2021年10月に国際航空運送協会(IATA)、2022年10月に国際民間航空機関(ICAO)で、「2050年カーボンニュートラル達成」の国際的な目標が合意された。日本も国際航空分野において2050年までにカーボンニュートラルを達成することを公式に宣言しており、航空分野におけるCO2削減の動きが活発化している。
この目標達成には、「SAFの活用」、「新技術の導入」、「運航方式の改善」を組み合わせる必要が示唆されているが、鍵を握る航空機ジェットエンジンの開発現状について、構造材料の切り口から観てみよう。
航空機ジェットエンジンと環境問題
2020年10月、日本は脱炭素社会の実現に向け「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。これを実現するために、2021年4月、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減、さらに50%削減をめざして挑戦を続けることを表明した。
また、2025年2月には、「地球温暖化対策計画」で2035年度、2040年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で、それぞれ60%、73%削減をめざすとした。
一方、2021年10月に国際航空運送協会(IATA)、2022年10月に国際民間航空機関(ICAO)で、「2050年カーボンニュートラル達成」の国際的な目標が合意された。日本も国際航空分野において2050年までにカーボンニュートラルを達成することを公式に宣言しており、航空分野におけるCO2削減の動きが活発化している。
そのため、航空機運航全般に係るCO2排出量削減の取組みを、これまで以上に加速する目的で、2021年3月に国土交通省航空局は「航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会」を立ち上げた。
グリーンリカバリー(環境に配慮した危機からの回復)の観点から、航空関連事業者の国際競争力強化も視野に入れ、日本の運航分野の取組みについて検討が行われた。その結果、航空分野におけるCO2排出量削減のアプローチのうち、特に運航に関わる次の3分野について具体策が検討されている。
(1)電動航空機と水素ジェットエンジンの開発、
ならびに機体やエンジンの軽量化・高効率化に資する複合材関連技術
(2)飛行経路短縮など消費燃料削減に資する管制の高度化による運航方式の改善
(3)バイオジェット燃料などの持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の導入促進
この中でも、機体の軽量化・高効率化に資する複合材関連技術についての開発の歴史は長い。
1960 年代後半には、アルミニウム合金やチタン合金よりも比強度、比弾性率が高い炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)の航空機構造材への採用が開始された。
1995 年には高靱化エポキシ樹脂を用いたCFRPが開発され、ボーイング777機用の超大型エンジン「GE90」にCFRP ファンブレードが採用された。
2016年には航空機ジェットエンジンの軽量化・高効率化に資するセラミックス基複合材料(CMC:Ceramics Matrix Composites)の採用が、欧米の航空機エンジンメーカーにより始まった。
一方で、2023年6月、ボーイングとエアバスのCEOが新型機開発の見通しを公表している。
●ボーイングは、新型機開発について現行機と比べ20~30%効率改善した航空機が必要と考えているが、タイムラインは不明。2050年までのネットゼロに向けてはSAFが唯一のチャンスであり、水素については25年以内に意味のある変化をもたらすのであれば検討するが、長い道のりである。
⚫エアバス社は2050年までには技術的だけではなく、商業的(経済的)にも100%SAFの利用が必要である。A320neo・ A321neoと比較して燃費を20~25%改善した航空機を2035年に運用開始とし、水素についても開発を継続し、2035年に水素航空機を市場に送り出す計画を継続する。
ボーイングとエアバスは、中期的には現行機と比べて燃費を20~30%改善した航空機の開発を進め、「2050年カーボンニュートラル」の実現には持続可能な航空燃料(SAF)の利用が必須としている。また、長期的視野に立ち、水素航空機の開発は重要と考えている。
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