JOGMECプロジェクトには、北海道電力、東北電力、中国電力、関西電力、九州電力、電源開発が参画する。その他、JERA、中部電力、北陸電力にも動きがみられる。CCS事業への取り組みには電力会社間で温度差が顕著である。次に、北海道電力、東北電力、中国電力、関西電力、九州電力の現状を示す。
大手電力会社のCCS事業(1)
「北海道電力」はIHIと連携して推進
2024年10月、石油資源開発、出光興産、北海道電力はJOGMECの①苫小牧地域CCS事業に採択された。
2024年10月、IHIは,北海道電力より苫東厚真発電所におけるCO2の分離回収設備の検討業務を受託した。JOGMECプロジェクトの一環で、2023年度に実施した検討を進展させる取組みである。
北海道電力の石炭を燃料とする苫東厚真発電所2号機(出力:60万kW)あるいは4号機(70万kW)を対象に、CO2分離回収設備の大型化検討と基本計画、経済性評価、リスクと課題の抽出と対策の検討を行う。

「東北電力」は新潟CCUSハブ&クラスター拠点開発構想とリンク
2022年3月、新潟県が「新潟CCUSハブ&クラスター拠点開発構想」を公表した。新潟県の特性を活かし、CCUS基盤整備によりエネルギー・産業の脱炭素化を加速させ、地域における脱炭素電力・燃料の供給量の拡大を図り、カーボンリサイクル素材など新産業開発の誘発をめざす構想である。

2024年9月、石油資源開発(JAPEX)、三菱ガス化学(MGC)、東北電力、北越コーポレーションは、JOGMECの③東新潟地域CCS事業に採択された。「新潟CCUSハブ&クラスター拠点開発構想」とも良く合致する。
東北電力は、LNGコンバインドサイクル発電の東新潟発電所3号系列(出力:121万kW)あるいは4号系列(175万kW)を対象に、三菱重工業と連携してCO2分離回収設備の大型化検討と基本計画、経済性評価、 リスクと課題の抽出と対策の検討を行うと考えられる。
「中国電力」はBECCSの商用実装をめざす
「2050年カーボンニュートラル」に向け火力発電のトランジション計画を発表した。2030年までの非効率石炭火力の休廃止、石炭火力のバイオマス混焼と専焼化(IGFC+CCUS/カーボンリサイクル等)及びアンモニア専焼化、LNG火力の水素専焼化等に取組む。
2024年9月、中国電力、住友重機械工業、東芝エネルギーシステムズ、日揮グローバルは、中国電力グループの防府バイオマス発電所でのCO2分離回収・液化・貯蔵・払出設備を含めたCCS設備の設計検討(⑦マレーシア・サラワク沖CCS事業)に着手した。
防府バイオマス発電所(出力:11.2万kW)は、燃料の約45%が石炭、残り約55%が木質系バイオマスで、排出するCO2の80%に相当する約50万トン-CO2/年の回収をめざす。2025年2月末まで設計検討を進め、2030年頃までに「CCS付きバイオマス発電(BECCS)」の国内初となる大規模な商用実装をめざす。
中国電力は基本計画の策定と全体の取りまとめ、住友重機械工業は既存の発電設備の改造を含めたCO2分離回収プロセス全体の構成の設計検討、東芝ESSは分離回収設備の設計検討、日揮グローバルはCO2液化・貯蔵・払出設備等の設計検討を行う。

火力発電トランジションを始めた「関西電力」
原子力発電所の再稼働が順調に進む関西電力は、非効率石炭火力のフェードアウトも順調に進めており、脱炭素化にむけた火力発電トランジションの方向性を描き始めている。
2024年10月、NEDOプロジェクトで、石炭燃料の舞鶴火力発電所で分離回収されたCO2を液化してタンクに貯蔵し、CCUS普及をめざして主に苫小牧基地へCO2輸送実証実験への取組みを開始した。
また、LNG燃料の堺港火力発電所では、CCS事業の設計作業をJOGMECから受託(⑧マレーシア・マレー半島沖南部CCS事業)し、南港火力発電所で高効率な新設備を2029年度以降に稼働させ、2030年代後半にCCS設備導入または水素混焼を始める。
2024年11月、「ゼロカーボン火力」をめざす関西電力は、石油燃料の赤穂火力発電所1,2号機を2025年7月末に廃止し、跡地での水素燃料の活用やCCUS技術の導入などを発表した。また、LNG燃料の姫路第二火力発電所では、2025年に水素混焼実証を始め、2050年までの水素・アンモニアの専焼化をめざす。

大型石炭火力でCCSを進める「九州電力」
「カーボンニュートラルビジョン2050」のアクションプランで、非効率石炭火力の2030年までのフェードアウト、水素・アンモニアなど新燃料の活用、CO2回収技術の適用検討など、低炭素化への取組みを進める。
2024年10月、電源開発と九州電力は、それぞれが九州エリアに所有する火力発電所の排ガスからCO2を分離回収し、液化・貯蔵、液化CO2出荷に係る設計をJOGMECから受託(⑧マレーシア・マレー半島沖南部CCS事業)した。
対象は2社が所有する石炭火力発電所で、電源開発の松浦発電所1号機(出力:100万kW)あるいは2号機(100万kW)、九州電力の松浦発電所1号機(出力:70万kW)あるいは2号機(100万kW)である。三菱重工業と連携し、CO2分離回収設備の基本設計、経済性評価、リスクと課題の抽出と対策検討を行うと考えられる。

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