火力発電のCO2排出量削減に向けた動き(Ⅰ)

火力発電

石炭火力発電所の廃止・抑制

 持続的な成長のためには環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)が示す3つの観点を必要とするESGの考え方が世界中に広まっている。その関連で、欧州を中心にCO2排出量削減に向けた動きが急速に活発化している。
 すなわち、パリ協定による2020年以降の世界的な気候変動対策の強化を見越し、石炭火力発電所の廃止・抑制が進められている。それも2030年までの中期的な削減だけではなく、2050年という長期の削減目標も視野に入れている。
 実際に世界銀行、ノルウェー政府年金基金、フランスの保険大手アクサ、日本の銀行・生命保険などの機関投資家が化石燃料関連からの投資撤退を相次いで表明した。

2050年カーボンニュートラル

 日本は短期的には2020年時点の温暖化ガス排出量を2005年比で3.8%以上の削減、中期的には2030年に2013年に比べて26%の削減、長期的には2050年に2013年比80%を削減する目標値を示していたが、2020年10月には「2050年カーボンニュートラル」を宣言している。
・内閣官房成長戦略会議資料、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略、2020年2月12日
 その達成には火力発電の中でもCO2排出量の多い石炭火力発電所の抑制と高効率化が必須で、非効率石炭火力の廃止だけでは目標を達成できない。一方で、石炭火力発電所の新増設計画は多く、環境問題から地元の反対による訴訟リスクが顕在化し始めている。

 2018年4月には国際環境団体(RAN:Rainforest Action Network)が、中国の銀行や日本のメガバンクが石炭火力発電事業に合計939億ドルと総融資額の1/2以上を融資しているとの分析結果を発表し、石炭火力発電事業への国際的批判が起きている。
 このようなESGs重視が進む中で、2019年5月に(株)三菱UFJフィナンシャルグループ、2020年4月には(株)みずほフィナンシャルグループおよび(株)三井住友フィナンシャルグループが新設の石炭火力へのファイナンスを原則停止する方針を表明した。

脱石炭火力発電所と再生可能エネルギーシフト

 そのため、欧米を中心に「脱石炭火力発電所」と太陽光・風力発電などの「再生可能エネルギーシフト」が急速に進み、火力発電システムの世界市場は急速に縮小を始めている。

  • フランスは2021年、英国は2025年、カナダイタリアは2030年までに、石炭火力発電所の廃止
  • 石炭火力発電の割合の高いドイツも段階的廃止の完了時期を2030年に前倒しを表明
  • 米国は豊富に産するシェールガスを燃料とするLNG火力発電への移行が進む見通し

 一方で、アジアを中心とした多くの国々では、低コストの石炭火力発電所の増設が見込まれている。また、市場が急拡大している再生可能エネルギーに関しては、中国・韓国メーカーの参入により低価格化が急速に進み、世界的にみて石炭火力発電との価格競争でも遜色のないレベルに達している。

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