日本は使用済み燃料は再処理してウランとプルトニウムを回収し、軽水炉で再利用する燃料サイクルの構築を推進している。現在、青森県六ヶ所村で日本原燃が、使用済燃料の再処理と、MOX燃料の製造工場を建設中。1993年に着工したが、ガラス固化技術の開発などや、原子力規制委員会の審査基準(自然災害・テロ対策)への対応により、27回以上の延期を繰り返している。
各国における原発用核燃料製造の現状(2)
EUの核燃料製造の動き
エネルギー安定供給と脱炭素化の観点から原子力発電を再評価し、ロシア産化石燃料への依存度を低減し2027年までの輸入廃止を掲げる。東欧諸国で稼働するロシア型軽水炉(VVER)用燃料対応は、米国ウェスチングハウスの代替燃料供給プログラムにEUが助成を行い、供給源の多様化を進めている。
欧州内は、フランスのオラノ(Orano)やウレンコ(Urenco)が、ウラン濃縮・加工で重要な役割を担う。
2023年1月には、スロバキアのモホフチェ3号機(VVER-440)が送電を開始。2005年に着工し、同年5月には完成まで約18年間を要した欧州初のEPR(欧州加圧水型炉)であるフィンランドの「オルキルオト3号機」(172万kWe)が営業運転を開始。
一方、2023年4月、ドイツは残る原発3基を閉鎖し、2011年3月時点で所有していた商業炉全17基を全廃した。その結果、2023年末現在、EU域内で運転する原子炉は、12か国・計100基である。
2024年8月、原子力分野では、欧州委員会(EC)と欧州原子力共同体(Euratom)供給局(ESA)が、欧州で運転するロシア設計のVVER型原子炉への燃料供給の多様化を進めている。その結果、VVERを運転する加盟国(ブルガリア、チェコ、フィンランド、ハンガリー、スロバキア)の5社のうち、4社が2023年末までにロシア以外の供給先と代替燃料の供給に関する契約を締結した。
しかし、特定の医療用RIや研究炉用燃料は、依然としてロシアへの依存が続いている。
フランスの核燃料製造の動き
フランスは原子力開発当初から、使用済み燃料を再処理してウランとプルトニウムを回収・再利用する燃料サイクルを確立し、放射性廃棄物の放射能量と処分量の大幅削減を図ってきた。
Orano(オラノ、旧Areva)が中心となり、ウラン濃縮、燃料成型加工、使用済み燃料の再処理を行う。ラ・アーグ再処理工場では、約1080トン/年の使用済燃料を処理し、プルトニウムを抽出する。マルクールにあるメロックス工場では、抽出されたプルトニウムと再処理ウランを混合し、MOX燃料として再利用する。
現在、フランスの原子力発電量の約10%はMOX燃料起源であり、今後、使用済みMOX燃料の再処理により最大約40%にまで上昇する可能性がある。MOX燃料には再処理から回収されたプルトニウムのみが使用されている。再処理による回収ウラン(RepU)は、再濃縮して既存の軽水炉燃料として利用が可能である。
2013年に回収ウランの処理を中断したが、2024年2月にクリュアス原子力発電所2号機(PWR、出力:95.6万kW)で全炉心装荷により運転を再開した。国営フランス電力(EDF)は、2027年から130万kW級原子炉での回収ウラン利用を計画し、2030年代には毎年装荷される燃料の30%以上をめざす。
2019年9月、フランス政府は資金難で高速炉実証炉「ASTRID」の中止を発表した。そのため、2019年12月、JAEA、三菱重工業、三菱FBR、フランス原子力・代替エネルギー庁、フラマトムの間で、ナトリウム冷却高速炉のあらたな開発協力を締結してシミュレーションや実験などを進めている。
2023年9月、オラノは、南部トリカスタンのジョルジュ・ベスII(GB-II)濃縮工場の生産能力を30%以上増強する計画を明らかにし、同工場でHALEU燃料を製造するため規制手続きを開始した。
2024年3月、フランスは燃料サイクル戦略を2040年以降も継続することを決定し、既存の燃料サイクルプラントの運転期間を延長し、新たなMOX燃料製造プラントと再処理プラントの研究を開始する。
①ラ・アーグ再処理工場とメロックスMOX燃料製造工場の運転期間を2040年以降に延長するためのプログラムの実施、②ラ・アーグ・サイトにおける新たなMOX燃料製造プラント建設に向けた研究の開始、③2045~2050年までに、ラ・アーグ・サイトにおける新たな再処理プラント建設に向けた研究の開始。
2025年6月、ニジェール政府は、オラノとニジェール政府系企業が1968年から共同出資してきたウラン採掘合弁企業ソマイールの国有化を発表。2023年7月の軍事クーデター後、フランスとニジェールの関係は悪化しており、オラノはカザフスタン、ウズベキスタン、ナミビア、オーストラリアなど調達多様化を進めている。
ニジェール政府はオラノに対して、推定埋蔵量20万トンで世界最大級とされているイムラレン鉱山の操業許可を2024年6月に取り消す。オラノは同年12月、ニジェール政府に対し複数の国際仲裁手続きを開始した。
中国の核燃料製造の動き
中国核工業集団(CNNC)を中心に、ロシアやフランスなどからの技術支援で導入した核燃料サイクル(濃縮・加工・再処理)の国産化を加速している。低濃縮ウランの半分を輸入に頼りつつ、甘粛省で大規模な再処理工場を建設中で、福建省で高速増殖炉「CFR-600」(2基)を建設中である。
ウラン濃縮は、四川省蘭州で高性能遠心分離機を工業化し、自給できる体制を整えつつある。燃料加工は四川省宜賓市に製造工場を有し、内モンゴル自治区包頭市でも建設中である。再処理は軍事目的のプラントを甘粛省で1970年初めから稼働し、2006年に蘭州で再処理パイロットプラントが完成した。
一方で、中国科学院上海応用物理研究所では、トリウム燃料を用いた液体燃料型溶融塩実験炉で、核燃料の変換に成功している。
2025年8月、福建省で実証炉の高速増殖炉「CFR-600」(2基)の1号機が稼働したと考えられる。燃料は2018年6月に中露間で締結された協定に基づきロシアが供給し、2022年に初期燃料は提供済み。提供した燃料やCFR-600で生成されるプルトニウムは平和利用に限定される。建設中の2号機も、完成に近づいている。
一方、甘粛省の404工場は核兵器用プルトニウム生産工場であったが、現在はCNNC傘下の中核404有限公司が運営し、軍事用と民生用にエリアが区分される。民生用の再処理施設は1998~2005年にかけて建設され、2010年に使用済燃料を用いたホット試験が実施された。
同じ甘粛省には、CNNC傘下の中核龙瑞科技有限公司による使用済燃料再処理工場を3つとMOX燃料工場が建設中。処理能力は200トンHM/年、第1再処理工場は2015年に着工、完成は2025年をめざす。2020年から第2再処理工場は2020年に着工。2018年にはMOX燃料工場(20トン/年)の地質調査が発注された。
2025年11月、中国科学院は、上海応用物理研究所が中心となり建設した液体燃料型トリウム溶融塩実験炉(出力:2000kW)が、初めてトリウム・ウラン核燃料の変換に成功した。これにより、溶融塩炉型の原子炉によるトリウム資源の利用が技術的に可能であることが証明された。
実験炉は2020年1月に着工し、2024年6月に定格出力での運転を実現し、同年10月に世界で初めて溶融塩炉へトリウム燃料を投入した。中国は豊富なトリウム資源を有するためエネルギー安全保障上有効であり、高温の液体溶融塩を冷却材とするトリウム溶融塩炉は、常圧運転、高温出力などの特性を有する。
日本の核燃料製造の動き
ウラン原料はオーストラリア、カナダで、加工・輸入元として英国などから輸入している。ウラン濃縮は青森県六ケ所村で日本原燃が新型遠心分離機による濃縮事業を実施し、軽水炉用燃料の加工を三菱原子燃料(MNF、PWR用燃料の製造・輸送、三菱重工系)、グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン(GNF-J、BWR用燃料、GEベルノバ・日立系)、原子燃料工業(NFI、BWR用燃料、東芝系)が実施している。
使用済み燃料は再処理してウランとプルトニウムを回収し、軽水炉で再利用する燃料サイクルの構築を推進している。現在、青森県六ヶ所村で日本原燃が、使用済燃料の再処理と、MOX燃料の製造工場を建設中。
1993年に着工したが、ガラス固化技術の開発などや、原子力規制委員会の審査基準(自然災害・テロ対策)への対応により、27回以上の延期を繰り返している。
高速炉は、使用済み燃料に含まれるプルトニウムを分離・回収して再利用する「核燃料サイクル」の中核となる。国内では、1977年に初臨界を達成した基礎段階の実験炉「常陽」、1994年に初臨界を達成した発電できる原型炉「もんじゅ」を開発した。しかし、トラブルが相次いだ「もんじゅ」は、2016年に廃炉が決定した。
2024年8月、日本原燃は、六ヶ所再処理工場、MOX燃料工場の竣工目標を、それぞれ「2026年度中」、「2027年度中」に延期すると27回目となる延期を発表した。
同社はこれまで、六ヶ所再処理工場は「2024年度のできるだけ早期」、MOX燃料工場は「2024年度上期」を竣工時期として、設備工事計画認可の審査、工事、検査に取り組んできたが、2024年9月以降も審査への対応が継続すると判断。原子力規制委員会の審査会合を踏まえ、新たな竣工目標を検討するとしていた。

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