赤字ローカル線再編の動き

鉄道

 国土交通省によると、2021年度時点で地域鉄道事業者95社のうち96%は赤字経営である。そのため、2023年10月に赤字続きのローカル線の存廃議論を促す「改正地域公共交通活性化再生法(地域交通法)」が施行された。
 今後、再構築協議会が設置され、必要に応じて案件ごとに国土交通省地元自治体、鉄道事業者の他に有識者らの参加し、持続可能な交通機関の選択が議論される。第一号はJR西日本の芸備線である。

改正地域公共交通活性化再生法とは

 2023年10月、赤字が続くローカル線の存廃議論を促す改正地域公共交通活性化再生法(地域交通法)が施行された。鉄道事業者や自治体の要請にもとづき政府が利害調整する仕組みで、国土交通省が事業者や自治体の要請を受けて議論を仲介する「再構築協議会」を設置する。

 国土交通省によると、2021年度時点で地域鉄道事業者95社のうち96%は赤字経営である。そのため鉄道事業者は便数や人手を減らすことでサービスが低下し、利便性を求める利用者は鉄道から自動車利用へ移ることで減少するという悪循環に陥っている。
 一方、沿線住民からは通学や高齢者の交通手段として鉄道維持を望む声が根強いが、地元自治体は財政上の問題から鉄道事業者の問題として積極的な関与は避け、建設的な議論が進められなかった。

 当面は1kmあたりの1日の平均利用者数を表す「輸送密度」が1000人未満の線区を優先し、協議会を設置して議論が進められる。急速に進む人口減少や過疎化ため、地方の鉄道事業は民間ビジネスとして成り立たないの現状であるが、地域住民の暮らしに交通手段の確保は欠かせない。

 再構築協議会には、国土交通省地元自治体、鉄道事業者の他に有識者らの参加が予定される。議論のうえ意見を集約し、鉄道の維持・利用促進やバス転換などに向けた実証実験を行う。必要な調査や実証実験に対して、政府は自治体の負担分の1/2を財政支援する。
 ただし、政府は自治体が鉄道を保有して、その運用を事業者に任せる「上下分離方式」を促しているが、自治体は財政負担が増すとして必ずしも積極的ではない。

 廃線ありきの議論でなく、地域に適合し「2050年カーボンニュートラル」を実現する持続可能な交通機関の選択が重要である。赤字でも鉄道を維持すべき地域は多い。バス転換する場合でも専用レーンを走るJR大船渡線のバス高速輸送システム(BRT : Bus Rapid Transit)など参考となる。
 
 一方、2023年10月、国土交通省はタクシー業の規制を緩和する。人口30万人以上の都市部に限定していた個人タクシーの営業を過疎地でも認める。75歳未満の年齢制限も80歳未満に引き上げ、Uターンなどで地方に戻る運転手が働けるようにし、「地域の足」を確保する動きも始まった。

JR西日本芸備線が申請第一号

 2023年10月、JR西日本が芸備線の備中神代こうじろ(岡山県新見市)ー備後庄原(庄原市)間(68.5km)の路線存廃を話し合う再構築協議会の設置を国土交通省に申請した。全国初であり、協議会が設置されれば3年をめどに存廃の結論が出される。
 路線を維持する場合には収支改善策、廃止する場合はバスなどの代替手段の確保を検討する。

 JR西日本によると、沿線の人口減や高齢化に加え、道路整備が進み鉄道利用者が大きく減少し、2020年度の東城ー備後落合間(25.8km)の輸送密度は20人とJR西日本管内で最小である。2019~2021年度の運賃収入は平均で約100万円に対し、約2.3億円の営業費用を要する。
 JR西広島支社は、再構築協議会については「鉄道の存廃に前提を置かない議論の場として考えている。その地域にとって最適な交通体系を議論していく」と強調した。

 実際のところは、2022年5月にJR西日本は存廃も含めた協議開始を申し入れたが、廃線を警戒した地元自治体側が態度を硬化させて協議が停滞した。そのため、今回の改正法を”渡りに船”として、国土交通省が行司役となる再構築協議会の設置を申請したのである。

 庄原市や市内の観光関係者などは、鉄道を残す方向での議論を期待する。一方、広島県知事は「公共交通を維持するために自治体が補助金などの経費を増やしていくと、非常に重い負担になる。協議会という制度で、これまで弱かった自治体の立場を国に補完してほしい」と求めた。

 今後、国土交通省は沿線自治体から意見を聞き、必要と判断すれば協議会を設置する。JR西日本の 芸備線の再構築協議会の行方は、全国各地にある赤字路線の存廃を巡る議論の試金石となる。

図1 芸備線の利用につながるよう期待を込めて導入された赤い「カープ列車」(広島市安佐北区)

利用者が少ない多くのローカル線

 経済性から存続の危機が議論されているローカル線の現状において、「2050年カーボンニュートラル」とのバランスは難しい問題である。カーボンニュートラルは鉄道事業全体で考える必要があり、マスバランス方式での脱炭素化を考える必要がある。

 ローカル線のオール電化の可否は低コスト化にある。そのため、蓄電池電動車の普及はリチウムイオン電池の高性能化と低コスト化が鍵で、自動車用蓄電池の開発動向を見極めながら進められる。
 また、高価な燃料電池電動車の普及も、低コストと安価なグリーン水素の供給が前提条件である。
この条件が崩れると、”つなぎ”の役割りであるドロップイン型バイオ燃料電動車が、脱炭素の本命となる。しかし、バイオ燃料も低コスト化と供給量の確保が大きな課題である。

 2023年5月、JR東日本管内では、輸送密度85人の久留里線(千葉)で廃線を視野に千葉県や君津市と協議を始めた。JR九州管内では、輸送密度106人の肥薩線(熊本、鹿児島など)、JR東北管内では、輸送密度107人の津軽線(青森)と輸送密度169人の米坂線(新潟、山形)でも協議中である。

 今後、JR西日本管内では輸送密度37人の木次線(島根、広島県)、JR東日本管内では輸送密度102人の大糸線(新潟、長野県)、JR東北管内では輸送密度78人の花輪線(岩手、秋田)、JR四国管内では輸送密度301人の予土線(愛媛、高知)でも存廃論議に発展する可能性がある。  

表1 利用者が少ない全国の主なローカル路線(2019年度)
出典:読売新聞

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