国際原子力機関(IAEA)の定義による電気出力:30万kWe以下の小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)が、世界で注目を集めている。小型高速炉、小型軽水炉、小型高温ガス炉など様々な炉型がSMRと呼ばれているが、モジュール化により工場内で組み立て、ユニットとして輸送・設置する炉の総称である。
非軽水炉型の「新型炉」の開発動向
米国では電気出力:30万kWe以下の軽水炉を「SMR」と呼び、非軽水炉型の炉は出力に関係なく「新型炉」と定義して区別している。また、英国では出力:100万kW以下の小型軽水炉を「SMR」と称し、非軽水炉型の先進モジュール炉(AMR:Advanced Modular Reactor)とは区別している。
本稿では、米国方式の分類に従い小型軽水炉である「SMR」と、非軽水炉系の「新型炉」の開発動向を区別し、各国における非軽水炉系の「新型炉」の開発動向をレビューする。
米国(1)
2020年前後から、米国では原子炉開発に多くの予算が投じられ、少なくとも7基が2020年代末の運転開始をめざして開発を進めている。実績のある小軽水炉(SMR)から各種の新型炉に至るまで、いずれも大手原子炉メーカーやスタートアップによる民間企業中心の開発で政府支援を受けている。

2020年5月、米国エネルギー省(DOE)は新型炉実証プログラム(ARDP)を開始し、公募で選ばれた新型炉開発プロジェクトに対して資金支援が行われている。
具体的には①先進原子炉実証(運転開始目標7年以内、民間企業負担率は50%以上)、②将来実証リスク削減(運転開始目標10~14年以内、民間企業の負担率は20%以上)、③先進炉概念2020(ARC-20、運転開始目標2030年代半ば)の3カテゴリーがあり、10企業が参画している。

その他、航空宇宙局(NASA)と エネルギー省(DOE)は共同で「宇宙探査用核熱推進技術の開発」、国防総省(DOD)は遠隔地で電力を得る技術開発「プロジェクト Pele (ペレ)」を立ち上げ、企業支援を行っている。
2025年5月、トランプ大統領は、米国の原子力産業の再活性化をめざす4つの大統領令に署名した。①原子力規制委員会(NRC)の改革、②エネルギー省(DOE)における原子炉試験の改革、③原子力基盤の活性化、④国家安全保障のための先進原子炉の導入である。
具体的な目標として、「2050年までに原子力の発電能力を現行の4倍」、「目標達成のため行政機関による審査プロセスの迅速化」、「核燃料の自給化(脱ロシアと核燃料サイクルの強化)」、「既存炉の発電能力向上、SMRを中心に先進原子炉で世界を先導、軍事基地へのSMRの設置推進」を掲げている。
2026年4月、米空軍省(DAF)は、軍事基地向けにマイクロ炉の導入を進める「Advanced Nuclear Power for Installations:ANPI」プログラムで、ラディアント(Radiant Industries)、ウェスチングハウス(WE)、アンタレス・ニュークリア(Antares Nuclear)の3社を選定した。2030年までに少なくとも1サイトでの稼働をめざす。
米国防総省(DOD)傘下の国防イノベーション・ユニット(Defense Innovation Unit:DIU)と共同で推進される。DIUは民間技術の軍事転用を進める国防省組織で、スタートアップ企業との連携などを担い外部電源への依存低減を図る。米軍基地の多くは民間電力網に依存し、有事や災害時の電力確保が課題とされている。
X-エナジー(X-energy)の小型高温ガス炉「Xe-100」
米国企業による「新型炉」開発の代表は、高温ガス炉に関するX-エナジーの開発である。ペブルベッド型小型高温ガス炉「Xe-100」は、熱出力:20万kW、電気出力:約8万kWeである。4基設置した発電プラント(総出力:32万kWe)を標準とし、高温熱供給(炉心出口温度:750℃)で海水淡水化や水素製造をめざす。
2017年3月、運転寿命60年の「Xe-100」の概念設計を開始。一方、2018年11月、専用の4重被覆の燃料粒子「TRISO:TRi-structural ISOtropic」の製造工場の予備設計を進めるため、濃縮ウラン企業のセントラス・エナジー(旧USEC)と新たなサービス契約を締結した。
2021年4月、米国エネルギー省が、「Xe-100」(出力:7.5万kWe)の基本設計の完了を公表。ワシントン州の公益電気事業社エナジー・ノースウエスト、グラントPUDと、初号機の設置に向けて覚書を締結した。
国外では、2019年11月にヨルダン原子力委員会と、2022年7月にカナダのオンタリオ州政府と、「Xe-100」の利用可能性検討の協力合意書を交わした。
2022年8月、米国ダウ(Dow)はテキサス州メキシコ湾岸シードリフト市の施設に、「Xe-100」を4基設置する原子力発電所(総出力:32万kWe)の建設で基本合意した。2030年頃までに「Xe-100」実証炉を完成させる計画で、X-エナジーへの出資も公表した。
2023年7月、エナジー・ノースウエストは、ワシントン州内で最大12基の「Xe-100」を建設するための共同開発合意書(JDA)に調印した。同社コロンビア発電所(BWR、121.1万kW)の隣接区域での建設を計画し、2030年までに1号機の稼働をめざす。

ところで、「Xe-100」に装荷するのはTRISO燃料粒子である。ウラン235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン(HALEU燃料)を、黒鉛やセラミックスで4重被覆した粒子型燃料である。
2022年4月、商業規模の「TRISO-X燃料製造施設(TF3)」をテネシー州オークリッジの「ホライズンセンター産業パーク」内に建設すると発表。特殊な核物質(カテゴリーⅡ)の取り扱いに関する許可申請を原子力規制委員会(NRC)に提出し、早ければ2025年にも操業可能となる。
TRISO燃料粒子は2028年の運転開始を見込む「Xe-100」以外の、他社開発中の新型炉でも使用する。
2022年10月、「TRISO-X(TF3)」を建設するため、X-エナジー子会社のTRISO-Xがテネシー州オークリッジで起工式を実施。TF3の初期段階の生産量は「Xe-100」12基分に相当する8トンU/年(ウラン換算)で、2030年代初頭までに16トンU/年の生産量をめざす。

2025年1月、韓国のゼネコンDLE&CはXーエナジーに2000万ドルを投資した。両社は「Xe-100」のプラント運営とメンテナンス技術を共同で開発中である。
2026年3月、IHIはXーエナジーと、高温ガス炉分野の協業可能性を検討・推進する非拘束の覚書(MOU)を締結した。高温ガス炉「Xe-100」等のグローバル展開を見据え、原子炉系機器の設計、エンジニアリング、製造、サプライチェーン構築など、幅広く協業の可能性を検討する。
MOU対象は、原子炉圧力容器・原子炉内構造物・蒸気発生器の圧力容器と内部構造物・クロスベッセルなど。米国では商業規模での確保が難しい高度な原子力製造能力をIHIは有していると評価している。
2026年3月、米国電力会社タレン・エナジーとペンシルベニア州を中心に系統運営機関PJM管内で、出力合計で100万kWe級の「Xe-100」導入を評価する基本合意書を締結した。4基構成の「Xe-100」(出力:8万kWe×4)を3か所以上での導入をめざす。
現在、X-エナジーは、米国ダウ(Dow)、Amazon、英国セントリカ(Centrica)と導入や投資、電力購入で合意し、合計1100万kWe超の発電プラントを計画中としている。

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