非軽水炉型SMRの開発動向について(Ⅺ)

原子力

 エネルギーの安定供給は各国の重要政策課題である。米国は一度は開発を中止したが、核燃料サイクルに再び着目し高速炉開発を推進。フランス、ロシア、中国、インドは、積極的に高速増殖炉の開発を進めている。一方、英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、高速炉開発は中止している。

日本における高速炉の開発動向ー高速炉は必要か?ー

 エネルギーの安定供給確保は重要な政策課題であるが、核燃料サイクルは、国ごとのエネルギー事情により独自の政策が進められている。米国は一度は開発を中止したが、その後、核燃料サイクルに再び着目し高速炉開発を推進している。フランス、ロシア、中国、インドは、積極的に高速増殖炉の開発を進めている。

 一方で、英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、使用済み燃料を直接処分する方針である。現状ではウラン燃料の価格が安く、再処理を施して製造されるプルトニウム燃料での発電が高価となるためである。

 原子炉(核分裂炉)は、核分裂反応によって生じる高速中性子を減速して核分裂反応を生じさせる熱中性子炉と、減速しないで核分裂反応を生じさせる高速中性子炉に大別される。高速中性子炉は、当初「核燃料サイクル」を実現するための重要な炉と位置付けられ、高速増殖炉(FBR)として開発が進められた。

 高速中性子炉は、プルトニウムを燃料として発電するための「新型炉」であると共に、発電しながら消費した以上の核燃料(プルトニウム)を生成することができる。しかし、プルトニウム過剰問題から増殖に意義を見出せなくなり、最近では単に高速炉(FR or FNR)と呼び、プルトニウム焼却用原子炉と位置付けられている。

 すなわち、高速炉を使って「核燃料サイクル」を回すことで、軽水炉での使用済み燃料を再利用でき、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を低減し、余剰プルトニウムを削減をめざす方針に移行している。

核燃料サイクルとは

 現在の原子力発電所(軽水炉)では、天然ウラン(ウラン238の中に同位体ウラン235が約0.7%含有)を濃縮して、核分裂しやすいウラン235の濃度を3~5%に高めて燃料としている。

 核分裂反応はウラン235に中性子が衝突することで生じ、核分裂の過程で発生した中性子が次々とウラン235に衝突して連鎖反応的に核分裂が進み、熱エネルギーが生じる。ウラン238も中性子を吸収して核分裂しやすいプルトニウム239に核変換され、さらに中性子を吸収すると核分裂して熱エネルギーが生じる。

 その結果、軽水炉での使用済燃料にはウラン235が1%、プルトニウム239が1%、核分裂生成物など高レベル放射性廃棄物が3~5%が含まれ、残りはウラン238となる。

図1 軽水炉における発電前後の燃料の変化  出典:日本原子力財団

 使用済燃料に含まれるウラン235やプルトニウム239を、再処理工場で化学的に抽出し、燃料として再利用するのが「核燃料サイクル」である。この核燃料サイクルは、軽水炉を中心にリサイクルする「軽水炉サイクル」と、将来的に高速増殖炉を開発してリサイクルする「高速増殖炉サイクル」とに区別される。 

軽水炉サイクル

 現在進められている軽水炉サイクルでは、再処理工場で高レベル放射性廃棄物を除去し、プルトニウム239を分離・回収して劣化ウラン(濃縮後にウラン235含有量が0.2%程度となったウラン)と混ぜた混合酸化物燃料(MOX燃料、プルトニウム239を4~9%含む)に加工し、軽水炉の燃料としてリサイクルする。

 通常のウラン燃料(約2.7億円/トン)に比べてMOX燃料(約4.2億円/トン)は高価であり、ウランの利用効率はリサイクルを行わない直接処分に比べて1.2倍程度と試算され経済性は低い。しかし、プルトニウムを減らす目的で一部の原子力発電所ではMOX燃料が使われており、この方式は「プルサーマル」と呼ばれている。

高速増殖炉サイクル

 将来的に「高速増殖炉」が開発できれば、再処理工場で分離・回収されるプルトニウム239を15~20%に高めて劣化ウランとの混合燃料を炉心に使用し、その外周にブランケット燃料として劣化ウラン(主にウラン238)を配置し、中性子吸収を進めてプルトニウム239の増殖比を高めることができる。

 そのため高速増殖炉サイクルでは、使用済み燃料の再処理を繰り返すことで、プルトニウムを燃料として利用しない直接処分に比べて利用効率を100倍以上に高めることができる。ウラン鉱石の可採年数は燃料の直接処分による利用では85年程度とされており、高速増殖炉サイクルに意味が出てくる。

図2 核燃料サイクル 出典:資源エネルギー庁 

核燃料サイクルのメリット

 「軽水炉サイクル」を使わずに使用済燃料を直接処分する場合、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物などを含む使用済燃料を全部「高レベル放射性廃棄物」として処分することになる。一方、使用済み燃料の再処理を行えば高レベル放射性廃棄物を減らすことができ、放射線の影響を1/10程度に低減できる。

 将来的に「高速増殖炉サイクル」が確立できれば、核兵器に転用可能なプルトニウムを効率よく燃やすことができる。また、使用済燃料中の半減期の長い超ウラン元素(ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)も、高速増殖炉で燃焼させることが可能で、放射線廃棄物の低減が期待できる。

 原子力を平和利用に限る日本は、余剰プルトニウムを保有してはならない。そのため、使用済み燃料中のプルトニウムを再び核燃料として利用する核燃料サイクルを確立する必要がある。国際社会から疑念を持たれないよう、余剰プルトニウムの非保有を示す必要がある。

プルサーマル計画の現状

 日本では、使用済燃料を再利用できる高速炉開発には早くから取り組んできたが、発電ができる原型炉「もんじゅ」の開発に失敗した。そのため原子力政策では、民間事業として「軽水炉サイクル」を確立し、将来に向け国レベルで研究開発を推進して「高速増殖炉サイクル」を確立すると方針を変えた。

 福島第一原発事故以前からプルサーマル計画は進められ、日本原子力発電敦賀原子力発電所1号機、関西電力美浜原子力発電所1号機で実証試験が行われた。
 その後に、東京電力福島第一原子力発電所3号機、九州電力玄海原子力発電所3号機、中部電力浜岡原子力発電所4号機、四国電力伊方原子力発電所3号機、北海道電力泊原子力発電所3号機、関西電力高浜原子力発電所3、4号機でプルサーマル運転が進められた。

 福島第一原発事故以降は、2023年2月時点で再稼働した四国電力伊方原子力発電所3号機、関西電力高浜原子力発電所3、4号機、九州電力玄海原子力発電所3号機でプルサーマル運転が進められている。2020年12月、大手電力会社は新プルサーマル計画を策定し、2030年度までに少なくとも12基の計画を掲げた。

 現在、建設を中断している電源開発の大間原発(138.3万kW)はMOX燃料100%で運転できる。しかし、他の認可原発ではMOX燃料は全燃料の1/3程度しか使えないため、大幅なプルトニウム削減には至っていない。

再処理工場の現状

 ところで、「軽水炉サイクル」を回すためには、青森県六ヶ所村で日本原燃が建設を進めている「六ヶ所再処理施設」を稼働させる必要ある。六ヶ所村には、1992年から操業しているウラン濃縮工場と低レベル放射性廃棄物埋設センター、1995年から操業している高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターある。

 しかし、施設の中核である「核燃料の再処理工場」の操業が大幅に遅れている。1992年に建設を開始したが、許認可手続きと安全対策などで、2022年9月に26回目となる工事完成の延期を発表した。日本原燃は2024年度のできるだけ早くに操業、MOX燃料工場も2024年度上期に竣工を予定した。
 2024年9月、審査に時間を要し、新たな竣工目標を再処理工場は「2026年度中」、MOX燃料工場は「2027年度中」とした。

 六ヶ所再処理工場が完成すれば、フル稼働時には約800トン/年の使用済み燃料を処理できる。使用済燃料は各原発などで管理保管されており、2023年の総量は約1.9万トンに達している。全施設の管理容量は合計約2.4万トンのため約80%にまで達している。遅れている再処理工場の早期の稼働が待たれる。

図3 日本原燃の六ヶ所再処理施設 出典:日本原燃

  ところで、六ケ所再処理工場の操業が大幅に遅れたため、長年にわたり再処理は英国とフランスに委託している。フランスで再処理が終了したプルトニウムは、MOX燃料にして徐々に日本に送り返されている。英国ではMOX燃料工場がトラブルで閉鎖したため、プルトニウムは英国内で貯蔵されている。

 2020年12月末の日本のプルトニウム保有量は、英国に21.805トン、フランスに15.411トン、日本国内に8.854トンで、合計46.07トンである。この量は、IAEAの計算方法に従えば、核兵器5800発分に相当する。

図4 日本の分離プルトニウム保有量の推移 出典:原子力資料情報室

 2024年2月、電気事業連合会は、使用済核燃料から抽出したプルトニウムをフランスでMOX燃料に加工する計画を公表。電力会社大手の保有量は2023年度末で40.1トンで、MOX燃料の利用で減らす方針である。
 東北・中部・北陸・東電・日本原電の5社がフランスに保有するプルトニウムを、九電に1トン譲渡して玄海3号機で2027年度以降、四電に0.7トンを譲渡して伊方3号機で2029年度以降にMOX燃料として使う。九電はフランスに保有する0.1トンを自社で使い、建設中のJパワー大間原発には中部・東電が0.1トンを譲渡する。
 国内でMOX燃料を燃やせる原発は九州電力・四国電力・関西電力の3社で計4基しかない。電事連は2030年度で少なくとも原発12基でMOX燃料を使った運転の実現を計画する。公表した計画では2027年度で2.1トン、2030年度までに6.6トン/年程度のプルトニウムの利用をめざす。

 2026年2月、電気事業連合会は、原発でのプルトニウム利用見通しを公表。電力大手保有量は2025年度末で40.1トンの見込みで、2026、2027年度でそれぞれ0.7トンのプルトニウムを関西電力高浜原発で燃やす。
 国内での保有量の低減に向け、2030年度までに原発12基で6.6トン/年程度の利用をめざすが、2028年度の消費見込みは0トンとした。従来は今後5年計画を公表していたが、今回は今後3年の公表にとどめた。フランスでのMOX燃料の生産が見通せない状況が続いているためである。 

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