非軽水炉型SMRの開発動向について(Ⅹ)

原子力

 再生可能エネルギー水素は技術的に成熟しており、欧米中は大型水電解装置導入による低コスト化に舵を切っている。一方、高温ガス炉による水素製造はHTTR建設当初からの目標で、既に20年超を経過しているが経済性を含めた見通しは立っていない。今、どちらを選択すべきか?

日本における高温ガス炉のまとめ

 現在、高温ガス炉の商用発電所の実績では、中国が2023年12月に実証炉を商業運転に移行している。米国は2028年をめざして小型モジュール炉の実証炉の建設を進めている。日本の実験炉(HTTR)は、2010年に950 ℃で50日間の連続運転による熱供給以降に目立った成果は見られない。
JAEAがポーランドや英国と高温ガス炉の国際連携で、何とか面目を保っているのが現状である。

 実証炉の開発には数兆円規模の投資が必要である。日本は実験炉(HTTR)の研究成果を基に、英国とポーランドに協力して実証炉建設のノウハウを吸収し、2029年から実証炉の製作・建設を開始する計画で、2030年代後半の国内実証炉の運転開始をめざしている。

なぜ、高温ガス炉の開発が必要なのか?

 その理由は、現有の軽水炉と比べた場合に高温ガス炉の利点とされる2点にある。すなわち、①原子力プラントとしての安全性と②高温の熱供給である。

 原子力プラントとしての安全性は、常に追求しなければならない。現在、日本原子力研究開発機構(JAEA)が、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)の国際共同試験を高温工学試験研究炉(HTTR)を使って実施しており、原子炉出力100%運転中に全電源喪失に遭遇した場合の安全性が検証されている。

 事故時の安全性が確認されれば、次に長期の原子力プラントとしての信頼性評価が重要である。一方で、革新軽水炉や小型軽水炉(SMR)との経済性(建設単価、発電単価)比較により、高温ガス炉の優位性が明らかとなれば、高温ガス炉は次世代炉の本命となる。

 また、高温の熱供給は高温ガス炉の特長であり、多用途展開が期待されている。中でも水素社会を実現するためには、安価で大量のクリーン水素が不可欠であり、様々な検討が行われている。課題は高温ガス炉を利用した原子力水素の経済性である。対抗馬となる再生可能エネルギー水素との比較が重要となる。

 現在、中国や米国などで進められている高温ガス炉の炉心出口冷却材温度は750℃である。水素製造の経済性を高めるためには、950℃以上の超高温ガス炉(VHTR)の開発が有効で、まだまだ先は長い。

 2023年7月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、ニューヨークの国連本部で記者会見を開き、「地球沸騰化の時代が到来した」と発言した。地球温暖化を通り越して切羽詰まった状況にある。「将来ではなく、今できることは何であろうか?」を真剣に考える分岐点に到達している。
 再生可能エネルギー水素は技術的に成熟しており、欧米中は大型水電解装置導入による低コスト化に舵を切っている。一方、高温ガス炉による水素製造はHTTR建設当初からの目標で、既に20年超を経過しているが経済性を含めた見通しは立っていない。今、どちらを選択すべきかは明確である。

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