非軽水炉型の「新型炉」に関して、ロシアの高速増殖炉と中国の高温ガス炉は既に商業運転に入っているため、”一日の長あり”と誰もが認めるところである。かって開発を中断した米欧各国は政府支援を充実させて、「新型炉」のキャッチアップ+新規技術の導入を加速させているのが現状である。
非軽水炉型の「新型炉」の課題
開発を諸事情により一度中断することで人材・設備・資金に多大な損失をもたらす。特に、エネルギーのような社会基盤を支えるプロジェクトの中断・撤退に関しては、長期展望に立て慎重な判断が必要である。現在、米欧各国で進められている非軽水炉型の新型炉の主な開発状況を次にまとめる。
■米スタートアップのX-エナジーは、小型高温ガス炉「Xe-100」と専用のTRISO燃料粒子の開発を進めている。2026年4月にNASDAQへ上場し、AI電力需要を見込むアマゾンなど巨大テック企業から巨額の出資を受け、2039年までに最大5GWの電力調達の契約を結び急成長している。
■米ウルトラ・セーフ・ニュークリア(USNC)は、収益性の低さによる資金繰り悪化と設立者兼最大の支援者の死去が重なり、2025年1月にナノ・ニュークリア・エナジー(NNE)に買収される。小型高温ガス炉の「KURONOS MMR」、マイクロ高温ガス炉「LOKI MMR」の商品化と、TRISO燃料粒子とそのセラミック・マイクロカプセル(FCM)燃料の開発は引き継がれている。
■米原子力・防衛エンジニアリング企業のBWXテクノロジーズ(BWXT)も、トラックなどで輸送が可能な可搬式小型高温ガス炉「BANR(BWXT Advanced Nuclear Reactor)いる。発を進めている。
また、米国最大のウラン埋蔵量を有するワイオミング州エネルギー公社と子会社BWXTアドバンスド・テクノロジーズは、TRISO燃料製造施設建設の立地評価を進めている。
■GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)が開発した小型高速炉「PRISM」をベースとした「Natrium」に、テラパワーが開発した溶融塩蓄熱システムを組み合わせ新型炉の開発を進めている。2026年4月にはワイオミング州ケンメラーで小型高速炉「Natrium」の原子炉部の建設が開始された。
■米スタートアップのオクロが開発するヒートパイプ冷却方式のナトリウム冷却高速炉「Aurora」は、HALEU燃料を使い、燃料交換なしで20年間の熱電併給を行う。また、DOE支援により電解精製技術で放射性廃棄物を転換して先進的原子炉燃料を製造し、使用済燃料のリサイクルを進める。
■米スタートアップのケイロスパワーが開発するフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR」は、冷却材に低圧のフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した溶融塩を使用する。燃料には、高温ガス炉で使われるTRISO燃料粒子を使用し、運転中の供給を可能とする。
■米ジェネラルアトミックス・エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)が開発中のヘリウム冷却小型高速炉「FMR」は、ガスタービン(直接ヘリウム・ブレイトンサイクル)を採用して電気への変換効率を約33%→42%に高め、事故耐性に優れた炭化ケイ素複合被覆管「SiGA」を使う。
■英スタートアップのコアパワーは米テラパワーと溶融塩高速炉の開発で協業している。尾道造船や今治造船など10社以上の日本企業が合計約8000万ドル(約120億円)を出資し、「溶融塩高速炉(MCFR)」を用いた浮体式原発や原子力船の開発を進める。
■仏スタートアップのニュークレオは、フランス中部で鉛冷却高速炉の原型炉「LFR-AS-30」(出力:3万kWe級)の建設を計画し、2032年までの稼働をめざしている。燃料となるMOX燃料製造施設も、フランス国内での整備を想定している。
■スウェーデン・スタートアップのブリカラは、ストックホルムの北約200kmのノルスンデットに、同国初となる鉛冷却高速炉(LFR)の商用発電所を計画しており、モジュール炉の鉛冷却高速炉「SEALER(5.5万kWe)」を6基設置する。米国オクロとも協力関係にある。
以上のように、「新型炉」開発に参画する企業は古参の原子炉メーカーから、新規アイデアを有するスタートアップ企業まで様々であるが、スタートアップが数多く含まれていることは明らかである。
しかしながら、スタートアップは自社で製品を製造する工場を持たない「ファブレス企業」である。そのため資金獲得と共に、アイデアを実現するためのサプライチェーン構築に奔走することになる。
今後、資金獲得に関連してスタートアップ企業の中では、資本効率の向上を求める圧力や市場再編により統廃合と大手企業への吸収合併が進む可能性が高い。一方で、台湾のTSMCのように、自社で設計を行わず製造に特化する「専業ファウンドリ」の立ち位置を韓国が強力に進めている。
2011年3月11日の東日本大震災による巨大津波で生じた福島第一原発事故を引きずる日本の影は薄い。
一方、「新型炉」のサプライチェーン構築に関して、核燃料の確保が最重要課題である。現在は主に米国(X-エナジー)やフランス(フラマトム)が高温ガス炉開発に合わせて、商業規模のTRISO燃料製造施設の建設を進めている。高速炉用のMOX燃料の製造は、主に米国(オクロ)やフランス(オラノ)が主導している。
非軽水炉型の「新型炉」のまとめ
現在、フィンランド、ポーランド、ルーマニア、チェコ、エストニア、ウクライナなど北・東欧諸国、ヨルダン、サウジアラビア、トルコなど中東諸国、インドネシアなど、世界各国で「新型炉」を含むSMR導入が検討されている。詳細は国際原子力機関(IAEA)「Advances in Small Modular Reactor Technology Developments」を参照。
広大な国土を有するロシアと中国は、各種産業の基本となるエネルギー計画に力点を置いて国土開発を進めており、原子力をその中核技術と位置付けてきた。一方、1990年代から日本を含む西欧諸国は、エネルギー資源を安価な資源国からの輸入に頼る政策に舵を切り、原子炉開発の停滞期であった。
現在、世界の核燃料を含めた原子力市場は、ロシアと中国が主導権を握っているといっても過言ではない。危機感を覚えた米国・カナダ・英国などは、2010年代後半から原子力市場での主導権を取り戻すべく多くのプロジェクトを発足させてきた。
福島第一原発事故から10年を経て、日本は原子力に再び舵を切り、2022年7月に経済産業省は小型軽水炉を2030年代から国内で実証炉の製造・建設を始め、2040年代に運転を開始する目標を掲げる。
新型炉(高速炉、高温ガス炉、核融合)についても、実証炉の製造・建設・運転のおおよその目標を示した。加えて、米国・英国との協調路線を打ち出している。
日本のエネルギー自給率は2020年度に11.3%で、他のOECD(経済協力開発機構)諸国と比べても明らかに低水準である。東日本大震災前の2010年度は20.2%であったが、相次ぐ原発停止により大幅に下落した。現在、脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーと安全な原発増設は不可欠と考えられている。

出典:IEA「World Energy Balances 2021」の2020年推計値、
日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2020年度確報値。※表内の順位はOECD38カ国中の順位図
しかし、福島第一原発事故を起点として、日本は原子力発電所の建設を10年以上にわたり中断してきた。そのため国内原子力メーカーと、それを支えるサプライチェーンは大きく衰退している。すなわち、人材・設備・資金に多大な損失が生じた結果、2000年代後半に原発の海外輸出をめざした姿は見る影もない。
今後、国内原子力メーカーの復活に向けては、政府により継続的な支援と共にメーカー自身の地道な努力が不可欠である。加えて、福島第一原発事故以降の学生の減少や、施設の老朽化で大学での原子力教育は大きく棄損されており、人材教育から立て直す必要がある。
次世代に向けた日本の「新型炉」開発は、地政学的なリスクを回避し、核燃料の安定調達を継続するために米国・英国・フランスとの協調路線は不可欠と考えられる。
第4世代原子力システム国際フォーラムで、日本は5システム(ガス冷却高速炉、鉛冷却高速炉、ナトリウム冷却高速炉、超臨界水冷却炉、超高温ガス炉)への参加を表明しているが、現在の国力に見合った研究費の絞り込みが必要である。かっての全方位戦略を進めるのではなく、まずは「選択と集中」から着実に力を蓄える長期戦略が必要な時期である。少し過去を振り返ってみよう。

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