殻、ベンコワン種子が承認された。
 また、バイオマス液体燃料には、パーム油に加えて、キャノラー油、大豆油、落花生油、ひまわり油、ポリアルファオレフィン(PAO)が新規燃料として承認された。

 FITではバイオマス資源のみが対象で、廃プラスチックスなど化石燃料由来の廃棄物系資源は含まれず、FIT適用には利用するバイオマスの種類毎に、年間の利用予定数量、予定購入価格、調達先等の燃料使用計画書を添付、廃プラスチックスと混焼の場合には、混焼比率を示す必要がある。

未利用系資源

 未利用系資源の木質系を使うバイオマス発電はFIT対象の「未利用木材燃焼発電」で、設備認定で未利用が確認できた間伐材や主伐材を燃焼する。農業系を使うバイオマス発電はFIT対象の「一般木材等(含PKS)燃焼発電」であり、製材端材、輸入木材、PKS、稲わら・もみ殻等を燃焼する。

生産系資源

 生産系資源は木質系、草藻系、微生物系などがあり、エネルギー利用のために栽培されるバイオマス資源である。木質系ではヤナギ等の短周期栽培木材が使われているが、草藻系、微生物系などの多くは研究開発段階にある。現時点で、生産系資源はFITの対象ではない。

石炭混焼向けバイオマス燃料の開発

ところで、既存の石炭火力発電所向けにバイオマス燃料の開発が進められている。

 出光興産は、木くずを固めて低温で炭化処理して繊維質を減らした新燃料を開発しており、混入率を従来の5%程度から最大30%に拡大できるとしている。タイ企業に製造委託して輸入し、2018年から国内電力会社向けに石炭の約3倍の価格で販売している。

 新日鉄住金エンジニアリングは、東南アジアのパーム農園で廃棄される植物から不純物を搾り取って固形燃料を作る装置を開発し、2018年度からインドネシアやマレーシアに装置販売し、日本向け輸入ルートの構築を進めている。この新燃料により石炭の最大30%を代替できるとしている。

 宇部興産は、石炭火力発電所で10%以上の比率(熱量比)で混焼可能な木質バイオマス燃料「トレファイドペレット」を開発した。粉砕した木材を円筒状に固めた木質ペレットを低温度で炭化させたもので、耐水性や石炭との混合粉砕性を改善している。
 一般的な木質バイオマスを石炭と混焼する場合の専用ハンドリング設備が不要で、より多くの量を石炭に混ぜることができる。現在のバイオマス燃料比率は6%程度であるが、16%程度に高める。

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