間違った小型モジュール炉への期待(Ⅶ)

原子力

 ロシアは2019年12月、小型PWR「KLT-40S」(電気出力:3.5万kW)2基を搭載した世界初の海上浮揚式原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ号」、2020年10月には一体型PWR「RITM-200」(電気出力:5.5万kW)2基を搭載した最新式原子力砕氷船「アルクティカ」を開発した。
 SMRで欧米に先行するロシアは、アジア・アフリカ・中南米などグローバルサウス(新興・途上国)への原発輸出を加速し、2027年1月から始まる欧州連合のロシア産LNGの輸入全面禁止に備える。  

ロスアトムの「KLT-40S」と「RITM-200N」

SMRの開発状況

 国営原子力総合企業のROSATOM(ロスアトム)は、世界初の海上浮揚式原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ号」を開発。小型PWR「KLT-40S」(最大熱出力:19万kW、電気出力:3.5万kW)2基の海上浮揚式原子力ユニット(NFPU)を搭載し、2019年12月、極東チュクチ自治区管内ペベクでの送電を開始した。
 2020年5月、営業運転を開始してロシア原子力発電所に正式承認された。世界初となる小型モジュール炉(SMR)発電所である。

 また、ロスアトム傘下のOKBMアフリカントフが「KLT-40S」をベースに開発した「RITM-200」(一体型PWR、電気出力:5万kW)2基で構成されるNFPUを、アトムエネルゴマシが4隻に搭載する計画を発表する。2022年8月、船体部分の起工式が中国の造船所で行われた。
 船体は長さ140m×幅30m、総重量:2万トン程度となる見通しで、1隻目はチュクチ自治区のバイムスキー銅鉱山に近いナグリョウィニン岬に係留され、運転開始は2026年末頃としている。

 一方、「RITM-200」は、2020年10月就航の最新式原子力砕氷船「アルクティカ」に搭載された。また、2020年12月には陸上設置版である「RITM-200N」(電気出力:5.5万kW)が、極東サハ共和国北部ウスチ・ヤンスク地区のウスチ・クイガ村で、2028年までに完成する計画が発表された。
周辺の鉱床開発などの産業企業に電力供給を計画している。

 ロシアの最新SMR「RITM-200N」は陸上用に改良したもので、熱出力:19万kW、電気出力:5.5万kW、設計運転年数:60年、燃料交換サイクル:5年とされている。
 「RITM-200」は2012年以降、ロシアの原子力砕氷船「アルクティカ」、「シベリア」、「ウラル」、「ヤクーチア」、「チュコトカ」向けに10基が製造され、最初の3隻はすでに北極圏西部で就航中である。

図1 世界初の海上浮揚式原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ号」 
出典: Glavgosexpertiza

進むSMRの海外輸出

 2019年9月、原子炉輸出を担うロスアトム・オーバーシーズは、ロスアトムとサハ共和国政府が、原子力砕氷船に採用されているSMR「RITM-200」の建設で協力することで合意。2019年末までに候補地の最終決定を行い、6年以内に生産体制を確立して2027年までの運開を予定している。

 2025年3月、ミャンマーのMyo Thein Kyaw科学技術大臣とロシア国営原子力企業ロスアトムのAlexey Likhachev総裁は、SMR建設や原子力・放射線安全分野での協力の政府間協定に署名。建設を予定しているのは「RITM-200」2基で、将来的には総出力:33万kWまで拡大する可能性を示している。

 2025年10月、ロスアトムとウズベキスタン原子力庁は、ジザク州において大型炉「VVER-1000」(出力:120万kW)2基とSMR「RITM-200N」(5.5万kW)2基を併設する「統合型原子力発電所」の建設で合意した。2035年までに150億kWh/年以上の発電を開始する計画である。

 2025年11月、SMR実用化で欧米に先行するロシアが、SMR「RITM-200」の新興国への売り込みを進めていると報道される。東南アジアでの導入を呼びかけたほか、アジア、アフリカ、中南米などグローバルサウス(新興・途上国)を囲い込む狙いである。

 2026年1月、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領とロシア国営原子力企業ロスアトムのリハチョフ総裁は、タシケントで同国ジザク州の「統合型原子力発電所」の協議を行い、2025年10月にSMR初号機建屋基礎の掘削工事に着手し、2026年春にも基礎コンクリート打設を開始する予定であることが判明した。

 ロシアのウクライナ侵攻への対抗措置として、2027年1月から欧州連合はロシア産LNGの輸入全面禁止を開始する。SMRの実用化で欧米に先行するロシアは、アジア・アフリカ・中南米などグローバルサウス(新興・途上国)へのSMR輸出を加速し、経済制裁に備える狙いである。

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