世界で進む風力発電の導入現状(Ⅱ)

再エネ

 海外では風力発電が太陽光発電よりも導入が進んでいる。しかし、日本では2023年度において太陽光発電が国内の年間発電電力量の9.8%に達しているのに対し、風力発電は2011年度と比べて約2倍に増加したが1.1%にとどまり、年間発電電力量では太陽光発電の1/10以下の低水準である。

 一方、日本の陸上風力ポテンシャルは出力ベースで1億4376万kWと、国内の全発電設備容量の70%に達する。また、洋上風力ポテンシャルは出力ベースで6億784万kWで、国内の全発電設備容量を超えて294%にも達する。ポテンシャルは高いのに、なぜ、風力発電の導入は進まないのか?

国内の風力発電の導入状況

 日本風力発電協会(JWPA)によると、2024年の新規導入量は全国23サイトで70.33万kW(170基)であった。一方、撤去したサイトを差し引いた正味導入量は15サイトで66.3万kW(120基)となり、結果として累積導入量は前年比13%増の584.04万kW(2720基)に達した。
 マスコミ報道などで大型原子力発電所5基分に相当するとの過大表現を見掛けるが、実際は風力発電の平均設備稼働率である20%を乗じた116.8万kWで原発1基分が実質発電電力量である。

 2011年3月の東日本大震災後、2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が始まった。2012年10月から総出力:1万kW以上の大型風力発電所が環境アセスメントの対象となり、風力発電の導入は低迷し、年平均成長率は10%に満たない状況が続いた。

 2021年は世界的に洋上風力発電の新規設置台数で記録的な年となり、国内でも風車(定格容量とローター径)の大型化も進み、2021年に新規設置された風力発電装置の内、平均定格容量は3500kW、平均ローター径140mを超えるものは新規設置の58%上を占めた。

 2022年12月、能代港洋上風力発電所」(20基、8.4万kW)、2023年1月、秋田港洋上風力発電所13基、5.46万kW)、2023年9月、入善にゅうぜん洋上風力発電所」(3基、0.75万kW)、2024年1月、石狩湾新港洋上風力発電所(14基、9.99万kW)と、着床式大型洋上風力発電所が相次いで稼働した。

図4 日本の風力発電設備の累積導入量の推移(2024年12月末時点)出典:日本風力発電協会

 大規模洋上風力発電設備の導入により、地域別では北海道地区での導入量が前年比約45.5万kW増加して全国1位となった。2位は青森県、3位は秋田県、4位は福島県、5位は鹿児島県などの順である。
 今後、政府が推進を指定した「促進区域」における洋上風力導入案件が、予定通り進むことが期待される。

図5 日本の風力発電設備の2024年度導入量の地域別シェア 出典:日本風力発電協会

 2024年の風力発電設備の累積導入量(584.04万kW)のメーカー別シェアは、1位が米国GEベルノバで126.25万kW(シェア:22%)、2位がデンマークのベスタスで111.86万kW(19%)、3位がスペインのシーメンスガメサで104.85万kW(18%)、4位がドイツのエネルコンで91.33万kW(16%)、5位が日立製作所で57.55万kW(10%)。
 ただし、日立製作所、三菱需工業、日本製鋼所と風車製造から撤退した国内メーカーの発電設備も合計で20%のシェアを有している。

 2024年の単年度の風力発電設備導入量(70.33万kW)のメーカー別シェアは、1位のシーメンス・ガメサが32.511万kW(46%)、2位は米国GEベルノバで24.019万kW(34%)、3位はベスタスで11.56万kW(17%)となり、3社で約97%である。4位がエネルコンで2.043万kW(3%)、5位が中国のゴールドウインドで0.197万kW(0.3%)。
 現時点で、日本での中国製風車メーカーのシェアは低く、太陽光発電のように中国メーカーに市場を席巻される状況には至っていない。

 しかし、風車の大型化で欧米をキャッチアップした中国の風車メーカーは、洋上風力の展開を始めた日本市場への本格参入をめざしている。今後、中国メーカーが維持管理や補修などのアフターサービスに積極的に介入してくると、市場を席巻される可能性は高い。

 2023年9月、富山県入善町にゅうぜんまち沖で着床式の「入善洋上風力発電所」(3基、合計出力:0.75万kW)が稼働した。モノパイル3本をはじめとする基礎部材を南通润邦海洋工程装备有限公司が製造し、適正容量として風車はMingYang(明陽智能)製の「MySE3.0-135」が採用された。
 建設資材の高騰が続くなか、中国メーカーは風力発電事業でも低コストを切り札に、日本市場への攻勢を強めている。

図6 日本導入の風力発電メーカー別の設備容量シェア 出典:日本風力発電協会

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