国内でのCCS事業化の動向(Ⅳ)

火力発電

 JOGMECプロジェクトでは、三菱商事が⑥マレーシア マレー半島沖北部CCS事業と⑨大洋州CCS事業三井物産が⑧マレーシア・マレー半島沖南部CCS事業をリードしている。その他にも、「丸紅」「住友商事」にもCCS事業に関連する動きがみられる。

その他、大手商社の進めるCCS事業

「丸紅」は米国・カナダで貯留をめざす

 2023年7月、カナダでCCS事業を進めるバイソン・ロウカーボン・ベンチャーズと協業を発表。カナダで建設するCCS事業は2か所で各300万トン-CO2/年の地下貯留で、総投資額は420億円程度。トラック輸送やパイプラインを通じ、主にカナダ域内のアンモニアや石油化学工場から排出されるCO2を貯留する。

 2024年9月、米国テキサス州でCCS事業を進めるOzona CCSが出資する事業会社と協業する。複数のガス生産・処理プラントから排出されるCO2を回収し、専用のパイプラインで輸送し、地下2~3kmの塩水帯水層に貯留する。各案件へは50%出資・参画し共同開発行う。
 2025年前半の最終投資決定、2026年中の商業運転開始をめざし、本事業を足掛かりにテキサス州における他のCCS案件も、共同で取り組む。

2025年1月、丸紅と商船三井は、自然ベースの吸収・除去系カーボンクレジットの創出・売買・代理償却を行う新会社「Marubeni MOL Forests(株)」を合弁で設立する。第1号案件としてインドでの10,000ヘクタールの新規植林を予定しており、2028年以降のカーボンクレジットの取り扱い開始する。

「住友商事」も英国・カナダ・アラスカでの貯留をめざす

 2023年9月、CCSの適地を調査する事業に乗り出すと発表。調査技術を持つスタートアップの超電導センサテクノロジー(SUSTEC)の株式を10%取得した。
 SUSTECは、超電導量子干渉素子(SQUID: Superconducting QUantum Interference Device)を応用した高感度磁気センサで、地下の比抵抗構造を調査する機器(SQUITEM)の高性能化に成功した。従来の人工地震による地震波探査に比べ、可搬式で広範囲の調査が可能で費用も最大1/5程度となる。

 2023年11月、在英子会社Summit Energy Evolution Limited(SEEL)を通じ、英領北海南部のAmethystガス田およびWest Soleガス田で設定されるCarbon Storage権益(CS017、CS018)をそれぞれ10%を取得。2029年の開発意思決定、2031年に1.5百万トン/年の圧入開始、その後段階的に6百万トン/年へ貯留量を拡大する。

 2024年5月、カナダ・アルバータ州のReconciliation Energy Transition Inc.(RETI)と、住友商事の子会社Ammolite Carbon Sequestration(ACS)通じて、カナダ・アルバータ州カルガリー東部のRETI East Calgary Region Carbon Transportation & Sequestration Hub プロジェクトの共同開発契約を締結した。
 本案件は、圧入井、コンプレッサー、および輸送用パイプライン等を建設し、カルガリー東部帯水層でのCCSを行うもので、最大1000万トン/年のCCS事業の2026年度開始をめざし、共同開発を進める。

 2024年10月、川崎汽船、Hilcorp Alaskaと、米国・アラスカでのCCS事業性調査の実施で共同調査契約を締結した。日本国内でCO2を集約し、大型液化CO2輸送船で米国・アラスカへ輸送、圧入・貯留する一連のCCSバリューチェーン構築に向けた事業性調査で、日米間での越境CCSの事業化の共同調査は初めてである。

「三井物産」は米国貯留も視野に入れる

 2022年3月、CCSの事業会社である英国Storegga Limited と、大気中のCO2を直接回収するDirect Air Capture(DAC)技術の事業化に向けてMOUを締結
 Storegga社は欧州初となる大規模DACプラントの商業運転達成に向けた事業化調査を進めている。同プラントからの回収CO2は、Storegga社が開発中のAcorn(エイコーン) CCSプロジェクトで、枯渇した油・ガス田に恒久的に貯留する。ネガティブCO2エミッションの実現をめざしている。

 2024年10月、三井物産は米国で最大2000万トン×30年間のCCS事業へ10%投資を発表。テキサス州コーパス・クリスティ沖の地中貯留計画で、スペイン石油大手レプソル、CCS事業者の米国カーボンバートと共同で事業会社を立ち上げる。今後5年程度で操業を開始する。
 製油所からのCO2排出のほか、化石燃料の改質によるブルーアンモニアの事業者などを想定する。 

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