日本の「2050年カーボンニュートラル」(Ⅰ)

エネルギー

日本のグリーン成長戦略とは?

 日本は「2050年カーボンニュートラル」を実現することを、菅義偉前内閣総理大臣が2020年10月26日の所信表明演説において宣言した。これを実現するためにはグリーン・リカバリーにより、経済と環境の好循環を作り出すことが必要として、グリーン成長戦略が示された。
・内閣官房成長戦略会議資料、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略、2020年2月12日


 米国トランプ前大統領と蜜月関係を続けた安倍晋三元内閣総理大臣の時代には、遅々として進められることのなかった環境政策の大転換である。その結果、2050年カーボンニュートラルを実現するためのエネルギー政策及びエネルギー需給について見直しが進められた。

 政府は、表1に示すように成長が期待される14の分野・産業(洋上風力、燃料アンモニア、水素、原子力、自動車・蓄電池、半導体・情報通信、船舶、物流・人流・土木インフラ、食料・農林水、航空機、カーボンリサイクル)を特定している。
 このグリーン成長戦略の推進により、2030年で年額90兆円2050年で年額190兆円程度の経済効果が見込まれるとしている。

表1 産業政策の観点から成長が期待される14の分野・産業

エネルギー関連産業の成長戦略

 表1に示すエネルギー関連産業において特筆されているのは①洋上風力、②燃料アンモニア、③水素、④原子力である。国内のCO2排出量の37%を占める電力部門の脱炭素化は必須であり、再生可能エネルギーについては最大限の導入を目指す必要がある。
 そのためには系統整備、発電コストの低減、周辺環境との調和、出力変動の平準化を目的とした蓄電池の活用が重要となる。2020年時点で総発電量の20%弱である再生可能エネルギーを、2050年には約50~60%を再生可能エネルギーで賄うことをベースに専門家委員会で議論が行われた。

 ①洋上風力発電は再生可能エネルギーの切り札と位置付けられ、沿岸部での大量導入を目指し、政府主導で海域調査や送電網の確保などの地元自治体との調整を行うセントラル方式で推進するとした。      
 2030年までに発電容量:1000kW、発電コスト:8~9円/kWh(2030~2035年)、2040年までに発電容量:最大4500kW(国内調達比率:60%)を目指し、蓄電池と併せて成長分野とした。

火力発電はどこに向かうのか?

 一方、CO2回収を前提とする火力発電は、エネルギーのベストミックスの観点から選択肢として最大限追求を進めるとしている。そのため、早期のCO2回収・貯留(CCS)技術確立、CO2貯留の適地開発、CO2回収コスト低減が、火力発電の生き残りには必須である。

 ②燃料アンモニア(NH3は、水素社会への移行期の脱炭素燃料として有望とされた。2030年に向けてアンモニアの生産規模を拡大し、現在のLNG価格を下回る10円/Nm3-H2台後半での供給を可能とし、20%添加の混焼実証試験後に、NOx抑制バーナーとアンモニア燃料をセットで電力会社が利用する。
 さらに、2050年に向けてアンモニア混焼率向上・専焼化技術の開発を進め、1.7兆円/年の市場規模に育成し、国際的なサプライチェーンを構築してアンモニア供給・利用産業イニシアティブを取る。
 2050年には総発電量の約10%を水素・アンモニア燃料とした火力発電、約30~40%を火力発電+CO2回収と原子力発電で見込んでいる。

将来を見据えた水素火力発電所か?

 ③水素に関しては、2017年に策定した水素基本戦略ではFCVの普及拡大を中心に供給網体制の整備に力点を置いたが、石炭やLNGの代替燃料として、また燃料電池の燃料として広く活用を目指すため、水素の消費量を大きく引き上げる目標を策定している。
 すなわち、大手電力会社に対して火力発電用燃料として水素専焼・混焼発電に関連する法律「エネルギー供給構造高度化法」を改正する。電力小売会社に対して販売電力に占める非化石電源比率を2030年度までに44%にすることを求めているが、この引き上げと非化石燃料電源に水素発電を加える。

 大量に水素燃料を消費する水素発電は、化石燃料代替として最大限追求を進める必要がある。特にアジアを中心として、今後も火力発電は必要最小限、使わざるを得ない。そのため水素の供給量・需要量の拡大を目指して、インフラ整備、並びにコスト低減が重要である。
 現状の水素消費量200万トン/年を、2030年には最大300万トン/年としてFCV燃料供給拠点の整備を進め、2050年には2000万トン/年に増やして発電や製鉄、FCトラックなどへの導入を拡大する。

国内の原子力発電所は再稼働は?

 ④原子力発電に関しては、国内の原子力発電所の再稼働が進まず、2022年時点で建設中を除く全原子力発電所33基の内、10基に留まっている 。
 原子力発電は低炭素発電として確立した技術であり、安全性向上を図りながら、可能な限り依存度は低減しつつも、引き続き最大限の活用が必要とし、再稼働を進めるとしている。
 また、安全性に優れた次世代小型原子炉(SMR、出力:30万kW以下、格納容器幅:5~15m程度)の実用化に向け、米国と連携してアジアなどへの輸出も視野に入れているが、建設コストの低減が課題である。

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