現行の大型軽水炉をベースとし、既存技術の延長線上にあるため成熟度が高い「革新軽水炉」は、発電事業者が廃炉跡地への早期導入に向けて選択する可能性が高いと考えられる。次は、実績のある改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)をベースに、開発を進めている東芝の「iBE」を見てみよう。
東芝(東芝エネルギーシステムズ)
革新軽水炉「iBR」とは

「iBR」は、カーボンニュートラル社会の実現と、様々なエネルギー問題を解決し、新たな社会との共生の関係の構築をめざしている。iBRは、innovative(革新的)、intelligent(知的)、 inexpensive(安価) BWR(沸騰水型軽水炉)を略したものである。電気出力:80万kW、100万kW、135万kW、150万kW級の基本設計を進めている。
なお、複数のiBRラインアップのうち、電気出力:135万kWの建設単価は60万円/kWとしている。安全系の追加コストにより、1990年代に建設されたABWRの2倍を想定している。耐震設計の条件などで変化するとしているが、iBR(電気出力:135万kW)1基の建設には8100億円を要する。
【「iBR」の特徴】
■非常時の電源喪失対策を強化する動的安全システム:
自然災害のあらゆるケースを想定し、多様な非常用電源(ディーゼル/ガスタービン)を分散配置して電源喪失を防ぐと共に、冷却系統を多様化(海水冷却/大気冷却)する。
■万が一、非常用電源を失っても炉内や格納容器を冷却する静的安全システム:
電源不要、運転員の操作も不要とし、電源喪失後も非常用復水器で上部冷却プールの水により7日間の炉内自然冷却を可能とする。
■万が一、炉心溶融事故が生じても住民を守る革新的安全システム:
発生した水素と放射性物質を閉じ込めるため、二重円筒格納容器と静的フィルターシステムを採用してベント不要とし、溶融燃料を受け止めて自動冷却するコアキャッチャーを設置する。SiC複合材料で被覆した事故耐性燃料(ATF)を開発し、耐熱性・高温強度、事故時の水素発生抑制を実現する。
■外部からの物理的な脅威に対する安全対策:
航空機衝突、テロ行為などや、地震、津波などあらゆる甚大災害に対応できる低重心の建屋構造として、鋼板と鋼板の間にコンクリートを流し込む鋼板コンクリート構造ドームを採用する。
■再生可能エネルギーの電力需給調整への柔軟な対応:
制御棒の位置制御だけでなく、原子炉内の冷却水の再循環流量制御により発電出力の調整を行い、高い負荷追従性を実現する。
■ABWRをベースとし優れた安全性と経済性を両立:
格納容器内の主要機器を圧力容器(RPV)と内部ポンプ(RIP)に絞り、シンプル化することで建設・メンテナンスコストを抑制。安全系の追加により、1990年代に建設されたABWR価格の2倍を想定。


革新軽水炉「iBR」の開発動向
2023年7月、国内原発の再稼働に向けた支援や次世代革新軽水炉「iBR」の開発状況について公表。東北電力女川原子力発電所2号機は、2023年1月の再稼働に向けて作業は順調に進んでおり、「iBR」についても2030年代の建設をめざして開発に注力している。
福島第一原発事故を教訓として、「iBR」では航空機衝突やテロなどの外部ハザードに対する耐性強化、確率論的評価に基づく安全対策、炉心溶融を前提とするシビアアクシデント対策、放射性物質の放出を伴うベントを行わないなどのコンセプトを基に基本設計を進めている。
2025年12月、東芝が安全性を大幅に高めた次世代「革新軽水炉」の開発を加速。経済産業省の「次世代革新炉の開発・建設に向けた技術開発・サプライチェーン構築支援事業」に8月に採択され、2025年度から追加安全対策や解析コードの適用性などの確認試験を始めた。
2020年代末までに一連の作業を完了し、「iBR」の採用が決まれば詳細設計、その後、設備の製作・建設へと進めるが、早くても稼働は2030年代以降となる見通しである。国内では10年以上も原発の新設はなく、技能伝承や人材育成の機会が減り、サプライチェーンの再構築が必要である。

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