国内では、福島第一原発事故を教訓として安全性を高めた大型商用炉「革新軽水炉」の開発を進めたが、海外では「小型モジュール炉」に注目が集まる。原子炉をモジュール化して工場内で組み立て、ユニットとして輸送・設置することで、安全性と経済性を両立させ、多目的用途をめざしている。
しかし、多くのSMRは設計段階~実証段階にあり、技術的には未成熟なレベルにある。
小型モジュール炉(SMR)とは
海外を中心に進められているSMRの開発
国際原子力機関(IAEA)の定義による電気出力:30万kWe以下の小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)が、世界で注目を集めている。実績のある軽水炉(PWR、BWR)を小型化したSMRは主流となっており、冷却材出口温度が最高330℃程度である。
一方、高速炉(冷却材出口温度:約550℃)、高温ガス炉(最高950℃)、溶融塩炉(最高750℃)などの炉型でも小型モジュール炉の開発が進められている。そのためSMRの定義は、モジュール化により工場内で組み立て、ユニットとして輸送・設置する小型炉の総称と考えられる。

小型モジュール炉(SMR)の特長
■安全性:SMRは小型・低出力のため、事故時に自然冷却による炉の冷温停止が可能で、構造の簡素化や防災計画エリアの縮小を実現できる。また、燃料交換不要あるいは交換頻度を低減できるため、核セキュリティ・核不拡散の面でも優れており、初期投資を抑えることができる。
■モジュール化:工場でモジュールを製造して組み立て、ユニットとして運搬し、現地で設置することができる。そのため、品質の維持・向上、工期の短縮、建設費の低減ができる。
■用途:寒冷地や離島などでの分散電源、原子炉モジュールの台数増による大規模集中発電化、あるいはクリーン水素製造、熱供給、医療用など柔軟な使い方ができる。
国際原子力機関(IAEA)は、「SMRは世界で80以上の開発が進められている」と報告している。既に、ロシア極東地域チュクチ自治管区内ペベクの小型PWRを搭載した海上浮揚型原子力発電所と、中国山東省栄成の石島湾の高温ガス炉実用炉「HTR-PM」は、既に発電運転を開始している。
一方、欧米では1979年の米国スリーマイル島原発事故以降、原子力発電所の新規建設が途絶え、2011年の福島第一原発事故により、日本も原子力発電所の新規建設が中断された。現在、世界の原子力市場は中国とロシアが主導しており、米国、カナダ、英国などが「SMR」での巻き返しを図っている。
2015年、国際原子力機関(IAEA)は規制機関協力の場として、「SMR規制者フォーラム」を設置、参加国は米国、英国、カナダ、フランス、韓国、ロシア、中国、フィンランド、サウジアラビア。
2021年5月、国際エネルギー機関(IEA)は、2050年の脱炭素を想定した「ネット・ゼロ・シナリオ」を公表し、達成に向け原子力発電の貢献を重視している。先進国では「SMR」開発に重点が置かれ、2021~2035年にかけて約450万kW/年で拡大する予測を発表した。
2023年、国際規制者会議(INRA)は、SMR審査に各国規制委員会の強力を強化する方針を表明。参加国はカナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、スペイン、スイス、英国、米国。
2024年、米国NRC、カナダCNSC、英国ONRが、SMRの技術レビュー手法の開発で協力の覚書を締結。
米国では電気出力:30万kW以下の軽水炉を「SMR」と呼び、非軽水炉型の炉は出力に関係なく「新型炉」と定義し区別している。英国では出力:100万kW以下の小型軽水炉を「SMR」と称し、非軽水炉型の先進モジュール炉(AMR:Advanced Modular Reactor)とは区別している。
ここでは、米国方式の分類に従い小型軽水炉である「SMR」と、非軽水炉系の「新型炉」の開発動向を区別し、小型軽水炉「SMR」の開発動向についてレビューする。
また、小型モジュール炉の中でも、熱出力:2万kW以下、または電気出力:1万kW以下の超小型の原子炉は「マイクロ炉」と呼ばれる。その多くはトラックや輸送コンテナで運べる規模で、ディーゼル発電機に代る小型分散型電源として開発が進められている。
2026年3月、欧州委員会(EC)は、SMRの開発・導入を加速する初の戦略文書「欧州におけるSMRの開発および導入に向けた戦略を発表した。SMRを欧州の主要な産業開発プロジェクトの一つと位置づけ、2030年代初頭までに欧州で初のSMRの運転開始をめざす。
SMR導入後押しのため資金支援の枠組みを示し、製造拠点や関連産業を集積するSMRバレー形成、EU加盟国の協力する枠組みのSMR連合を設立する。原子力実証プログラムによると、EUでのSMR設備容量は、2050年までに1700万~5300万kWに達する可能性があるとの見通しを示している。
SMRの抱える問題点
従来の大型軽水炉(BWR、PWR)は、開発初期の電気出力:30~50万kWクラスから、現在の100~140万kWクラスへと出力規模を上げてきた。kWあたりの発電単価を下げて、経済性を高めるためである。
一方、小型モジュール炉(SMR)は電気出力:30万kW以下と小型化するために、kWあたりの発電単価は高くなる。確かに1基あたりの建設コストは安くなるが、同一発電量で比較するとSMRは複数炉の設置が必要となり、経済性に優れているとは一概にいえない。
SMRのモジュール化による量産効果では、低コスト化の実現には同一工場における大量生産が不可欠となる。しかし、現状ではメーカー乱立の状況にあり、注目は集めているが、量産効果が表れるほどの十分な受注がメーカーにあるか不明である。
SMRの安全性は、小型化によるリスク低減のみが強調されている。しかし、多くのSMRは設計段階~実証段階にあり、安全性を含めて技術的には未成熟なレベルにある。
特に、地震や火山などの災害大国である日本では、SMRの規制が整備されていない現状では安全審査に長期間を要する可能性が高く、発電事業者が選択するのか見通せない。
一方、海外では寒冷地や離島などでの分散電源としての利用が想定されているが、自然災害やテロなどのリスクも分散されるため核物質防護(セキュリティ)の負荷が高まる。
現時点での小型モジュール炉(SMR)の課題
■経済性:従来原発に比べて、電気出力:30万kW以下と小型化であるためkWあたりの発電単価は高くなる。1基あたりの建設コストは安いが、経済性に優れているとは一概にいえない。
■モジュール化の可能性:低コスト化の実現には同一工場における多量生産が不可欠。注目は集めているが、量産効果が表れるほどの十分な受注がメーカーに来るかは不明である。
■安全性:多くのSMRは設計段階~実証段階にあり、安全性を含めて技術的には未成熟な段階にある。寒冷地や離島などの分散電源が想定されているが、自然災害やテロ対策などのリスクが高まり、核物質防護(セキュリティ)の負荷が高まる。

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