現行の大型軽水炉をベースとし、既存技術の延長線上にあるため成熟度が高い「革新軽水炉」は、発電事業者が廃炉跡地への早期導入に向けて選択する可能性が高いと考えられる。まずは、加圧水型軽水炉(PWR)をベースに開発を進めている三菱重工業の「SRZ-1200」を見てみよう。
三菱重工業
革新軽水炉「SRZ-1200」とは

SRZは、Supreme Safety(超安全)とSustainability(持続可能性)、Resilient(しなやかで強じんな)light water Reactor(軽水炉)、Zero Carbon(CO2排出ゼロ)で社会に貢献する究極型(Z)を表し、電気出力:1200MW(120万kW)級の基本設計を進めている。
【SRZ-1200の特徴】
■安全系設備の強化、自然災害への耐性、テロや不測事態へのセキュリティー強化:
建屋を岩盤に埋め込むなどの低重心化により耐震性を強化し、浸水を防ぐため建屋の水密化を高める。地震・津波だけでなく、大型航空機の衝突などテロに対しする防護対策も講じる。
■プラントの状態に応じて自動作動するパッシブ設備の採用:
高性能蓄圧タンクなどのパッシブ系システムと、炉心注水システムなどのアクティブ系システムとの組み合わせにより、安全対策を多重化する。
■溶融炉心対策としてコアキャッチャー設置と事故耐性燃料の開発:
万が一、炉心溶融が起きても、溶融デブリが漏れ出ないよう格納容器内で保持・冷却するため、格納容器の下部にコアキャッチャーを設置する。事故時の水素発生を抑制する事故耐性燃料(ATF)に、従来のZr合金燃料被覆管外面にCrコーティングを施した被覆管の実機適用をめざす。
■放出される放射線量を低減し、影響を発電所の敷地内に留めるシステム設計:
万が一の重大事故に備えて、格納容器の破損を防ぐ設備、セシウムやヨウ素を除去するフィルターベントシステム、ベントガスから放射性希ガスを吸着・分離・貯留するシステムなどを設置する。
■再生可能エネルギーの拡大に伴う電力系統の不安定対策:
1日単位の電力需要変化に合わせて出力を調整する日負荷追従運転や、秒~分単位の電力需要の変化に合わせてプラント出力を±5%ほどで調整する周波数制御運転を可能とする。また、水素製造への適応化検討も進める。


革新軽水炉「SRZ-1200」の開発動向
2022年9月、革新軽水炉「SRZ-1200」のプラント・コンセプトを公表した。加圧水型軽水炉(PWR)を採用している北海道電力・関西電力・四国電力・九州電力と協力し、福島第一原発事故の教訓を反映した新しい規制基準や、国際原子力機関(IAEA)の最新基準を踏まえて開発に取り組んでいる。
2024年12月~2026年1月、「SRZ-1200」を題材とした革新軽水炉の重大事対応の設計等について、電力・メーカーで構成される原子力エネルギー協議会(ATENA)と原子力規制庁の実務者間で技術的な意見交換を計7回実施した。
2025年7月、三菱重工業が原発建て替え(リプレース)に向けて、200社以上の部品メーカーと調達協議を進める。2030年代の実用化をめざす「革新軽水炉」の仕様概略をサプライヤー企業に示し、部品調達の可否を書面で確認する。今後のリプレースに備えて部品調達網を維持する狙いである。
国内には原子炉メーカーを頂点に原発関連機器供給メーカーが約400社あり、原子炉製造はほぼ国内でまかなえる状況にある。しかし、原発新設が滞る中で、2021年には川崎重工業が原発事業から撤退するなど減少傾向にあるのも事実で、調達が難しい場合は内製も含め代替策を検討する。
2025年9月、関西電力は、美浜原子力発電所(福井県美浜町)で実施する次世代原発の新設に向けた地質調査を11月に着手する。2029〜2030年に調査を終え、「革新軽水炉」の開発状況や原発新設への支援制度の整備状況なども踏まえて実際に新設するか判断する。
同原発では1、2号機の廃炉が決まり、3号機のみが稼働している。既存プラントがある周辺の南側エリアと、敷地外も含む北側エリアについてボーリング調査などの「概略調査」を実施し、新設候補地を絞りこみ、2027年度から坑道を掘って試料を観察する「詳細調査」を実施する。

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