再エネ出力制御の問題(Ⅵ)

再エネ

 5月の連休中かと思われていたが、早くも2023年4月8~9日に中部電力・北陸電力エリアで再エネ出力制御が実施された。中部電力のように電力需要が大きい大都市を抱えるエリアで起きたことが注目される。東京電力や関西電力エリアでも再エネ出力制御の可能性が高まっている。

 対策には、「電力供給力の低下」「他電力への送電量の増加」「揚水発電など電力貯蔵の増強」が考えられるが、政府の打つ手はいずれも後手に回っている。このまま再エネ出力制御の常態化を見過ごせば、再生可能エネルギー導入の頭打ちが進むであろう。早急な対策が必要である。

2023年4月に起きた出力制御

 2023年4月7日、中部電力パワーグリッド北陸電力送配電は、一部の太陽光・風力発電事業者の稼働を一時停止する再エネ出力制御を実施する予定を発表した。需給バランスが崩れれば、停電リスクがある。日本でも出力制御が大都市に広がる事態となり、送電線増強など対策を急ぐ必要がある。

 2023年4月8日、中部電力パワーグリッド北陸電力送配電は、再生可能エネルギー発電事業者に対して出力制御の指示を出した。出力制御は2018年に九州電力管内で離島以外では初めて行われ、その後、北海道、東北、中国、四国、沖縄電力エリアで毎年のごとく実施されている。

 今回は、中部電力のように電力需要が大きい大都市を抱えるエリアで起きたことで注目を集めた。まだ、大丈夫と思われていた電力需要が大きい東京、関西エリアにおいても再エネ出力制御が起きる可能性が垣間見えたのである。

 中部電力パワーグリッドは、2023年4月8日(土)8時~16時に最大41万kWの出力制御を予定していたが、予想外に雲が広がり、13時00分~13時30分に太陽光0.4万kW(15件)の出力制御に留まった。また、翌日9日(日)13時00分~13時30分には、59.3万kWの出力制御を実施した。

 北陸電送配電は、2023年4月8日(土)13時00分~13時30分に、14万kWの出力制御を実施した。内訳は太陽光11万kW(182件)、風力3万kW(9件)である。翌日9日(日)にも出力制御を実施した。揚水発電を持たないため、他電力への送電で対応できずに再エネ出力制御に至った。

再エネの無駄をなくすには?

 結局のところ、再エネ出力制御は発電した再生可能エネルギーを捨てることであり、誠にもったいない話である。既に常態化が始まっており、再エネ出力制御を減らす方策はないのか?次に、今回の中部電力パワーグリッドの例を参考に考えてみる。

中部電力パワーグリッドの例:
 2023年4月8日(土)8時~16時に最大41万kWの出力制御を予定していたが、予想外に雲が広がり、13時00分~13時30分に0.4万kWの出力制御に留まった。
 週末で①電力需要が1201.4万kWに減る中で、好天のために太陽光発電による電力量が665.4万kWに達して②電力供給量は1295.4万kWに上昇した。③他電力への送電は0kW④93.6万kWを揚水発電で電力貯蔵したが、⑤0.4万kWが余剰となり太陽光発電の一時停止(15件)に至った。
  ②電力供給量ー①電力需要ー③他電力へ送電ー④揚水発電 =再エネ出力制御・・・・・(1)
 (1295.4万kWー1201.4万kW ー 0万kW ー 93.6万kW=0.4万kW)

 (1)式から分かるように、②電力供給量と①電力需要が一致すれば、何も問題は起きない。しかし、②電力供給量が①電力需要を上回った場合に、③他電力への送電、④揚水発電などにより調整が行われるが、それでも調整が出来ない場合に再エネ出力制御が行われるのである。

図1 太陽光発電が主体となる場合の1日の電力需要と電力供給の状況

 再エネ出力制御をゼロにする施策:
■②電力供給量の低下 ➡ 出力制御が技術的に困難とされている水力・原子力・地熱+火力の抑制
■③他電力への送電量の増加 ➡ 送配電網の整備と容量増加
■④揚水発電など電力貯蔵の増強 ➡ 大規模電力貯蔵システムの開発、小中規模蓄電設備増加

②電力供給量の低下

 国内では石炭火力発電原子力発電を一定出力で運転するベースロード電源と位置づけており、起動・停止に時間を要するため出力制御には適さない。そのため電力供給量の調整は、主に短時間での出力制御が容易なLNG火力発電(完全にゼロにはできない)が担っている。

 しかし、石炭火力発電原子力発電も、経済性を考慮しなければある程度の出力抑制は可能である。特に、石炭火力発電の出力抑制は短期的に実現可能な対策であり、CO2排出量の抑制にもなる。ベースロード電源の運営の考え方を再考する必要がある。

③他電力への送電量を増加

 欧州では国境を越えた送電網の整備が早くから進められてきた。発電業者と送配電業者が明確に分かれている場合が多く、送配電業者は広く送電できた方が収益が上がるためである。

 一方、日本では2016年の電力小売り全面自由化まで、大手電力会社がそれぞれのエリア内で発電と送配電を独占的に運営してきた。そのためエリアを超えた送電の必要性が低く、さらに東西で電気の周波数が異なることも原因して、エリア間の送電網の整備が遅れている。

 政府は再生可能エネルギーの大量導入を実現するため、送電網の増強を打ち出している。2050年までの送配電網の整備計画をまとめ、約6兆〜7兆円を投資して北海道と本州などを結ぶ地域間連系線など6カ所で容量を増やす計画である。しかし、具体的なスケジュールは未定である。(詳細はⅦで)

④揚水発電など電力貯蔵の増強

 揚水発電は原子力発電の夜間の余剰電力を貯蔵するために設置された。そのため出力変動の顕著な太陽光・風力発電所とは、同じ電力貯蔵であっても状況は大きく異なる。電力会社では太陽光発電の大量導入により周波数が短期で大きく乱れる現象が多発し、LNG火力発電所の待機運転で対応している。

発電時のみ周波数調整が可能な従来の定速揚水発電機では対応が困難なため、短期周波数の調整に優れた可変速揚水発電機が注目されている。2023年2月、経済産業省は揚水発電所の維持や更新を支援すると公表したが、その後、電力会社などの具体的な動きは出ていない。

 一方、 2022年1月には電気事業法の改正が行われ、大規模系統用蓄電池の普及支援が始まっている。しかし、蓄電設備導入の最大の課題は低コスト化蓄電設備と需要地点を結ぶ送電線の空きが少ないのが課題であり、実証事業は始められたが本格的な導入は始まっていない。

 揚水発電を含む大規模電力貯蔵システムの開発や、高コストである大~中小規模の蓄電設備の普及は明らかに遅れている。蓄電設備が普及しなければ、電気使用のピーク時間帯をずらす「デマンドレスポンス(DR)」対策も行えない。 

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