電動航空機の開発動向(Ⅳ)

航空機

 2017年11月には、エアバス、ロールスロイス、シーメンスの3社が、シリーズ方式のハイブリッド電気推進システム「E-Fan X」の実証機開発でパートナーシップを締結したが、経済的な視点と技術的な成熟段階を見据えた結果、2020年4月に「E-Fan X」の事業化計画は破棄された

ハイブリッド航空機(3)

ロールスロイス

 英国ロールスロイスは、ヘリコプター搭載で成熟度の高いM250ガスタービンエンジンをベースに、航空機用ハイブリッド電気推進システムの開発を進め、ハイブリッド電気垂直離着陸機(eVTOL)、ハイブリッド航空機、ハイブリッドヘリコプターなどへの搭載を計画している。 

 M250ハイブリッドパワーパック(出力:500kW~1MW)は、M250ガスタービンエンジン、高エネルギー密度の蓄電池、発電機、電力変換器、電力管理/制御システムで構成され、2019年3月には①シリーズ、②パラレル、③ターボ・エレクトリックの3運転モードで地上試験が行われた。

シリーズ方式では、ガスタービンエンジンは蓄電池を充電するターボジェネレータとして動作し、補機用電力は蓄電池から供給
パラレル方式では、推力に必要な電力はガスタービンエンジンと蓄電池の組み合わせによって供給され、補機用電力は蓄電池から供給
ターボ・エレクトリック方式では、ガスタービンエンジンは純粋な発電機として作動し、推力と補機用電力の両方を供給し、蓄電池は補助的に使用

 地上試験では、離陸時、巡航時、着陸時、地上移動での使用のシミュレーションが含まれており、航続距離:約1600km、最大重量:2000kgの航空機を含むプラットフォームに対してシステムの適合性が確認された。2021年以降に航空機搭載と飛行試験が計画されている。

 M250ハイブリッドパワーパックは、地域航空を含む大型航空機用に開発されたAE 2100 2.5MWシステムを補完し、E-Fan Xデモンストレータープラットフォームでエアバスにより試験が行われている。

エアバス

 欧州エアバスは、これまでに数種類の電動航空機を開発している。2017年11月には、エアバス、ロールスロイス、シーメンスの3社が、シリーズ方式のハイブリッド電気推進システム「E-Fan X」の開発でパートナーシップを締結している。

図15 ハイブリッド電動推進システムを搭載した「E-Fan X」実証試験機

 100席級リージョナル機である短距離輸送用ターボファンエンジン搭載航空機「BAe 146 (British Aerospace 146)」について、4基のジェットエンジンのうち1基を電気推進システム(出力:2MW)に置き換えて飛行試験を実施している。

図16 ハイブリッド電気推進システムの「E-Fan X」実証機の構成

 「E-Fan X」には、ロールスロイス製AE3007型ターボファンエンジンのファンとナセルが使われ、電力は機体内に搭載したロールスロイス製AE2100タービン駆動の発電機で供給し、離陸/上昇時には蓄電池(LIB、出力:700kW)の電力で補助する。

 システムの完成度が確認され次第、さらに1基のターボファンエンジンを電気推進システムに置き換え、また、シリーズ方式で翼部にBLIファンを分散配置することで、空力性能向上を目指した「E-Fan X」の後継機の構想も公表し、2030年代の就航を目指していた。

 しかし、2020年4月、エアバスはハイブリッド電気航空機「E-Fan X」の事業化計画を破棄すると発表した。この中止は、経済的な視点と技術的な成熟段階を見据えた結果としている。

ハートエアロスペース

 2022年12月、スウェーデンHeart Aerospace(ハートエアロスペース)は、30人乗りの電動旅客機「ES-30」を発表した。
 航続距離は完全電動モードで最大200km、電気と燃料のハイブリッド運航で最大400km、25人以下なら800kmである。米国ユナイテッド航空やエア・カナダなどが大量導入する方針を示している。

図17 ハートエアロスペースのハイブリッド航空機「ES-30」

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