次世代航空機の開発動向(Ⅲ)

航空機

 広義の電動航空機(EA)には、ジェットエンジンと電動モーターを組み合わせて使うハイブリッド航空機(HEA)、蓄電池のみの狭義の電動航空機であるピュアエレクトリック航空機(PEA燃料電池航空機(FCEA)が含まれる。また、次世代航空機には燃料電池航空機(FCEA)に加えて、水素タービン航空機(HTA)の開発が進められている。

航空機駆動システムの分類

 航空機ジェットエンジンは、前方から取り込んだ空気を圧縮機で高温高圧状態にし、そこにジェット燃料を噴射して燃焼させることで後方に排気し、その反作用により推進力(推力)を得ている。

 現在、航空機の主流となっているターボファンエンジンの場合は、さらに燃焼ガスによってタービンを回転させ、その回転力によってエンジン前方に配置したファンを駆動して推力を増している。
 推進効率向上のために、ファンを大径化してその流量を増加させてファン排気速度を低減させることで効率向上を目指す「高バイパス比化」が進められている。

 近年、さらなる高バイパス比化を目指し、ファンを低圧圧縮機および低圧タービンと異なる低回転数で駆動できるギアード・ターボファン(GTF:Geared Turbo-Fan)エンジンが開発されている。
 エアバスA320neoに搭載されるPratt & Whitney製のPW1100GJMエンジンは、先進GTFを採用し、バイパス比を同クラスの従来エンジンの約5から約12まで増加させ、高い推進効率を実現している。

図7 ターボファンエンジンの基本構成

 図8には、航空機用ジェットエンジンの電動化に関して分類を示す。電気を使う航空機の総称として電動航空機(EA:Electric Aircraft)という表現が使われている。

 広義の電動航空機(EA)には、ジェットエンジンと電動モーターを使うハイブリッド航空機(HEA:Hybrid Electric Aircraft)、蓄電池のみの狭義の電動航空機であるピュアエレクトリック航空機(PEA:Pure Electric Aircraft)、燃料電池航空機(FCEA:Fuel Cell Electric Aircraft)が含まれる。

 また、小型航空機の電動化が進めば、プラグイン・ハイブリッド航空機(PHEA)が現れるであろう。また、次世代航空機には燃料電池航空機(FCEA)に加えて、燃料を水素としてジェットエンジンで飛行する水素タービン航空機(HTA:Hydrogen Turbine Aircraft)の開発が進められている。

図8 広義の電動航空機(EA)の分類

 このように自動車の電動化と類似した様相を示す航空機の電動化であるが、大きな違いがある。広義の電気自動車(EV)に共通するのは回生ブレーキで、減速時に生じるエネルギーを蓄電池に充電することで燃費が向上する。しかし、航空機では回生ブレーキがなく、燃費向上の仕組みが異なるのである。

ハイブリッド航空機(HEA)

 ハイブリッド航空機(HEA)では、ジェットエンジンと電動モーターを動力源とするが、2つの動力源の使い方により、図9に示す(a)パラレル方式、(b) シリーシリーズ・パラレル・パーシャル方式、(c)シリーズ方式の3種類が検討されている。

(a) パラレル方式
(b)シリーズ・パラレル・パーシャル方式
(c)シリーズ方式
図9 ハイブリッドエンジンの分類と基本構成

 パラレル方式は、ファンをジェットエンジンと電動モーターの両方で駆動させる方式で、ターボファンエンジンに電動モーターを直列に接続する構成である。主にジェットエンジンでファンを駆動して二次電池(蓄電池)に充電し、燃料を多く消費する離陸時に電動モーターがアシストする方式である。

 シリーズ・パラレル・パーシャル方式は、エンジン軸動力の一部を発電機により電力に変換し、胴体尾部に設置されたファンを電動モーターで駆動する。胴体尾部ファンは胴体表面の境界層を吸い込み、摩擦抵抗を抑制するためBLI(Boundary Layer Ingestion)ファンと呼ばれ、同時に推力も発生する。 
 従来のチューブ&ウィング形状の機体への適用が容易で、蓄電池がなくても成立するなど、技術的リスクが比較的小さいため、旅客機の電動化手法として有望と考えられている。

 パラレル方式とシリーズ・パラレル・パーシャル方式のハイブリッド航空機は2030年代から社会実装され、従来よりも約10%程度のエネルギー消費量の低減が可能と想定されている。

 シリーズ方式は、ジェットエンジンに連結された発電機を駆動させて得られた電力で、電動モーターによりファンを回転させる。現在検討されている電動航空機の多くは、革新的な改善が望めるこのシリーズ方式である。
 ジェットエンジンは発電機の駆動用のため設置位置は比較的自由で、推力を生み出す電動ファンの配置やファン数も自由度が高い。余剰電力が発生する場合には蓄電池に充電し、必要な場合に使用する。

 シリーズ方式ではファンの設置自由度が高いため、機体形状をチューブ&ウィングからさらに効率的な翼と胴体が一体となった機体形状(BWB:Blended Wing Body)とすることができる。さらには燃料電池と組み合わせた複合サイクル化も可能である。

 シリーズ方式のハイブリッド航空機は2040年代からの社会実装が想定されており、従来技術から30%以上のエネルギー消費の低減が見込まれている。

プラグインハイブリッド航空機(PHEA)

 外部からも充電が可能なプラグインハイブリッド航空機(PHEA)は、ジェットエンジンを動かすことなく蓄電池の充電が可能であるため、小型電動航空機の実用化段階では有効となる。

ピュアエレクトリック航空機(PEA)

 図10のように蓄電池、モーター、推進ファンで構成され、蓄電池からの電力で推進ファンを回転させる方式である。静粛性に優れジェット燃料を使用しないため、運行中のCO2排出量はゼロである。現状の技術レベルで小型航空機のピュアエレクトリック化は可能である。
 しかし、中~大型旅客機のピュアエレクトリック化を実現するためには、出力密度の高い高性能蓄電池の開発が必須である。

図10 ピュアーエレクトリックエンジンの基本構成

 2006 年、ドイツの Lange Aviationが型式証明を取得した電動モーターグライダー (Antares 20E)は、有人飛行機としては世界で初めてリチウムイオン電池(LIB:Lithium-Ion Battery)を採用した。Antares 20E以後、世界各国で電動航空機の開発が加速され、航空機性能は著しく進歩した。

燃料電池航空機(FCEA)

 図11で示すようにモーター、推進ファン、燃料電池、水素燃料タンク、蓄電池により構成され、燃料電池からの電力で推進ファンを回転させる方式である。静粛性に優れ、ジェット燃料を使用しないため、運行中にCO2排出量はゼロであるが、軽量・コンパクトな水素燃料タンクが必要である。

 現状の技術レベルで小型航空機の燃料電池駆動の実現は可能で、BEAに比べて長距離飛行が可能である。しかし、中~大型の旅客機を実現するためには高性能燃料電池と水素燃料タンクの開発が必須であり、現状は補助動力装置の燃料電池への置き換え、次世代航空機に向けてジェットエンジンとのハイブリッド化が検討されている。

図11 燃料電池駆動機構の基本構成

水素タービン航空機(HTA:Hydrogen Turbine Aircraft)

 図12で示すように、水素タービン、推進ファン、水素燃料タンクにより構成され、水素タービンで推進ファンを回転させる方式である。ジェット燃料の代わりに水素燃料を使用するため、運行中にCO2排出量はゼロである。しかし、軽量・コンパクトな水素燃料タンクと水素燃焼器の開発が必要である。
 特に、水素燃料タンクの小型化が課題であり、エアバスなど航空機メーカーは、短~中距離向け旅客機の開発に的を絞っている。

図12 水素タービンエンジンの基本構成

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