鉄道分野の脱炭素化(Ⅳ)

鉄道

 都市近郊での導入が進められている蓄電池電動車(BET)は、電化区間ではパンタグラフを上昇させ、架線からの給電を受けて走行しながら、同時に主回路用蓄電池への充電を行う。非電化区間では、パンタグラフを降下させ、車両に搭載した主回路用蓄電池からの電力のみで走行する。

蓄電池電動車(BET)

 日本で旅客車両に使われている蓄電池電動車(BET:Battery Electirc Train)は、電化区間ではパンタグラフを上昇させ、一般的な電車と同様に架線からの給電を受けて走行しながら、同時に主回路用蓄電池への充電を行う。非電化区間では、パンタグラフを降下させ、車両に搭載した主回路用蓄電池からの電力のみで走行する。
 折り返し駅などで専用の充電設備で急速充電が行われる。蓄電池容量により航続距離が制約されるため、現状では30km程度の路線が上限である。減速時に走行用の電動機が発電機として機能し、発生した回生電力を蓄電池に貯めることができる。

 2014年3月、JR東日本の非電化路線である烏山線で運行された直流区間向けの蓄電池電動車「EV-E301系」(愛称ACCUM)は、架線からの直流1500VをDC-DCコンバータ装置で630Vに降圧し、VVVFインバータで三相交流に変換して交流誘導電動機を制御しており、最高速度:100km/hである。

 DC-DCコンバータ装置とVVVFインバータ装置の間には、5台を1群として各車両の床下に搭載する主回路用リチウムイオン蓄電池 (定格電圧:630V、容量:95kWh) と補助電源装置(容量:100kW)の静止形インバータが接続される。一編成当たりの蓄電池は10台で、総蓄電池容量:190.1kWhである。

図6 蓄電池電動車『EV-E301系』愛称ACCUM

 2016年10月、JR九州は近郊形交流電化用の蓄電池電動車「BEC819系」を、筑豊本線の若松線に導入し、2017年3月には同線の全車両を蓄電池電動車に置き換えた。2019年3月には香椎線に投入され、その後、福北ゆたか線、鹿児島本線導入が拡大している。

 架線からの交流20000Vを降圧した後にPWMコンバータで直流1600Vに変換し、VVVFインバータで三相交流に変換して誘導電動機を制御し、最高運転速度:120 km/hである。PWMコンバータとVVVFインバータの間に蓄電池(定格電圧1600V、定格容量383.6kWh)と補助電源装置が搭載されている。

 2017年3月、JR東日本は交流区間向け車両として、蓄電池電動車「BEC819系」をベースに寒冷地向けにカスタマイズしたEV-E801系「ACCUM」を男鹿線へ導入しており、2021年には男鹿線の全列車が同形式に置き換えられた。

 また、常用ではなく非常用として駆動用の蓄電池を搭載する車両が増加している。東京メトロでは、銀座線用の「1000系」に非常走行用電源装置を搭載している。停電が発生した場合でも、変電所からの電力に頼らず、最寄り駅まで自走できるようにしている。
 その他、京王電鉄の「5000系」やJR東海の「N700S」などでも、非常走行用電源装置を搭載して非常時に備えている。

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