国際原子力機関(IAEA)の定義による電気出力:30万kWe以下の小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)が、世界で注目を集めている。小型高速炉、小型軽水炉、小型高温ガス炉など様々な炉型がSMRと呼ばれているが、モジュール化により工場内で組み立て、ユニットとして輸送・設置する炉の総称である。
米国(3)
テラパワーの「MCFR」とサザン・カンパニーの「MCRE」
テラパワーが開発する塩化物溶融塩高速炉「MCFR(Molten Chloride Fast Reactor)」は、燃料と冷却材に塩化物溶融塩を使い、高温運転(炉心出口温度:755℃)が可能で発電効率が高い。
2021年11月、米国大手電力のThe Southern Company(サザン・カンパニー)は、高速炉タイプの溶融塩実験炉「MCRE(Molten Chloride Reactor Experiment)」の設計・建設・運転を行う協力協定をDOEと締結した。「MCRE」は、共同開発を実施するテラパワー「MCFR」の商業版である。
テラパワーのほか、アイダホ国立研究所(INL)、コア・パワー、オラノ・フェデラルサービス、米国電力研究所(EPRI)、3M(スルーエム)が参画する共同プロジェクトで、INL敷地内に「MCRE」(熱出力:500kW未満)を建設して、2026年の運転開始をめざしている。
2023年5月、米国務省と原子力規制委員会は、93%の高濃縮ウランを使う「MCRE」計画の低濃縮ウランへの変更を要請。海外諸国に新型炉開発でウラン濃縮度を核兵器級に上げる口実を与えないためである。

出典:The Southern Company
オクロ(OKLO)の「Aurora」
スタートアップのOklo(オクロ)が開発するのは、ヒートパイプ冷却方式のナトリウム冷却高速炉「Aurora(オーロラ)」(熱出力:4000kW、電気出力:1500kWe、炉心出口温度:>500℃)である。HALEU燃料を使い、燃料交換なしで20年間の熱電併給を行う。アイダホ国立研究所(INL)に設置し、2025年の運転開始をめざす。
1964~1994年までアイダホ州で稼働した実験増殖炉Ⅱ(EBR-Ⅱ)の設計・運転をベースにしている。
2020年2月、INLは、オーロラ初号基用燃料をEBR-Ⅱの使用済燃料から回収して提供する。DOE支援を受けて、電解精製技術を使い放射性廃棄物を転換して先進的原子炉燃料を製造するほか、使用済燃料のリサイクルを図る技術の商業化を進める。
2023年5月、マイクロ高速炉「オーロラ」(出力:1500kW~1.5万kWe)をオハイオ州南部に2基建設し、同地域の4郡で構成される「オハイオ州南部の多様化イニシアチブ(SODI)」と土地利用に関して合意した。
2023年8月、ウラン濃縮企業セントラス・エナジーと協力拡大の新たな覚書を締結した。既に、2021年にHALEU燃料の製造施設建設に向けた協力で基本合意書を締結していたが、今後は、「オーロラ」建設とHALEU燃料の製造を協力して進め、オハイオ州南部を重要ハブとする。
2025年6月、米空軍省(DAF)と国防兵站局(DLA)エネルギー部は、アラスカ州アイルソン空軍基地向けに電力と蒸気を供給する「オーロラ」発電所の配備に向けて、発注意向書を発出した。
2025年9月、アイダホ国立研究所(INL)サイトで初のオーロラ発電所「オーロラ-INL」の起工式が開催された。金属燃料を使用するナトリウム冷却高速炉のマイクロ炉(出力:1.5万~5万kWe)で出力は柔軟に調整可能で、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱電併給できる。
「オーロラ-INL」はDOEが新たに設立した原子炉パイロットプログラムに参加し、2025年内に建設運転一括認可(COL)申請を予定している。
一方、オクロ社は、テネシー州オークリッジにあるオークリッジ・ヘリテージ・センターの約100 haの敷地に、総額16.8億ドルを投じて、先進燃料センターにおける第一フェーズとして燃料リサイクル施設を設計、建設、操業する計画を発表した。使用済み燃料を先進炉向けの燃料に変換し、国内に供給する狙いである。
ケイロスパワー(Kairos Power)の「KP-FHR」
スタートアップのケイロスパワーが開発するフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR、Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor)」(熱出力:32万kW、電気出力:14万kWe、炉心出口温度:650℃)は、冷却材に低圧のフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した溶融塩を使用する。
燃料には、高温ガス炉で使われるTRISO燃料粒子を使用し、運転中の供給を可能とする。
2030年代初頭の商業規模完成をめざし、現在は低出力の非発電実証炉「Hermes(ヘルメス)」(熱出力:3.5万kW)を、テネシー州オークリッジの米国エネルギー省の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設し、2026年の運転開始をめざしている。
2023年12月、米国原子力規制委員会(NRC)は、発電を伴う実証炉「ヘルメス」(熱出力:3.5万kW)の建設許可を発給した。現在、NRCは「ヘルメス」の隣接区域で、同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」を建設するための許可申請書を審査中で、2028年までの発電運転をめざしている。
2024年10月、グーグルは新興ケイロス・パワーと電力の購買契約を締結した。AI向けにデータセンターで電力需要が高まるためで、今回の契約では50万kW分の電力供給を見込む。まずは2030年までにSMRを稼働させ、2035年までに追加配備して段階的に発電量を増やす計画としている。
2025年8月、米国テネシー峡谷開発公社(TVA)は、ケイロス・パワーがオークリッジで建設を計画するフッ化物塩冷却高温炉の実証プラント「ヘルメス2」から出力:最大5万kWeのPPAを締結した。TVAの送電網を経由し、テネシー州とアラバマ州にあるGoogleのデータセンターに電力を供給する。
2026年4月、テネシー州オークリッジにあるDOEの「東部テネシー技術パーク(ETTP)」で、フッ化物塩冷却高温実証炉「ヘルメス2」の起工式を開催した。ケイロスは、ニューメキシコ州アルバカーキの製造開発拠点で「ヘルメス2」の機器モジュールを製造し、オークリッジへ輸送して組み立てる。
ヘルメス、ヘルメス2の両プロジェクトの建設大手は、Barnard Construction Companyが担当する。
ジェネラルアトミックス・エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)の「FMR」
GA-EMSが開発中のFMRは、出力:4.4〜5万kWeのヘリウム冷却小型モジュール高速炉である。工場で製造して現地で組み立てるモジュール式で、2030年代の商業運転をめざしている。4モジュール(17.6万kWe)または6モジュール(26.4万kWe)の構成で拡張可能である。
従来の原子炉の約33%に対して電気への変換効率は42%に高め、GA-EMSが開発した炭化ケイ素複合被覆管「SiGA®」で軽水炉用UO2燃料を被覆した事故耐性燃料を使い、最高1600℃までの高い耐久性を有する。
2020年10月、フランスのフラマトムと、GA-EMS技術に基づくモジュール式小型ヘリウム冷却高速炉(FMR、出力:5万kWe)の共同開発を発表。工場製造後に現地組み立てすることで建設費の大幅低減を実現。燃料交換は約9年間不要とし、受動的安全性を備え、冷却材にヘリウムガスを使用し水源を必要としない。
再エネの出力変動による負荷追従運転にはガスタービン(直接ヘリウム・ブレイトンサイクル)を採用し、発電機の出力変化速度は最大で毎分20%、通常運転時の効率も42%と高める。また、原子炉出力の自動制御とターボ機器により炉内温度を一定に保ち、負荷追従運転にともなう熱サイクル疲労の影響を緩和する。
2030年初頭にFMRの設計・製造・建設・運転の技術を実証し、2030年代半ばまでに商業建設する。
2025年11月、新型ヘリウム冷却高速炉「FMR」の概念設計を完了した。米国エネルギー省の先進原子炉実証プログラムの一環として実施し、今後、2030年代の実証に向けた予備設計段階に移行する。出力:4.4万kWeで、空冷システムと組み合わせて遠隔地や乾燥地帯での設置を可能とする。
独自の炭化ケイ素複合材被覆の高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料で運転する。サンプル燃料棒の試作も実施し、アイダホ国立研究所で放射線照射試験を受けており、その安全性を検証した。FMR燃料棒「SIGA」は、商用サイズ3ft,6ft,9ft,12ft(約3.65m)も実現した。

アンタレス・ニュークリア(Antares Nuclear)の「Mark-1」
スタートアップのアンタレス・ニュークリアは、核燃料にTRISO粒子燃料と高濃縮ウラン(HALEU)を採用し、冷却システムにはポンプ不要のナトリウムヒートパイプを利用し、発生した熱で窒素ガス閉サイクルガスタービンを駆動して発電するマイクロ炉の開発を進めている。
2026年6月、米エネルギー省(DOE)は、DOEの先進炉設計の開発・試験・認証の迅速化を目指した「原子炉パイロットプログラム」の一環として、アンタレス・ニュークリアが開発したナトリウムヒートパイプ冷却炉である先進マイクロ炉「Mark-0」が、アイダホ国立研究所(INL)でゼロ出力臨界試験に成功した。
DOE・INL・BWXテクノロジー(BWXT)・米陸軍が協力しており、2027年に商用モデル「Mark-1」(出力:100~1000kWe)でのフル出力発電実証、2028年に軍事施設への実用配備をめざしている。

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