中国では、中国広核集団有限公司(CGN)の開発した小型原子炉「ACPR50S」(PWR、熱出力:20万kW)を搭載する海上浮揚式原子力発電所と、中国核工業集団公司(CNNC)が海南省昌江原子力発電所内のPWR型SMR「玲龍一号(ACP100)」(電気出力:12.5万kW)の開発が進められている。
現在開発中の「玲龍一号(ACP100)」は、2026年上半期の商用運転をめざしている。
中国核工業集団公司(CNNC)の「玲瓏一号(ACP100)」
SMRの開発状況
中国広核集団有限公司(CGN)の開発した小型原子炉「ACPR50S」(PWR、熱出力:20万kW)を搭載する海上浮揚式原子力発電所の開発が進められている。
建造は中国船舶重工集団(CSIC)で進められており、完成後は南シナ海の島々や石油・ガス掘削リグへの電力供給を目的として、20基程度建設する予定で、開発には中国海洋石油(CNOOC)や中国核工業集団(CNNC)が参加している。
2016年11月、海上浮揚式原子力発電所に搭載する「ACPR50S」を開発するため、実証炉(6万kW)の原子炉容器購入契約を東方電気と締結したと発表。
2020年の発電開始をめざしていたが、その後の情報公開はない。中国の海上浮揚式原子炉の研究は空母計画にも沿う可能性が高く、秘匿されている可能性がある。
一方、中国核工業集団公司(CNNC)は海南省の昌江原子力発電所内で、国産のPWR型SMR「玲龍一号(ACP100)」(電気出力:12.5万kW)の開発を進めている。
ところで、既に、昌江原子力発電所では「CNP600」1,2号機(PWR、各電気出力:65万kW)が運転中である。「HPR1000(華龍一号)」3,4号機(PWR、各120万kW)が、2021年3月と12月に着工し、両機とも2026年末までに営業運転を開始する。
2021年7月、中国核工業集団公司(CNNC)は海南省の昌江原子力発電所で、SMR実証炉「玲瓏一号(ACP100)」(12.5万kW)の建設開始を発表した。
「ACP100」の開発は2010年に開始され、2016年に国際原子力機関(IAEA)の安全審査を通過し、発電のみならず多目的用途(暖房、蒸気生産、海水淡水化)向けに設計されている。
2024年2月、CNNCは、海南省の昌江原子力発電所で建設中のSMR「ACP100」(12.5万kW)の格納容器の外側ドーム屋根の設置を発表した。
ACP100の所有者・運転者はCNNC傘下の中国核能電力股份(CNNP)で、炉設計は中国核動力研究設計院(NPIC)、建設は中国核電工程(CNPE)等が担当。炉容器は上海電気集団(SEC)、蒸気発生器はCNNC傘下企業、他炉内構造物は中国東方電気集団(DEC)が供給している。
2026年2月、SMR「ACP100」(12.5万kW)は、2025年後半に低温機能試験と非原子力蒸気起動を完了した。海南省の昌江原子力発電所で、2026年上半期の商用運転をめざしている。
「ACP100」は、内部冷却システムを備えた完全統合モジュールを採用し、事故時に電源と運転操作なしに炉心熱を重力と自然循環で除去し、長期冷却を実現する。また、モジュラー設計により工場建設とサイト設置を可能とし、短期間建設と高い品質を実現する。

SMRの輸出状況
「ACP100」が完成すると、世界初の陸上型SMRとなる。発電の他、熱供給、蒸気生産、海水淡水化の用途をめざし、安全性の高い分散型電源として、町や工業地域の隣接設置を可能としている。
PWR型SMR「ACP100」の主要な特性は、熱出力:38.5万kW、電気出力:12.5万kW、設計寿命:60年、燃料交換間隔:2年、建設期間:58か月としている。
中国核工業集団公司(CNNC)は、中国の「一帯一路構想」の下、インドネシア、タイ、マレーシア、ヨルダンなどへのSMR輸出をめざし、燃料とメンテナンスを通じて永続的な影響力を与える狙いである。
2025年6月、インドネシアはSMRのベンダー候補を中国とロシアに絞り込み、大型モジュール炉(LMR)に焦点を当てたカナダと韓国との予備交渉を取り下げた。2030年~2032年までに50万kWの原子炉建設をめざしており、最終決定は資金調達モデルとエネルギー外交における地政学的な問題が影響する。
2025年8月、マレーシアのエネルギー移行・水資源変革省(PETRA)のファディラ・ユソフ大臣(兼副首相)は、ベースロード電源としてSMRを含む原子力発電の実行可能性調査を、マレーシア半島とサバ州に焦点をあて進めていると表明した。
マレーシアを含むASEAN諸国へは、中国だけでなく日米連合もSMR輸出構想を働きかけており、技術、コスト、安全基準を巡る競争が激化している。
2025年8月、マニラ電力会社(Meralco)は、米国貿易開発庁(USTDA)から約270万ドルの助成金を受け、フィリピンにおけるSMRの採用に関する実現可能性調査を実施すると発表した。
一方、2019年10月、ロスアトム・オーバーシーズとフィリピンのエネルギー省はSMRの実現可能性調査で協力するための覚書(MOI)を締結。ロシアが海上浮揚式原子力発電所を提案したためである。
2025年9月、タイ発電公団(EGAT)は2037年までに総出力60万kWの商業運転をめざし、SMRメーカーの絞り込みを進めている。SMRは建設にかかる時間やコストが抑えられ、立地は中規模の送電網が多く大掛かりな増強工事を必要としない東北部と南部が有力視されている。
ただし、2025年6月、国営タイ電力公社(EGAT)は韓国水力・原子力(KHNP)とSMR分野における協力覚書(MOU)を締結している。
PWR型SMR「玲瓏一号(ACP100)」(12.5万kW)は、2026年上半期の商用運転をめざしている。順調に稼働すれば、GEベルノバ日立ニュークリアエナジーのBWR型SMR「BWRX-300」(30万kW)に先んじる。「BWRX-300」の商用運転は、早くても2030年初頭とされている。
最近の原発建設は中国とロシアがけん引し、コスト低減と工期短縮が進み、サプライチェーンも充実し、SMR開発でも4~5年程度先行している。当然のことながら、今後、中国が提示する低コストと短納期が受注競争には大きな影響を与える。
一方、米国は電力需要の急増で最大10基の大型原発の建設計画を進め、費用は日本が拠出する5500億ドル(約86兆円)の対米投資で賄われる可能性が報じられている。

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